システム開発の成功はヒアリングシートの活用にあり

ボールペンで記入する人

更新日:2017年09月25日 | 公開日:2017年06月20日

システム開発において最も重要なことは、発注者の意向を十分に汲み取ってそれをシステムに最大限反映させることです。
どんな業務プロセスを改善したいのか、IT化によって現在はできていないどのような業務プロセスが創造できるのか、などを初期段階において発注側と開発側が共有することが大切です。

そのためには、開発プロセスの上流工程、超上流工程において開発側が発注側から十分なヒアリングを行うことが必須となってきます。

ところが、この重要性は誰もが認識しながらも、すべてのシステム開発プロジェクトにおいてヒアリングが成功しているとはとても言い難いのが現状です。

システム開発におけるヒアリングとは、開発の設計図を作る初期の重要ポイントですが、このヒアリングに明確な方法論がなく、担当者の属人的な経験と勘によって進められてしまう場合も多いのです。

システム開発のヒアリングにおいて、このような属人化を避け、誰が行っても必須ポイントを網羅した質の高いヒアリングを可能にするためには、「ヒアリングシート」を有効に活用した発注者と開発者の対話が必要です。

この記事では、そうした「ヒアリングシート」活用のコツについてお伝えします。

上流工程、超上流工程でヒアリングに失敗するとプロジェクトは黄色信号

ひらめく男性

システム開発において「上流工程」「超上流工程」では次のような作業を行います。

超上流工程
  • 会社レベルでのIT投資の目的「我が社はこれを目指すべき」の明確化
上流工程
  • 現場レベルで「ここを改善すべき」という要求の明確化

両者とも発注側の頭のなかにある理想を、エンジニアが理解できる言葉に置き換える仕様策定がこのフェーズの目的になります。

この段階で、曖昧なヒアリングを元にしてプロセスを先に進めてしまうと、「仕様変更」や、開発プロセス段階で「手戻り」(前の工程に戻ってやり直しをすること)が生じてしまいます。

そうなると最初は、お互いなんとか紳士的なコミュニケーションを心がけていたのに、最終的に「言った言わない」の水掛け論になりがちです。
発注側と開発側の関係が悪化した上、発注側では社内調整による疲弊、開発現場では士気低下などの問題が生じれば、納期の大幅遅れや最悪の場合プロジェクト自体の空中分解にもつながってしまいます。

初期のヒアリングに失敗するとプロジェクトは開始早々黄色信号が灯ってしまうのです。
それでは、どうしてこのようなヒアリングの失敗が起きてしてしまうのでしょうか?

システム開発の「目的」が伝えられないとヒアリングは失敗する

先程整理したように、システム開発において、発注側の思考は下記のようになっています。

■ 会社レベルでのIT投資の目的「我が社はこれを目指すべき」の明確化(超上流工程)
■ 現場レベルで「ここを改善すべき」という要求の明確化(上流工程)

大局的な見方をする超上流工程と、現場的な視線の上流工程の違いはあるものの、両者ともシステム開発の目指すべき方向性、目的を志向しています。

しかし、開発側ではこの方向性や目的を十分に汲み取ることなく、「何を作ったらよいか」という視点にばかり目がいってしまう傾向にあるのです。

一例を挙げれば、発注側としては「古いマーケティングシステムを刷新して現場の営業マンが自分でデータを活用できるCRMを作りたい」と目的志向で考えていたとしても、開発会社は「現在の汎用機をWindowsベースのCRM付きオープンシステムに変更すればよいのだな」という単なる手段、何を作ったらよいかにのみ視点がいってしまうのです。

このため、「Windowsベースにはなっているけど、現場の営業マンがCRMを使いこなすにはインタフェースが不十分じゃないか」(発注側)、「いえ、Windowsの画面からデータベースにアクセスできるようにしたので、あとは自分のデスクから頑張ってデータを引き抜いてください」(開発側)というような齟齬が生じてしまうのです。

このとき、システム開発の目的が「Windowsベースのオープンシステムに変更すること」ではなく、「営業マンが自分でデータを活用できるCRMを作りたい」ということだという目的がドキュメントとして残っていれば、こうした齟齬は生じにくくなりますし、仮に生じたとしても責任が明確化できます。

それでは次に、こうした発注者側の目的を的確に捉え、ドキュメントとして残すためのヒアリングシートはどうあるべきかを見てみましょう。

開発の「目的」をきちんとドキュメント化するヒアリングシートとは

システム開発の「目的」を開発側が理解することためには、「理由付け」をしながら、要望を具体化していくことが大切です。
ヒアリングシートはもちろん各社の個性があってよいわけですが、要素として下記の例の「↓なぜ」の部分がヒアリングシートに埋め込まれていることが必要です。

