社会保険の会社負担はいくら?各保険料の計算方法を解説【2024年最新版】
多くの企業にとって欠かせない手続きである社会保険ですが、保険料の負担割合や計算方法が分からないという方もいらっしゃるでしょう。そこで今回は社会保険の種類や加入義務などを分かりやすく解説するとともに、社会保険料の会社負担割合についても具体的な例を交えながら詳しく紹介します。計算時の注意点や加入時の手続き方法についても解説するので、社会保険の基礎を押さえたい方はぜひ参考にしてください。
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社会保険の種類
社会保険とは、国民が社会生活を送る中で遭遇し得るケガ、病気、失業、障害といったさまざまな事態に遭遇した際に生活が困窮しないよう支援する公的な保険制度です。医療保険や自動車保険といった民間の保険とは異なり、特定の条件を満たす場合には加入が義務付けられており、加入者全体で保険料を出し合って財源を確保することで、相互に助け合う考えに基づいて運用されています。なお、「社会保険」という言葉は複数の保険制度の総称ではあるものの、「広義の意味」「狭義の意味」で扱いが変わるため注意が必要です。
【広義の意味】
以下5種類の保険制度の総称
1.健康保険
2.厚生年金保険
3.介護保険
4.雇用保険
5.労災保険
【狭義の意味(一般的に使われことが多い)】
5種類のうち、以下2種類のみをまとめて指す総称
1.健康保険
2.厚生年金保険
社会保険の加入義務について
狭義の意味として用いられる社会保険の中でも重要度の高い健康保険・厚生年金保険を例に出すと、これらの保険は事業所(会社)単位で適用される仕組みとなっており、加入義務の有無は以下の2パターンに分かれています。
・任意適用事業所:加入することを任意で決めた事業所
・強制適用事業所:運営者の意向に関わらず、加入が義務付けられている事業所
それぞれの概要や条件の詳細は後述しますが、上記のどちらに該当するかで手続きの有無などが変わりますので、企業は必ず把握しておく必要があります。
社会保険の任意適用事業所とは
任意適用事業所とは、厚生年金保険・健康保険の加入が法律で義務付けられている事業所以外の事業所であり、なおかつその上で厚生労働大臣(日本年金機構)の認可を受けて適用となった事業所を指します。前提として、加入が義務付けられている強制適用事業所に該当しない事業所の場合、厚生年金保険・健康保険への加入義務はありません。ただし、強制適用事業所以外の事業所であったとしても、自ら任意適用申請の手続きを行い、要件を満たして場合には加入することが可能です。
ここで注意したいのが「任意適用事業所は加入が義務化されている」という点で、任意適用事業所として申請すると、事業者や従業員の意思に関わらず加入が義務付けられることとなります。
社会保険の強制適用事業所とは
強制適用事業所とは、「強制」という言葉が示すとおり、社会保険(厚生年金保険・健康保険)への加入が強制的に義務付けられている事業所を指します。任意適用事業所とは異なり、届出などを経て決定されるのではなく、以下いずれかに該当する事業所すべてが強制適用事業所なので注意しましょう。
・法人の事業所(事業主のみの場合も)
・従業員が常時5人以上が働いている事業所、工場、商店などの個人事業所(農業、漁業、サービス業の一部などを除く)
上記からも分かるとおり、すべての法人は強制適用事業所です。個人事業主であっても、常時5人以上が働いている場合は同様に強制適用事業所となる可能性が高いことから、非常に多くの事業者が社会保険の加入義務を負っている状況にあります。
適用事務所でも加入適用外になるケース
任意適用事業所もしくは強制適用事業所に該当する事業所は原則社会保険(厚生年金保険・健康保険)への加入が義務付けられますが、以下のようなケースでは適用外となります。
・75歳以上の従業員(一定の障害がある場合は65歳以上)
・日々雇い入れられる人(1カ月を超えて継続的に使用されるようになると加入義務が発生する)
・2カ月以内の期間を定めて使用される人
・所在地が一定しない事業所に使用される人
・季節的業務(4カ月以内)に使用される人
・臨時的事業の事業所(6カ月以内)に使用される人
・船員保険の被保険者(健康保険の適用外)
・国民健康保険組合の事業所に使用される人(健康保険の適用外)
・健康保険の保険者、共済組合の承認を受けて国民健康保険へ加入した人(健康保険の適用外)
社会保険の適用外となるのは、あくまで従業員単位での話となるため、従業員1人ひとりの加入要件をチェックする必要があるでしょう。
加入義務があるのに未加入の場合は罰則の対象に
任意適用事業所および強制適用事業所は社会保険への加入義務を負っていますが、加入には手続きが必要となるため、なかには義務を負っているにも関わらず加入していない事業者も存在しています。しかし、未加入の状態が一定期間継続すると、年金事務所からの加入申請、警告文書、訪問指導という形で段階的に加入を求める措置が実施されるため注意が必要です。また、未加入の事業所に対しては以下のような罰則やペナルティが用意されています。
・職員による立ち入り検査の結果、加入義務があると認定された段階で強制加入
・強制加入の場合、最大2年間にさかのぼって過去の保険料を徴収される
・6ヶ月以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金が科される可能性がある
・未加入の状態では、ハローワークに求人が出せない
社会保険料はすべて会社負担なのか?
