ベンダーロックインとは?問題点や脱却方法をわかりやすく解説【2024年最新版】
民間企業や自治体を問わず、既存システムを脱却してDXを推進したくとも上手くいかないことはめずらしくありません。代表的なケースがベンダーロックインと呼ばれるもので、他社製品への移行や新規開発を妨げる原因として懸念されています。
そこでこの記事では、そんなベンダーロックインとは何かについて解説しながら、新システム運用に向けた具体的な対策方法を紹介します。自社でどのような問題がベンダーロックインを招きそうか、確認の際の参考にしてください。
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ベンダーロックインとは?
ベンダーロックインとは、新しくシステムを構築したり、外部から導入したりする際に発生する制約の一種です。特定のシステム導入事業者、つまりベンダーの製品に既存システムが依存してしまい、他社のベンダーのシステムを導入できなくなってしまうような問題を指します。
通常、社内システムを構築する際はさまざまな製品を導入する機会が保障されており、必要に応じて自由に切り替えられることが理想的です。一方、何らかの原因で既存システムの互換性が特定の製品に固定されてしまったり、データ移行が他のシステムでは行えなかったりするケースもあります。こういった事態はシステム運用の自由度を損なってしまうことから、問題視されているのが現状です。
ベンダーロックインの種類
ベンダーロックインには大きく分けて、コーポレートロックインとテクノロジーロックインという2つのケースが存在します。それぞれの特徴の違いについて、理解しておきましょう。
コーポレートロックイン
コーポレートロックインは、システムそのものが特定のベンダーに依存してしまうタイプのベンダーロックインを指します。システム構築などの導入作業や運用を外部ベンダーに依存しているために、ベンダーの都合に最適化されたシステムが社内で運用されていると、コーポレートロックインという事態に陥りやすくなってしまいます。他社のベンダーに委託先を変更しようとしても、クライアントは事業や業務についての理解を既存のベンダーと同じレベルにまで高めてもらうべく、多くの時間をコミュニケーションに費やさなければなりません。こういった負担を回避しようと、結局毎回同じベンダーに依頼することとなってしまい、なかなかロックインの状態を脱却するに至りません。
テクノロジーロックイン
テクノロジーロックインは、技術的な問題から特定のベンダーへの委託を続けなければいけないベンダーロックインの状態です。特定のシステムやサービスの仕様に依存してしまうことで、他社製品への移行が極めて難しくなってしまうケースが企業に散見されます。グローバルスタンダードな要件ではなく、独自性の強い設計が採用されたクラウドサービスなどを導入してしまうと、テクノロジーロックインの事態に陥る可能性が高いです。システム設計について明るくないとこのようなサービスを選んでしまい、時代の変化についていけなくなっていく事態にも発展しかねません。独自開発したオンプレミスの製品を長年使用している場合、テクノロジーロックインが起こっている可能性を考慮すべきでしょう。
ベンダーロックインの実態
ベンダーロックインは、日本国内においてどれくらいの割合で発生していると考えられるのでしょうか。公正取引委員会が2022年に官公庁向けに実施した調査の結果によると、機能をオープンソース化している、つまりベンダーロックインが発生しないよう、特定の組織にシステムを依存させない仕組みを採用していると回答したいのは、わずか4.7%にしか満たないということです。 機能を一切オープンソース化していないという回答は68.1%に達し、高い割合でシステムが特定事業者やサービスに依存している可能性があることが示唆されます。※ ソースコードの公開はシステムの移行や委託事業者の競争公正化の観点からも重要であることから、より多くのオープンソース化が求められるところでしょう。
※出典:公正取引委員会 官公庁における情報システム調達に関する実態調査報告書 https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2022/feb/220208_system/220208_summary.pdf
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ベンダーロックインに陥ってしまう原因
民間企業や自治体がベンダーロックインの事態に陥ってしまうのには、どのような原因があるのでしょうか。ここではその原因について主な4つを紹介します。
ベンダー特有の技術を利用
1つは、ベンダーが独自に設計した技術やシステムを、そのままクライアントが導入してしまうケースです。近年はオープンソースのサービスやクラウドサービスが普及したことで、独自性の強いシステムは減ってきているものの、依然として独自設計のシステムを提供するベンダーは存在します。こういったベンダーの製品を導入してしまうと、技術的に他の製品では代替ができなくなってしまう可能性があるでしょう。