ヒアリングされる側のコツを確認する

ガッツポーズをする男性

それでは、先程の例をヒアリングされる側からもう一度検証してみましょう。

理由付けの例

■会社レベルでのIT投資の目的「我が社はこれを目指すべき」パターン

1. 我が社は顧客満足度ナンバーワン企業を目指すべき
  ↓なぜ?
2. 売上至上主義では限界があるから
  ↓なぜ?
3. 自社より資本力のあるライバル企業に勝てないから
  ↓なぜ?
4. 営業マンの数や予算を割ける広告宣伝費に差がありすぎるから

一定の具体性を持ったところで、今度は、どうやって実現するかをヒアリングしてもらうことが大切です。
今度は「↓どうする?」で解決の方法を具体化していきます。

4の続きから行ってみましょう。

解決方法の具体化

4. 営業マンの数や広告宣伝費に差がありすぎるから
  ↓どうする?
5. 自社のホームページを営業マン代わりにする
  ↓どうする?
6. 問い合わせ窓口からの受付をリードナーチャリングにつなげる
  ↓どうする?
7. 問い合わせしてきた人の見込み度をスコアリングする
  ↓どうする?
8. HubSpotやMarketoなどのマーケティングオートメーションツールを検討する
  ↓どうする?
9. 自社で使いこなせるか不安を感じる
  ↓どうする?
10. 自社の課題に特化したマーケティングオートメーションツールを自作する
  ↓どうする?
11. オリジナルのツールは魅力的だが予算はあまりかけられない
  ↓どうする?
12. 自社にとって必要なインバウンドマーケティング機能は何かを洗い出す
  ↓どうする?
13. セミナー申し込み、参会者のフォローが十分にできていないのでそこから始めたい
  ↓どうする?
14. セミナー申し込み、参加者のフォローに特化したマーケティングオートメーションツールを構築する
  ↓どうする?
15. 機能を絞り込んだマーケティングオートメーションツールの要件定義に移る

ざっと、このようなやり取りを行うことで、「目的」がぶれない仕様書作成に移ることができます。
最初の目的は何だったかをもう一度確認してみましょう。

最初の目的は「我が社は顧客満足度ナンバーワン企業を目指すべき」でした。

最後の結論部分で、「セミナー申し込み、参加者のフォローに特化したマーケティングオートメーションツールを構築する」という、仕様作成の出発点が明確化されましたが、これはまさに顧客の満足度の向上に直結するシステム構築になっています。

ライバル企業のように、営業マンのマンパワーに任せて次々と見込み客にアプローチしていくのではなく、自社の展示会に来てくれた濃い見込み客をじっくり育てて、顧客満足度を高めた上で実際の購買につなげていこうというシステムが見えてきました。

この会社にとっては、ライバルの大企業に営業マンのマンパワーではかなわないので、インターネットを使って、顧客満足を自動化できる(マンパワーを割かなくてもよい)マーケティングオートメーションツールこそが、必要だったわけです。

この「↓なぜ?」と「↓どうする?」のプロセスがないままに「我が社は顧客満足度ナンバーワン企業を目指すべき」だけをシステム化しようとしても、具体的な解決の方向が見えてきません。

相手が「目的」を理解しているかを確認しながら話す

「↓なぜ?」と「↓どうする?」がヒアリングシートにきちんと埋め込まれている、もしくは、ヒアリングを行う営業マンやシステムエンジニアが「↓なぜ?」と「↓どうする?」を的確に尋ねてくれる場合には、先程のような「目的」が明確化された具体的なシステム構築の方向性が見えてきます。

しかし、すべてのシステム構築会社がこの「↓なぜ?」と「↓どうする?」を上手に引き出してくれるとは限りません。
例えば、経験の浅い営業マンやシステムエンジニアの場合、ヒアリングの席上でいきなり「業務やシステムに対する意見を自由に言ってください」と話を振ってくる場合があります。

こうしたヒアリングされる側も居心地の悪い会議の席上では、なかなか自由な意見など出てきません。
出てきたとしても、問題・要望がとりとめもなく出てきたり、「そもそも上の人間はIT戦略を積極的に考えていない」などの単なる不満が出てきて会議の収拾がつかなくなったりする場合もあります。

もし、不幸にして「↓なぜ?」と「↓どうする?」を上手にヒアリングしてくれる営業マンやシステムエンジニアではなく、「業務やシステムに対する意見を自由に言ってください」と話を振ってくる無策な担当者にあたってしまった場合には、ヒアリングを受ける側で「↓なぜ?」と「↓どうする?」を上手に伝えていく必要が出てきます。

本来はヒアリングシートに埋め込まれているべき「↓なぜ?」と「↓どうする?」ですが、何度やっても会議に建設的な方向性を見いだせないという場合には、自分たちがヒアリングされたつもりになって「↓なぜ?」と「↓どうする?」を盛り込んだシートを用意し開発会社の担当者に資料として見せるということもよいかもしれません。