相互扶助の考えに基づき、加入者が保険料を出し合って財源を確保している社会保険では、企業も保険料を負担しなければなりません。となると気になるのは「会社がどれだけ社会保険料を負担するのか?」という点でしょう。結論から述べると、社会保険料は各都道府県の全国健康保険協会や全国健康保険協会に定められた保険料率に則って決定され、この金額を企業と被保険者(従業員)双方で負担します。ただし、負担割合などは保険によって異なるため、以下に5種類の保険の内訳をまとめてみました。
・健康保険料、厚生年金、介護保険料:企業と従業員で折半
・雇用保険料:企業と従業員が共に負担するが、企業のほうが負担割合は大きい
・労災保険料:企業が全額負担
以上のように、社会保険の中でも保険料の高い健康保険や厚生年金保険料は企業と従業員で折半する仕組みとなっています。
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【計算例あり】社会保険の会社負担割合を計算する方法
社会保険を考える上で企業として重要なのは「自社がいくら負担するのか?」という具体的な負担額でしょう。割合が分かっていたとしても、具体的な金額の目安が不明だと、実際にどれだけの負担となるのかイメージできません。そこでここからは「月収30万円の30代」を例として、5つの社会保険に関する保険料の計算方法を紹介していくので、参考にしてください。
※2023年6月時点の保険料率を用いています。
労災保険の計算方法
労災保険の保険料率は業種によって非常に細かく分けられているため、以下に一例を記載します。
・林業:6%
・定置網漁業又は海面魚類養殖業:3.8%
・採石業:4.9%
・道路新設事業:1.1%
・食料品製造業:0.6%
・交通運輸事業:0.4%
・通信業、放送業、新聞業又は出版業:0.25%
・卸売業・小売業、飲食店又は宿泊業0.3%
上記の一例からも分かるとおり、労災保険料率は業種や具体的な仕事の内容によって大きな開きがあります。気になる労災保険料ですが、計算方法は以下の通りです。
「全従業員の年度内の賃金総額」×「事業所ごとに定められた労災保険料率」=労災保険料
この計算式を「従業員10人で平均月収30万円(年収360万円)・宿泊業」の例に当てはめた具体例は以下のとおりです。
「360万円×10」×「0.3%」=10万8,000円
この場合、企業が年間で負担する労災保険料は「10万8,000円」となります。
厚生年金保険の計算方法
厚生年金保険の保険料率は18.3%(企業負担は半分の9.15%)で固定されていますが、従業員の報酬月額ごとに「等級」と呼ばれる枠が設定されています。
・報酬月額9万3,000円未満:等級1(8万8,000円)
・報酬月額10万1,000~10万7,000円:等級3(10万4,000円)
・報酬月額29万~31万円:等級19(30万円)
この等級が設けられていることにより、従業員の月額報酬にそのまま保険料率を掛けるのではなく、該当する等級の金額に保険料率を掛けて保険料を算出します。ここでも同様に「月収30万円の30代」を例に出して保険料の計算例をご紹介します。
「30万円(等級19)」×「18.3%」=5万4,900円
厚生年金保険料は企業と従業員で折半なので、この場合「5万4,900円÷2」の「2万7,450円」が企業の負担分となります。
健康保険の計算方法
健康保険料は保険料率は都道府県ごとに設定されており、例えば東京都における令和4年3月分(月納付分)からの健康保険料率は以下のとおりとなっています。
・介護保険第2号被保険者に該当しない場合:9.81%
・介護保険第2号被保険者に該当する場合:11.45%
※企業負担は半分の保険料率となる
上記の料率に従業員それぞれの報酬月額を掛けた額が健康保険料となりますが、厚生年金保険料の計算と同じく「等級」が設けられているので、報酬月額が該当する等級の金額をかけて健康保険料を算出します。今回も同様に「月収30万円の30代」を例に、健康保険料の計算例をご紹介します。
「30万円(22等級)」×「9.81%」=2万9,430円
健康保険料は従業員と折半して負担するため、この場合「1万4,715円」が企業の負担分となります。
介護保険の計算方法
介護保険制度の被保険者は「40歳以上65歳未満の第2号保険者」、「65歳以上の第1号保険者」の2種類に分類される仕組みとなっており、40歳を超えると加入および保険料の徴収が開始される点が大きな特徴です。令和5年度(令和5年3月分(4月納付分)から)の保険料率は1.82%で、以下の計算式により介護保険料を算出できます。
標準報酬月額×1.82%(介護保険料率)=介護保険料
この計算式に「月収30万円の30代」のモデルケースを当てはめると、そもそも年齢的に加入年齢に達していないため介護保険料も発生していません。そこで今回は例外として「月収30万円の40代」を例に挙げて、計算例をご紹介します。
