ASPとパッケージの強み・弱みを理解してシステム開発を成功させよう【2024年最新版】
一昔前はシステム構築と言えば、ゼロから自社サーバーを構築して、設計から運用までに半年から1年も要する大掛かりなことになるものも珍しくありませんでした。
当然イニシャルコストもランニングコストもそれなりにかかり、運用するにも専任者を何人もアサインする必要がありました。
現在は、あらかじめ機能を絞り込んで手軽なイニシャルコスト、ランニングコストでスタートできるASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)を利用する方法や、自社サーバーや契約したデータセンターにインストールすることを前提としながらも、ゼロからシステム構築をすることに比べると非常に安価でオリジナルのシステムにカスタマイズできるパッケージソフトを使った方法が多数用意されています。
この記事では、こうしたASPとパッケージの強みと弱みを理解して、自社に最適なシステムの導入を図るための必須ポイントをお伝えし、「ASPは手軽、パッケージは作り込みもできる、という大体の特徴は知っているが、実際のところどうなのだろう?」という導入担当者の方の疑問にお答えします。
ASPとパッケージとは何か、特徴を押さえておこう
それでは、最初にASPとパッケージの定義をしておきます。
システム導入担当者の方は、これらの名前を何度も聞いたことがあると思いますが、意外とその詳しい特徴については知らないというケースも多いようです。
導入を検討するにあたってはそうした曖昧な部分を潰しておく必要があります。
ASPとは何か
ASPとは、アプリケーション・サービス・プロバイダの略です。
つまり、インターネットの回線インフラを提供するプロバイダのような、サービス事業者を指す名前です。
単なる回線提供と違って、アプリケーションを利用したいユーザーに対して、あらかじめプロバイダのシステムにインストールされたアプリケーションを使用期間や使用量に応じて課金して提供するサービスとなります。
提供するアプリケーションとしては、EC、CRM、SFA、グループウェア、会計、在庫管理などさまざまな種類があります。
自社が必要とするサービスの必要な機能だけを必要な期間だけ使えますので、莫大な初期投資がかからず安価にシステムを導入できます。
ただし、あくまでもASP事業者のシステムを借りる形になりますので、自社の要望に合わせたカスタマイズや作り込みには限界があります。
パッケージとは
パッケージ型のソフトウェアは、ASPと同じくEC、CRM、SFA、グループウェア、会計、在庫管理などさまざまな機能を実現することが可能です。
機能的には、ASPでしかできないサービスであるとか、パッケージでしかできないシステムという制限はほとんどありません。
またパッケージはレンタルではなく販売されますので、買い取りのイニシャルコストがかかってきます。
「それならば、安価なASP一択ではないのか?」と考える方がたくさんいると思いますが、パッケージは買取型なので、買い取ってから自社の実情に合わせてカスタマイズをすることが可能です。
パッケージ販売会社がカスタマイズを請け負う場合もありますし、パッケージ開発会社が請け負う場合もあります。
また、よく知られたパッケージであれば、自社の要望に合わせて柔軟にカスタマイズの要望を聞いてくれる開発会社もたくさんあります。
ASPとパッケージを5つのポイントで比較してみよう
レンタルのASPと買取型のパッケージの基本的な違いがつかめましたので、今度はASPとパッケージのそれぞれの特徴を5つのポイントに焦点を当てて比較検討してみましょう。
1. 初期費用
レンタル形式のASPの場合、初期費用は無料のものもありますし、かかっても数千円から数万円程度で済むサービスがほとんどです。
大規模なシステムの場合には数十万円単位でかかるところもありますが、これは本格的なデータベースシステムなどを提供する場合に見られ、同様のシステムをパッケージで導入した場合には数百万円から数千万円かかるようなことがほとんどです。
つまり、ASPとパッケージを比較すると初期費用は0の桁が1つか2つ違ってくるのが当たり前となっています。
もちろん、ASPの初期費用にはシステム構築費だけでなく、サーバーや回線などのインフラ部分も含まれますので、ハード、ソフト両方のトータルで比較するとさらにASPのコストメリットは際立ってきます。
2. 導入までの期間
ASPはすでにあるシステムをレンタルして利用するため、申し込んだ当日から使用できるケースがほとんどです。
パッケージの場合にはひな形部分はパッケージ内部に用意されていますが、カスタマイズのための設計や実装に一定の期間がかかります。
パッケージの導入の流れとしては、大まかに「要求開発」「要求定義」「外部設計」「内部設計」「テスト」といった過程が必要になってきます。
このあたりについては、アイミツまとめのこちらの記事なども、ぜひ参照してみてください。
