ICT教育とは？メリット・デメリットや活用事例を解説【2024年最新版】

世代を問わず広く受け入れられつつある「ICT教育」ですが、具体的にどのような取り組みなのかはよく知らないという方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、ICT教育の概要からメリット・デメリット、活用事例などを解説していきます。ICT教育に関心をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。

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そもそもICT教育とは、具体的にどのような取り組みを指す言葉なのでしょうか。ここからは、ICTやICT教育の概要について解説します。

ICTは「Information and Communication Technology」の略称で、日本語では「情報通信技術」訳されます。文字どおり情報通信全般の効率化・高度化を図る技術を指すもので、ICTの発展がビジネスのグローバル化や経済成長を支えてきたといっても過言ではありません。
ICTと混同される言葉に「IT」がありますが、ITは「情報技術」を指すのに対してICTは「情報技術をどう活用するか」が念頭に置かれたものです。また、近年は「IoT」という言葉を耳にする機会が増えましたが、こちらはICTの技術を活用してモノをインターネットにつなぎ相互制御する仕組みを指します。家電製品や自動車などをインターネットに接続することで、より高い生産性や利便性の実現を図っています。

ICT教育とは、高度な情報通信技術を教育現場に取り入れ、教育を刷新していくための取り組みです。具体的には児童・学生にスマートフォンやタブレットを付与し、これらのデバイスを通じて教育を提供する事例があげられます。黒板は電子ボードに置き換えられるか使用せずに教育が行われ、1台のデバイスで教材の提供から資料配布、テスト実施にいたるまですべてが完結されるのが特徴です。すでにビジネスでは紙やペンを使わないペーパーレス化が進んでおり、こうした社会のありかたに柔軟に対応するためにもICT教育は重要なアプローチだと言えるでしょう。

「ICTとは何か」について詳しく知りたい方は、下記記事をご覧ください。

ICT教育が普及する背景として無視できないのが、「GIGAスクール構想」の存在です。GIGAスクール構想は文部科学省が推進する取り組みで、コンピューターと高速通信環境の整備を通じて児童・生徒がICT端末を活用できるようになることを目的としています。ただコンピューターや通信環境を導入するのではなく、デジタル教科書やAI搭載ドリルといったソフトや、ICT支援員をはじめとする外部人材による指導体制の強化も含めて構想が推進されています。

ICT教育の実践は、具体的にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。ここでは、教育を受ける側・教育を提供する側それぞれのメリットを紹介します。

ICT教育の大きなメリットが、効率的な学習が可能という点です。従来は児童や生徒がその日の時間割に合わせて教科書やノートを持参する必要がありましたが、登下校の負担が大きく学習を妨げる要因でもありました。ICT教育が浸透した現場ではスマホやタブレットで座学を完結でき、インターネット経由で提出物も提出できるため最小限の負担で効率的に学習を進められます。

ICT教育においては、ITリテラシーの向上もミッションの1つと言えます。スマホやタブレット、PCなどのデバイスを扱えるのは当たり前であり、多くの企業でもこれらの端末を前提とした業務プロセスが浸透しています。ICT教育を国が主導してデジタル端末を使いこなす機会を均等に与えることで、情報格差・基礎スキル格差を是正しながらICT人材の育成を進められるでしょう。

児童・生徒が高いモチベーションを持って学習に取り組む可能性が高まるのもICT教育のメリットです。教科書や黒板はテキストや静止画が主体ですが、ICT教育ではダイナミックな映像や動きのある資料が用いられるためゲーム感覚で学習を進められます。特に理系科目は動きのあるコンテンツを通じて学習を進めることで、好奇心を刺激できると言われています。

ICT教育では1人ひとりの児童・生徒に合わせた学習を提供できるため、個性や強みを伸ばすのに有効な教育を実践できます。日々の学習データやテスト結果をデータとして管理し、得手不得手や好奇心の傾向、性格を分析することで教育者の主観に頼らない最適な教育アプローチの模索が可能です。やみくもに与えられたカリキュラムをこなすのではなく、より効率的な学習が実現するでしょう。

これまでの教育・学習は学校をはじめとする特定の施設でまとめて行うのが一般的でしたが、ICT教育の現場ではインターネットを活用したリモート教育が進んでいます。通学が困難な遠隔地に住む児童・生徒も自宅から地域の授業や都市部で行われる高度な教育に触れる機会を得られるのは大きなメリットだと言えます。

ICT教育の実践は、従来よりも教員にかかる負担を抑えられるとされています。プリントの印刷や採点といった日常業務から、生徒1人ひとりの管理や進路検討などの意思決定にいたるまであらゆる業務の効率化を図れます。教員ごとの能力格差や負担軽減による人手不足の解消によって、よりレベルの高い教育を児童・生徒へ提供できるでしょう。

教育に関するあらゆる情報をデータ化し、デジタル端末でやりとりできるようになれば教員間でのコミュニケーションにもいい影響が期待できます。生徒ごとのデータを簡単に共有できるため、担任でなくても1人ひとりの特性に合わせた教育の提供を進められるでしょう。授業で使用する資料の更新も容易になるため、各授業の内容の把握にも役立ちます。

