社会保険の加入義務とは?加入条件やパート・アルバイトの適用拡大、手続き方法を解説【2024年最新版】
1人でも従業員を雇った場合、事業主は社会保険に加入しなければなりません。しかし、具体的な加入条件について知らないという方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、営業・バックオフィスなど、さまざまな分野の発注先を比較検討できる「アイミツ」が、社会保険の加入義務とは何かと言った基本的なところから、加入するための手続き、加入義務に反した場合のペナルティなどを厚生労働省の資料などに基づき詳しく解説します。
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社会保険とは
まずは社会保険とは何なのかといったところを詳しく見ていきましょう。社会保険とは、以下の5つの保険の総称です。
・健康保険
・年金保険
・介護保険
・雇用保険
・労災保険
いずれの保険も被保険者が働けなくなったときに経済的に支える公的保険です。高齢や病気、ケガ、介護などのため働けなくなることはどのような立場の人でも起こり得ること。また、突然失業してしまう可能性は誰にでもあるでしょう。社会保険は、そういった人生で起こり得るリスクに備えることを目的としたものです。
たとえば、健康保険という制度があるからこそ、医療機関にかかったときに窓口負担は1割から3割に抑えられています。加えて、年金保険があるから高齢で働けなくなっても一定の収入を得ることができます。
また、社会保険の保険料のうち、健康保険、厚生年金保険、介護保険は企業と従業員で折半して支払います。雇用保険は企業と従業員が支払うものですが、負担額は企業の方が重く、労災保険で保険料を支払うのは企業です。
社会保険に加入義務のある事業者とは
社会保険は、事業所単位で加入義務があるかないかが判断されます。そして、社会保険の加入義務があると判断された事業所は必ず社会保険の加入手続きを取らなければなりません。社会保険の加入義務がある事業所とはどのような事業所のことなのでしょうか。
加入義務がある強制適用事業所
強制適用事業所とは、法律によって社会保険に加入することが義務付けられている事業所のことです。強制という言葉が使われていることからもわかるように、加入しないという選択肢は用意されていません。合同会社や株式会社などの法人事業主は強制適用事業所となり、すべての事業所は社会保険に加入する必要があります。業種や会社の規模に関係なく法人事業主はすべて強制適用事業所で、従業員が事業主1人という場合でも加入は必須です。
また、個人事業主の場合も農林漁業、サービス業などを除く業種で、従業員が常時5人以上いる事業所は強制適用事業所となり、従業員を雇った場合、5日以内の加入手続きが必要となります。具体的には以下の業種で、従業員が常時5人以上いる場合は強制適用事業所です。
・製造業
・鉱業
・電気ガス業
・運送業
・貨物積卸し業
・物品販売業
・金融保険業
・保管賃貸業
・媒体斡旋業
・集金案内広告業
・清掃業
・土木建築業
・教育研究調査業
・医療事業
・通信報道業
・社会福祉事業
任意加入である任意適用事業所
強制適用事業所の要件を満たさない場合は任意適用事業所となり、社会保険への加入義務はありません。しかし、任意適用事業所だからといって社会保険に加入できないというものではなく、あくまで任意適用のため、事業所が社会保険に加入したい場合は一定の要件を満たせば社会保険に加入することも可能です。任意適用事業所が社会保険に加入するためには、以下の要件を満たす必要があります。
・事業所で働く人の半数以上が社会保険に加入することを同意している
・事業主が申請して厚生労働大臣(日本年金機構)の認可を受けている
上記の2つの条件を満たした事業所は適用事業所となることができ、その事業所で働いている人の全員が社会保険に加入できます。なお、強制適用事業所と異なり、任意適用事業所は社会保険から脱退することも可能です。働いている人の4分の3以上が社会保険の脱退に同意した場合、厚生労働大臣(日本年金機構)に申請して社会保険から脱退することができます。
社会保険に加入義務のある従業員とは
同じ事業所で働いている場合であっても、社会保険に加入しなければならない人がいる一方で、社会保険に加入しなくてもいい人もいます。社会保険の加入義務があるのは以下のような立場の人です。
・経営者もしくは事業主
・役員や管理職
・正社員
・試用期間中の社員
上記のような立場の人は社会保険の加入義務があります。国籍や年齢、性別を問わず上記の立場の人を常時雇用する会社は、社会保険の加入手続きを行わなければなりません。年金受給の有無も問われませんが、社会保険のうち健康保険の対象者は75歳未満、厚生年金保険は70歳未満の人が対象となります。
「試用期間中の社員は常時雇用とは言えないのではないか」という疑問を持つ方もいるでしょう。ここでの「常時雇用」とは、会社に常時雇用されていて、報酬が支払われている人のことを指します。そのため、試用期間中の社員も社会保険に加入すべき対象に含まれるのです。なお、個人事業主やパート・アルバイトの人の加入義務については、以下で詳しく解説します。
個人事業主やパート・アルバイトは加入義務があるか?