契約内容の縛り
二つ目に、ベンダーとの契約上の制約が他社製品への移行を妨げている可能性が挙げられます。例えば2年間や5年間など複数年にわたる保守契約をベンダーと結んでいた場合、例えシステムを他の会社の製品に乗り換えたとしても、メンテナンスにかかる料金は支払続けなければなりません。あるいは製品乗り換えに伴う、違約金が発生することもあるでしょう。契約が満了するまではシステムを移行できず、業務上の不便がいつまでも解消されない状態が続いてしまいます。
システムの著作権がベンダー側にある
システムの著作権がベンダー側にあるケースも、ベンダーロックインの要因として挙げられます。このケースが起こり得るのは、システム開発をフルスクラッチでベンダーに委託した際です。一般に公開されているフレームワークなどを使わずに、ゼロからシステムを開発すると、契約内容によってはそのシステムの著作権がベンダー側に帰属することがあります。導入時に何らかの取り交わしを行なっていないと、基本的に著作権はベンダーのものです。そのため、システムの乗り換えや改変については、ベンダー側の許可を取らないと実行できないというケースが起こり得ます。
仕様書の不整備
仕様書が質の高いものでなく、最新の状態に更新されていない状態で保管されていると、システムの仕様を把握するために多大な時間を必要とすることがあります。システムの仕様把握が遅れると、それだけ移行にかかるコストが増大してしまうため、いつまでも移行が進まないということもあるでしょう。移行コストが重荷となり、最新システムの導入が遅れるほか、移行そのものを諦めてしまうというケースに発展します。
ベンダーロックインの問題点
ベンダーロックインは、システムを他社に移行する気がない場合には問題がないようにも思えます。しかし、システムの柔軟性を失ってしまう事態は、以下のような事態を引き起こすことにもなるため注意が必要です。
開発・運用費用などが高額に
古くなったシステムをいつまでも使い続けていると、システムの拡張性がいつの間にか損なわれてしまい、結果的に運用コストが増大する可能性があります。最新システムとの互換性が失われ、いつまでも独自のシステムを単体で使い続けなければならず、結果的に導入当初ほどシステム運用の恩恵が得られなくなるパターンです。開発や維持管理にかかる負担が老朽化によって増大し、結局システムの乗り換えを後になって迫られるでしょう。
サービス品質の低下
独自設計のシステムを採用すると、他のクラウドサービスなどとの連携ができず、サービス本来のポテンシャルが失われてしまうこともあります。システムは単体ではなく連携して利用すれば相乗効果を発揮することが多いですが、独自設計のシステムではそれが叶わないケースも想定しなければなりません。いつまでも使いづらいシステムを運用し続けるのは、負担の大きな選択肢です。
他社への移行が難しくなる
いざ他社のシステムに移行しようと思っても、ベンダーロックインの問題を抱えていると、移行コストが大きすぎて導入ができないという問題は厄介です。自社にとって最適なソリューションを見つけたと思っても、新たにシステムを導入するコストと既存システムを使い続けるコストを天秤にかけ、後者が勝ってしまうこともあるでしょう。ただ、ベンダーロックインに陥る可能性がある場合には早期に意思決定を下し、その状態を脱却してしまうことが重要です。
ベンダーロックインの予防方法
ベンダーロックインに陥る事態は、可能であれば未然に回避しておきたいところです。ここではベンダーロックインを未然に回避するための具体的な方法について解説します。
特殊な技術を導入したシステムを使わない
まず大切なのは、ベンダーが独自に開発したなどの特殊な仕様の設計をシステムに取り入れないことです。独自開発のシステムはニッチな需要に応えてくれるケースがある反面、汎用性に乏しく、ベンダーロックインを招いてしまいやすい要素と言えます。社内システムの将来性を踏まえ、オープンソースのフレームワークで代替機能を実装できないかなど交渉しながら、システムの要件を固めましょう。
業務用アプリ開発ツールを活用
BtoB向けのアプリ開発ツールを使ったシステム開発は、ベンダーロックインを回避する上で良い選択肢といえます。アプリ開発ツールを使ったシステムであれば、特定の企業の技術に依存することなく自社で必要なシステムを構築することができるため、技術的・組織的な依存を回避しやすくなります。ドラッグ&ドロップで開発ができるような、ローコード・ノーコード開発のアプリなども登場しており、これらは汎用性を重視しているだけあってベンダーロックインとは疎遠でしょう。
IaaSやPaaSを活用してインフラ環境を構築