3. カスタマイズ性
「1. 初期費用」と「2. 導入までの期間」では、主にASPのメリットが浮かび上がってきました。
確かに初期費用と導入期間だけを見ると、「やはりASPタイプにしようかな…」という判断に傾きそうになりますが、カスタマイズ性においては圧倒的にパッケージが有利です。
ASPは、EC、CRM、SFA、グループウェア、会計、在庫管理などに必要な機能を最大公約数的にピックアップして、共通のプラットフォームとして提供します。
ちょうどチェーン店が店舗ごとの独自メニューや店舗デザインを犠牲にして全国共通のサービスを展開することでコストメリットを出すのと同じで、ASPも共通部分に機能を集約することでコストメリットを出しているのです。
つまり自社においてEC、CRM、SFA、グループウェア、会計、在庫管理を採用したのと同じシステムを、ライバルの同業他社も採用しているというケースが生じるわけです。
また、顧客管理や営業支援ツールで他社と差別化したくても、自社で導入したCRMやSFAを他社でも使っているとしたら、せっかくシステムを導入しても他社以上の業務改革は難しい、もしくは限界がある、ということになりかねません。
4. 運用管理
ASPの場合、システム的な運用管理はサービスプロバイダ側がやってくれます。
ASPはアプリケーションやインフラを保有しているのがサービスプロバイダ側になりますので、自社の責任において必要なアップデートを行い、サービスが滞りなく提供できるようにメンテナンスを行います。
これに対してパッケージソフトの場合、アプリケーションやインフラを保有しているのは導入企業側になりますので、たとえ自社サーバーにシステムをインストールせずに、データセンターなどにインストールしている場合であっても、必要なアップデートやサービスの管理は自社で行うことになります。
5. 保守・メンテナンス
システムを導入すればすべてが終わりということではなく、どんな小さなシステムであっても保守・メンテナンス作業は発生してきます。
例えば一番分かりやすいのはウイルス対策です。
毎日にように世界中で新しい脅威となるウイルスがばらまかれており、それに対して有効なウイルス対策が行われるという形で、セキュリティアップデートはいたちごっこのようになっています。
ASPの場合には、こうしたメンテナンス作業はプロバイダ側で実施され、原則的に常に最新の状態であることが無料で期待できます。
予期せぬトラブルの場合にも、専任の技術者が迅速に対応してくれますし、不具合を治すのにサービス利用者側の別料金も必要ありません。
提供するソフトウェアのバージョンアップの料金も無料です。
これに対して、パッケージの場合には、保守・メンテナンス作業、ソフトウェアのバージョンアップ料金も有償となります。
通常の保守・メンテナンスのほか、大きなシステムトラブルが生じた場合には、復旧作業のために販売元やメーカーからエンジニアを派遣してもらう必要もあり、月額保守費用や単発の保守費用などのコストがかかってきます。
バージョンアップの際にはサーバーや各端末に対して手作業によるアップデート作業が発生します。
トラブルが発生した際も販売元からエンジニアを呼ぶなどの対応が必要となり、管理運用にはそれなりの手間とコストがかかります。
またバージョンアップが有料のものであった場合、新たに購入費用も発生します。
ニーズ別にASPとパッケージどちらが最適か検討してみよう
ここまでASPとパッケージの特徴をそれぞれ見てきました。
では、具体的に自社にとってどんなメリットがあるのかについて考えてみましょう。
システム導入や構築は住宅と似ていますので適宜住宅と比較しながら検討してみます。
手軽に始めて費用をかけずに運用したい ~賃貸住宅パターン
ASPのメリットは、システムの導入を思い立ってすぐに始められるところです。
先程の5つのポイントから考えると、下記のようなメリットや注意点があります。
- 5つのポイント
-
- 初期費用
賃貸で借りる場合には、敷金礼金や仲介手数料などを支払えばすぐに入居でき、あとは月額の家賃だけでそこに住むことが可能です。
ASPの場合にも、一旦サービスを使い始めたら月額料金のみでサービスを使い続けることが可能です。 - 導入までの期間
どんな家なのか、実際に不動産屋さんと一緒に室内を確かめるのと同じように、多くのASPではアプリケーションを実際に使ってみるお試し期間が用意されています。
気に入ったらその日に契約してすぐにサービスを使うことも可能です。 - カスタマイズ性
手軽に安価にスタートできるASPではありますが、賃貸住宅の内装を勝手に変えられないように、ASPのアプリケーションのカスタマイズには限界があります。
とは言え、インタフェースのデータ項目を変更したり、配色を自分の好みに変えたりといった最小限のカスタマイズは可能です。
ASPで可能なカスタマイズについて確認してみましょう。 - 運用管理