ICT教育にはさまざまなメリットがある一方で、注意すべきデメリットが存在するのも事実です。ICT教育の導入で失敗しないためには、デメリットを最小限に抑える工夫が必要でしょう。

ICT教育をスムーズに導入・実践するには、教員がICTに対する理解を深める必要があります。教える側にデジタルについての知見がなければ、児童・生徒にデジタル端末活用の見本を示せないだけでなく、授業効率の低下を招くことになるでしょう。ICT教育の実施にあたっては児童・生徒にデジタル端末を配布するだけでなく、教員向けの研修期間を事前に設けなければなりません。

ICTをうまく活用できるか否かは、教員によって差が生まれることも十分に考えられます。スマホやタブレットの操作に慣れている教員であればスムーズにICT教育にも適応できる一方で、デジタル端末に不慣れな教員はうまく扱えないこともあるかもしれません。スキル差を教員間でカバーしながら、レベルの高いICT教育の実現に取り組むのが理想です。

ICT教育の実施にあたっては、当然ながら導入コストがかかります。特にスマホやタブレットは児童・生徒への配布分だけでなく教員用も必要なため、少なくとも数十台は確保しなければなりません。ICT教育にはソフトや資料も必要となるため、予算の捻出に向けた取り組みが求められます。しかし、ICT教育は国が推進する取り組みなので、補助金制度の活用も視野に入れることで負担の軽減につながります。

セキュリティリスクもICT教育における大きな懸念事項です。業務や情報管理の大半をデジタル化するということで、マルウェア感染や不正アクセスによる情報漏えい、システム停止といったリスクが飛躍的に高まります。設備だけでなくセキュリティ対策にも十分に投資をしなければ、サイバー攻撃による被害を被る可能性があるでしょう。

ICT教育をスムーズに導入するためには、以下のポイントを押さえておく必要があります。

ここからは、それぞれのポイントについて詳しく解説していきます。

まず必要なのが、ICT機器を導入するための環境の整備です。インターネット環境の整備はもちろん、「どのようにICT教育を取り入れるのか」「カリキュラムの実現にはどんな設備が・どれだけ必要なのか」「いつから本格運用を開始するのか」など具体的な計画を作成した上で環境を整えていきましょう。

ICT教育は大規模な設備導入やカリキュラムの刷新が不可欠なので、実施にあたっては専門家への相談も必要です。「具体的に何をすればいいのか」や「どうすれば現場の問題解決やICT教育の導入効果を高められるのか」などさまざまな側面からソリューションを専門家とともに検討しましょう。

ICT教育の導入には、教員向けの研修も重要な施策です。実践する中でもノウハウは蓄積していきますが、デジタル端末の基本的な操作方法やICT教育に対する理解は事前に深めておく必要があります。状況によっては外部の専門家を講師として招聘した研修の実施も視野に入れることをおすすめします。

ICT教育の導入後には、想定外の混乱やトラブルが起きることも十分に考えられます。そうした事態に備えて教員向けの相談窓口を設けておけば、万一の事態であってもスムーズに解決できます。教員の負担軽減にもつながるため、相談窓口の設置は必須だと言えるでしょう。

ICT導入にともなうセキュリティ対策は、欠かせない取り組みです。サイバー攻撃の被害を受けると大きな損害を被ることもあるため、少しでもリスクを抑える必要があります。ICT教育の専門家だけでなくセキュリティの専門家にも知見を求め、サイバー攻撃対策を徹底しましょう。

日本の教育現場では、どのようにICTが活用されているのでしょうか。ここからは、代表的な2つの事例を紹介していきます。

福岡県久留米市立の篠山小学校では、教員間の情報共有の課題を解決すべくICTを導入しました。これまでは児童の出欠確認など担任とそれ以外の教員による連絡事項の伝達に多くの時間・負担が強いられており、業務効率の低下やケアレスミスを招いていました。
同校では「Google Workspace for Education」を導入し、Google スプレッドシートやGoogle カレンダーを通じてあらゆる情報をオンライン上で共有・確認できるようにしたことが負担の軽減につながったようです。欠席者に関する情報共有にもGoogle チャットが役立てられています。

※出典：文部科学省「働き方改革事例集 改訂版」https://www.mext.go.jp/content/20220221-mxt_kouhou01-000020595_2.pdf

岐阜県岐阜市立の岐阜中央中学校は、生徒の学習改善と教員の働き方改革を進める手段としてICTを導入しています。従来は紙を使った業務が主体でしたが、これらをデジタル化し完全ペーパーレス化の推進によって業務効率化・負担軽減を実現しました。
ICTの導入にあたっては苦手意識を持つ教員もいましたが、担当者によるサポートによって現在はその有効性を実感し能動的に活用しているそうです。

※出典：文部科学省「働き方改革事例集 改訂版」https://www.mext.go.jp/content/20220221-mxt_kouhou01-000020595_2.pdf

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この記事ではICT教育の概要や実践によるメリット・デメリット、導入時のポイントなどについて解説してきました。ICT教育は多くのメリットを教育現場にもたらしますが、その一方で懸念事項があるのも事実です。ICT教育の導入にあたっては、プロの意見も踏まえて作業を進めていく必要があるでしょう。
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