インフラ環境をAWSなどのIaaSやPaaSを使って整える、あるいはこれらの環境を導入していることをアピールしているシステム開発会社に開発を委託するというのも、ベンダーロックインを回避する上で役に立つ予防法です。柔軟性と拡張性に特化したクラウド開発環境であれば、特定企業の技術に自社システムが依存してしまう事態を回避できます。開発会社の汎用性を確保する上でも、これらのクラウドサービスへの理解を深めておきましょう。
人員体制を整備する
独自設計を採用しているシステム会社を選ばず、AWSなどのクラウド環境が整備されたシステム会社や自社開発を進めるためには、自社に最新のシステム事情に詳しい人材が不可欠です。ベンダーロックインに陥ってしまう要因として、ITリテラシーが自社に不足しているということも考えられます。こういった事態を回避できる、優れた能力を持ったIT人材を確保しておけば、将来性のあるシステム環境を主導してもらうことができるでしょう。
著作権が自社に帰属するよう契約書を作成
システム開発をフルスクラッチで委託する場合、委託先に著作権を自社に譲渡してもらうよう、契約書にその旨を盛り込んでおくことも大切です。基本的に、システム会社としては著作権をクライアントに移譲するメリットはなく、こちらから提案しなければ著作権は委託先が保持する形となることがほとんどです。あらかじめベンダーロックインのリスクを理解し、自発的に手を打てるリテラシーを身につけておくことも求められます。
ベンダー側に仕様書を必ず制作してもらう
仕様書をシステム開発会社が作成し、こちらに共有してもらえるようあらかじめ依頼しておくことも、将来のシステム移行を踏まえると大切なプロセスです。今は仕様書が必要ない、あるいは仕様書を渡されても内容を理解できないと考えていても、別のベンダーに開発を依頼することとなった場合、仕様書があるとないとではその委託コストに大きな差が出てきます。著作権の移譲と合わせてこちらも確認しておきましょう。
既にベンダーロックインに陥ってる場合の脱却方法
既にベンダーロックインに陥っている場合でも、対処法を把握しておけば自社にあった解決策を検討することができます。主な解決アプローチは以下の4つです。
まず自社が抱えている原因を把握する
はじめに検討したいのは、自社システムにおいてどのような点がベンダーロックインをもたらす原因となっているのかを把握すること。ベンダーロックインは複数の要因が重なっていたり、特定の要因のみが影響を与えていたりと、ケースバイケースです。自社が抱えている課題を正しく把握できれば、小さなコストでシステムの移行を進めることもできます。専門家に相談するなどして、問題の特定と分析を丁寧に実行しましょう。
仕様書や設計書を最新にする
既存の仕様書や設計書を最新の情報にアップデートすれば、必要なソリューションを導入しやすくなります。システム開発会社にこれらのドキュメントのアップデートを求め、共有してもらうようにしましょう。仕様書のアップデートは無料で実施してもらえることもあれば、追加料金が発生する場合もあります。どれくらいの費用になるかにもよりますが、多少の費用であれば先行投資と割り切って作成を依頼しておきましょう。
マイグレーションが得意な会社を探す
ベンダーロックインに陥っている場合でも、システム移行が不可能というわけではなければ、半ば強制的に手続きを進めることができます。システムの移行作業はマイグレーションと呼ばれますが、マイグレーション実績の豊富な委託先であれば、ベンダーロックインの問題にも対処できるでしょう。自社の状況を説明し、快諾してくれるような開発会社を探すことをおすすめします。
ITコンサルタントの活用
自社の状況把握や最適なソリューションが思いつかない場合、専門のITコンサルタントに相談するのも有効です。DXの需要増加に伴い、ベンダーロックインの問題に悩む企業の相談件数も増えています。ITコンサルタントであれば過去の事例と照らし合わせながら、自社にあった解決策の提案や、解決に向けたプロジェクト遂行の支援サービスも受けられるでしょう。専門家への相談は、自社だけで解決できない際にまず検討したい選択肢です。
システム開発の費用相場
つづいては、システム開発を外注した際にかかる費用相場をご紹介します。
システム開発の平均相場 | 233万円〜 |
システム開発の種類 | 費用相場 |
簡易顧客システム | 20万円~ |
Webシステム | 130万円~ |
業務システム | 400万円~ |
システム開発の費用相場をご紹介しました。より正確な費用を知りたい方は料金シミュレーターをご利用ください。
【まとめ】システム開発でお悩みならアイミツヘ
この記事では、ベンダーロックインとはどのような状況なのか、具体的にどう予防、あるいはどう解決すれば良いのかについて解説しました。システム移行を検討する企業は増えている一方、ベンダーロックインに悩んでいる企業や自治体は多く、専門家と協業で解決に取り組む必要があります。アイミツでは、おすすめのシステム開発会社を貴社のニーズに合わせて紹介しています。ベンダーロックインでお悩みの際には、お気軽にご相談ください。
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