住宅の場合でも、設備の故障や大規模な修繕などは不動産屋さん経由で大家さんが費用を負担しますが、ASPでも基本的にサービスのインフラ部分やソフトウェアのアップデートなどはASPが負担します。 - 保守・メンテナンス
保守メンテナンスについても住宅を考えると分かりやすいです。
お掃除などの日常的な部分に関してはそこに居住している店子が行いますが、万が一の不具合などはASPが責任を持ってくれます。
- 初期費用
こだわりの自社システムを構築したい! ~一戸建てパターン
オリジナルの機能やインタフェースを搭載して自社の競争力を追求したい。
そんな場合には独自の機能開発が可能なパッケージがおすすめです。
先程の5つのポイントから考えると、下記のようなメリットや注意点があります。
- 5つのポイント
-
- 初期費用
注文建築の住宅のように、賃貸と比べて初期費用はそれなりに準備しておく必要があります。
具体的な費用は案件ごとにかなり異なりますので、個別に確かめる必要があります。
安いもので数十万円から数百万円、本格的なシステムを組む場合には千万円単位になることもあります。 - 導入までの期間
家の設計から完成まで時間がかかるように、「要求開発」「要求定義」「外部設計」「内部設計」「テスト」といったプロセスが必要になりますので、数ヵ月単位の準備期間が必要です。 - カスタマイズ性
一戸建て住宅のデザインを建築士に依頼するように、カスタマイズ性については、かなりの自由が利きます。
ただしパッケージを利用する場合はフルスクラッチではなく、ある程度のひな形ができているので、そのひな形で本当に自社がやりたい機能を実現できるかについては十分に確認することが必要です。 - 運用管理
自分で所有する不動産、住宅の管理と同じく、自社のインフラにパッケージをインストールして利用する場合は、運用管理は自己責任となります。
ただし、最終的な責任は自社で負うものの、運用管理をアウトソーシングする方法もあります。 - 保守・メンテナンス
住宅の保守メンテナンスや災害の対応と同じく、万が一の不具合などの対応も納品後の保証期間が切れたあとは自社対応が基本です。
ただし、運用管理のように保守・メンテナンスについても業務をアウトソーシングする方法もあります。
- 初期費用
ECサイトなどで集客・販促などの機能も利用したい
その他、賃貸住宅ではペットや楽器などの制限があるように、例えばECサイトのASPを使った場合などには、集客などの施策を自由に打てないケースが大半です。
例えば、Amazonや楽天などのショッピングモールの場合、独自のプロモーション活動やキャンペーンはできません。
パッケージを利用する場合は、すべてのシステムが自社所有なので、独自の集客施策をとることが可能です。
ASPの利用を考えているならば制限については事前にしっかりと確認しておくことが大切です。
システム開発の費用相場
最後に、システム開発を外注した際にかかる費用相場をご紹介します。
平均相場 | 233万円~ |
システム開発の種類 | 費用相場 | |
簡易顧客システム | 20万円~ | |
Webシステム | 130万円~ | |
業務システム | 200万円~ |
システム開発の費用相場をご紹介しました。より正確な費用を知りたい方は料金シミュレーターをご利用ください。
【まとめ】
いかがだったでしょうか。一昔前フルスクラッチでのシステム構築が当たり前だった時代に比べて、ASP、パッケージも充実してきていますので、手軽にシステムの導入・構築が可能になってきています。
導入コストの安さと手軽さのASP、柔軟なカスタマイズ性が魅力のパッケージという選択肢があるわけですが、結局どちらにするかの決め手は、自社でどんなシステムを構築したいのかをはっきりさせておくことにあります。
そうした自社の課題の整理がないままにプロジェクトを進めてしまうと、導入コストの安さと手軽さを重視してASPを選択した場合では、結局自社のそれまでの競争力ある業務フローが台無しになってしまって、現場で誰もASPシステムを使わずにこれまでの使いにくいシステムが復活してしまったりすることがあります。
逆にカスタマイズ性を重視してコストをかけてパッケージシステムを導入した場合では、肝心のカスタマイズ部分の仕様をきちんと詰めておらず、誰にとっても使いにくいお荷物システムと成り下がってしまったりするなどのケースもあり得ます。
また、ECシステムの集客制限など、事前に確認しておくべき事柄はしっかり洗い出しておきましょう。
独自プロモーション施策を前提としてECサイト展開を考えていたのに、ASPで制限があることにあとから気がついて、ECサイト運営戦略を根本から見直す必要になったなどという場合、それまでの投資がすべて無駄になってしまうなどのケースも考えられます。
こうした自社の課題の整理から間違いのないサービス・製品選びをしたいなら、ぜひ経験豊富な「アイミツ」にご相談ください。
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