「30万円」×「1.82%」=5,460円
介護保険料は従業員と折半して負担するため、この場合「2,730円」が企業の負担分となります。
雇用保険の計算方法
雇用保険の保険料率は、事業のタイプごとに以下3パターンに分類されています。
・一般の事業:1.55%(労働者負担0.6%、事業主負担0.95%)
・農林水産、清酒製造の事業:1.75%(労働者負担0.7%、事業主負担1.05%)
・建設の事業:1.85%(労働者負担0.7%、事業主負担1.15%)
※令和5年度(令和5年4月1日から令和6年3月31日まで)の雇用保険料率
雇用保険料を算出するには以下の計算方法を用います。
「賃金」×「雇用保険料率」=雇用保険料
この計算式にモデルケースとなる「月収30万円の30代・一般の事業」を当てはめて計算してみましょう。なお、計算に含まれる「賃金」には給与だけでなく賞与も含まれますが、今回はすべて含めた賃金総額の月額平均を30万円として計算します。
「30万円」×「1.55%」=4,650円
「一般の事業」の場合、事業主負担は0.95%なので「2,850円」が企業の負担分となります。
会社負担割合を計算する際に注意したいこと
社会保険は5つの保険制度で構成されており、それぞれ保険料率や企業と従業員の負担割合などが異なります。そのため、計算を行う際には各保険の料率および負担割合を逐一チェックした上で処理しなければなりません。特に労災保険や雇用保険では、業種や事業の内容ごとに細かく保険料率が設定されているため、自社がどのタイプに属するのか明確にしておきましょう。
また、社会保険の料率は定期的に見直されることが多くなっており、年度ごとの更新はもちろん、制度変更や法改正などによって対応方法を変えなければならなくなる可能性も大いに考えられます。社会保険料の計算は、ミスがあると従業員の負担が大きくなったり、支払うべき保険料より少なくなったりする可能性があるので、最新情報を常にチェックしながら対応することを心がけましょう。
社会保険に加入するための手続き方法とは?
事業所の分類 | 添付書類 |
---|---|
法人事業所 | ・法人(商業)登記簿謄本 ・賃貸借契約書の写し(事業所の所在地が登記と異なる場合) |
事業主が国、地方公共団体または法人 | ・法人番号指定通知書の写し |
強制適用事業所となる個人事業所 | ・事業主の世帯全員の住民票(コピー不可・個人番号の記載がないもの) |
任意適用事業所 | ・健康保険・厚生年金保険 任意適用申請書 ・従業員の任意適用同意書 ・事業主世帯全員の住民票(コピー不可) ・公租公課の領収書(コピー可) |
社会保険に加入するための手続きは、「新たに適用事業所となって加入するパターン(法人を立ち上げた際など)」と「すでに適用事業となっており、新たに雇用した従業員を加入させるパターン」で方法が異なります。
【パターン1:新たに適用事業所となって加入】
■健康保険・厚生年金・介護保険
・3つの保険の加入手続きは一本化されているため、まとめて手続きを行う
・適用事業所としての適用を受けるために「新規適用届」を提出する
・被保険者となる者の加入手続きを行う
・提出先は所管の年金事務所(詳細は一覧表を参照)
■労災保険・雇用保険
・加入手続きは別々に行う必要がある
・所轄の労働基準監督署およびハローワークで加入手続きを行う
【パターン2:新たに雇用した従業員を加入させる】
■健康保険・厚生年金・介護保険
・所轄の年金事務所に「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を提出する
・被保険者の氏名変更、被扶養者の追加などがある場合は「健康保険被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)」を提出する
なお、社会保険の中でも扱いが複雑な健康保険・厚生年金の加入に関する提出期限や提出先、必要書類などの詳細は以下の表にまとめましたので参考にしてください。
提出期限 | 提出書類 | 提出先 | |
---|---|---|---|
任意適用事業所 | 会社設立から5日以内 | ・健康保険・厚生年金保険 新規適用届・被保険者資格取得届・被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)※・保険料口座振替納付(変更)申出書※被保険者に扶養家族がいる場合 | 所管の年金事務所 ※郵送・窓口持参・電子申請のいずれか |
強制適用事業所 | 従業員の半数以上の同意を得た後で届出 | 同上 | 同上 |
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