渡されたアンケートシートに「↓なぜ?」と「↓どうする?」を記入するのも手

開発会社の営業マンやシステムエンジニアがヒアリングに先立って、アンケート用紙を関係各部署に記入してほしいと持ってくる場合もあります。

現状の組織図や、問題の状況、システム開発の目的などを分かる範囲で書いてほしいという簡単なものである場合がほとんどです。
このアンケート用紙を元に、システム構築の目的を「↓なぜ?」と「↓どうする?」で具体化することがアンケートを配布する理由ですので、あまり深刻に考える必要はありません。

しかし、記入したアンケート用紙を元にして「↓なぜ?」と「↓どうする?」という方向に進まないという場合(開発会社の担当者のヒアリングの力量がそれほどではない場合)には、記入したアンケート用紙のコピーを取っておき、そこに「↓なぜ?」と「↓どうする?」を加えて、次回の打ち合わせに臨んでもいいでしょう。

この「↓なぜ?」と「↓どうする?」を記入しながらアンケート用紙を埋めていくという作業は、担当者1人がやらずに部署の関係者や、可能であれば上席の人間も交えて行うことが理想です。

それによって、自社の抱えている問題点や、どうやって大局的な目的を解決していったらよいかの方向性が確認できる場合が多いのです。

そうした作業を社内で行った上で、開発会社の担当者との打ち合わせに入れば、ヒアリングの効果もさらに高まるでしょう。

合意形成へのシナリオが示されているのが優れたヒアリングシート

パソコンと付箋

「↓なぜ?」と「↓どうする?」で目的と解決方法を具体化したあとは、開発会社から問題解決のための提案を受ける段階です。

先程の例で言えば、システム開発の方向性について下記のような結論がいったん出ました。

========================================
13. セミナー申し込み、参会者のフォローが十分にできていないのでそこから始めたい
  ↓どうする?
14. セミナー申し込み、参加者のフォローに特化したマーケティングオートメーションツールを構築する
  ↓どうする?
15. 機能を絞り込んだマーケティングオートメーションツールの要件定義に移る
========================================

システム開発の目的と方向性が確認できたここからあとは、社内の関係各部署との「合意形成」がポイントとなってきます。
言い換えれば、ここから先は、ヒアリングシートで情報を集めるというだけでなく、誰からヒアリングをすることがとても重要になってきます。

優れたヒアリングシートは、「↓なぜ?」と「↓どうする?」で目的と解決方法を明確化したあと、誰にそれをオーソライズしてもらうかを詰めていくためにも活用できます。

「セミナー申し込み、参会者のフォローが十分にできていない」と普段問題点を指摘してくれているマーケティング部門や、現場の営業マン、さらに手作業ながらもセミナー申し込みや参加者のフォローを行っている現場の担当社員などを巻き込んで、必要な要件定義に移っていく必要があります。

場合によっては、数年がかりで営業プロセスの抜本的な改革を目指している営業担当取締役を巻き込む必要もあるかもしれません。

こうした「合意形成」が自然とでき上がっていくような方向で、最初の「目的」と「解決方法」を引き継いでいけるツールとなるのが優れたヒアリングシートだと言えるでしょう。

【まとめ】システム開発の質は最初のヒアリングシートで決まる!

パソコンと万年筆

以上、優れたヒアリングシートがシステム開発を成功に導いていくのだということを解説いたしました。
冒頭でも触れたように、残念ながらすべての開発会社で優れたヒアリングシートを用意しているというわけではなく、逆にヒアリングに明確な方法論がなく、担当者の属人的な経験と勘によって進められてしまう場合も多いのが現状です。

外注先候補の担当者とコンタクトを取り始めたとき、本文中でも触れたような「業務やシステムに対する意見を自由に言ってください」というような、方法論を持たない相手と無駄な時間を過ごしている…と感じたら迷わず別の開発会社を探すべきだと言えます。

「あの会社はヒアリングすることはあまり上手ではなかったが、すばらしい要件定義を仕上げてくれて、最終的にすばらしい製品を収めてくれた」ということはまずないからです。

開発会社のノウハウがぎっしりと詰まったヒアリングシートを駆使して、担当者がさらに口頭で目的と解決方法を明確化し、プロジェクト計画を無理なく合意形成に導いてくれるような会社こそ、最終的に満足の行く納品をしてくれると言っていいでしょう。

こうした過去のシステム開発の成功体験が反映されたヒアリングシートを駆使し、プロジェクトを成功に導いてくれる会社をお探しならば、経験豊富な「アイミツ」にぜひご相談ください。
御社のプロジェクトを成功に導く明確な方法論を持った会社をピックアップさせていただきます。

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