個人事業主やパートやアルバイトは社会保険に加入できるのでしょうか。まず、従業員を1人も雇っていない個人事業主は、社会保険に加入することができません。社会保険は、医療保険、年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の5つからなりますが、そのうち個人事業主が加入できるのは医療保険、年金保険、介護保険の3つです。医療保険は市町村の運営する国民健康保険、年金保険は日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の方が対象の国民年金に加入します。また、40歳以上の方は、介護保険の加入義務があります。
パートやアルバイトとして働く場合、以下のすべての条件を満たした方は社会保険の加入対象者です。
・従業員数101人以上の企業
・週の所定労働時間が20時間以上
・月額賃金が8万8,000円以上
・2ヵ月を超える雇用の見込みがある
・学生ではない
社会保険の加入対象は拡大を続けており、2024年10月からは、従業員数51人以上の企業で働くパート・アルバイトの方も社会保険の加入対象となります。
加入義務の適用除外になる条件
働いている事業所が社会保険の適用事業所であっても、社会保険の適用が除外される人もいます。社会保険の適用除外となるのは以下のようなケースです。
・75歳以上の人
・労働時間が所定の時間に満たない人
・日々雇い入れられる人
・2ヵ月以内の期間で雇用される人
・所在地が一定しない事業所に使用される人
・4ヵ月以内の季節的業務に使用される人
・6カ月以内の臨時的事業の事業所に使用される人
75歳以上の人が加入するのは、健康保険ではなく後期高齢者医療制度です。日々雇い入れられる人の場合、1ヵ月を超えて継続的に使用されるようになった場合はその日から社会保険の被保険者となります。また、季節的業務に使用される人は、継続して4ヵ月を超える予定で使用される場合、臨時的事業の事業所に使用される人は継続して6ヵ月を超える予定で使用される場合など、一定期間を超えて継続的に雇用される場合に被保険者となります。
社会保険に加入したくない社員がいる場合の対処法
社会保険に加入すると、社員と企業は社会保険の保険料を納めることになります。社会保険を支払うことで、「手取りの給料が減ってしまう」と感じる人もいるでしょう。そのため、「社会保険料を納めたくないから社会保険に加入したくない」と言う社員が出てこないとも限りません。社員から社会保険に加入したくないと言われた場合、どのように対処すればいいのでしょうか。
強制適用事業所に勤務している場合、社会保険の加入は義務です。必ず加入しなければならないもので、加入を拒否することはできません。社会保険に加入することには、年金の受取額が増える、傷病手当金や出産手当金が支給されるなど多くのメリットがあります。そういったメリットをきちんと説明するなどして従業員の理解を得ることが重要です。
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2022年、2024年のアルバイト・パート適用拡大に注意
「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律(年金制度改正法)」が2020年6月5日に公布されました。それに伴って、社会保険の段階的な適用拡大が行われています。社会保険の加入の対象となる企業は、以前までは従業員数が501人以上の企業でしたが、2022年10月からは従業員数が101人以上の企業も加入対象となっています。
また、従来まで「継続して1年以上使用される見込み」といった適用要件がありましたが、この要件は撤廃。「継続して2ヵ月以上使用される見込み」が新たな要件として加えられました。2024年10月からは従業員数が51人以上の企業も社会保険の加入対象となります。なお、従業員数が50人以下の企業のパート・アルバイト従業員はこれまで通り社会保険の加入義務はありません。
社会保険に加入義務がある場合の手続き方法と必要書類
従業員を雇用する事業所は、社会保険の加入義務が発生した日から5日以内に所管の年金事務所に届け出なければなりません。なお、事業を行っている事業所の所在地と登記上の所在地が異なる場合は、事業を行っている事業所の所管の年金事務所に届け出ます。以下から、社会保険への加入手続き方法と必要書類を事業所と従業員とで分けて確認していきましょう。
事業所の社会保険への加入手続き方法と必要書類
事業所が社会保険へ加入する場合、健康保険新規適用届、厚生年金保険新規適用届が必要になります。それぞれの新規適用届の用紙は日本年金機構のWebサイトからダウンロードできるので、ダウンロードして事業の種類や事業所所在地など必要事項を記入してください。
加えて、法人事業所の場合は法人(商業)登記簿謄本が必要です。コピーは不可となっています。また、強制適用となる個人事業所の場合は事業主の世帯全員の住民票(コピー不可、マイナンバーの記載がないもの)が必要です。提出期限は社会保険の加入義務が発生したときから5日以内。提出先は事業所の所在地を管轄する年金事務所で、提出方法は電子申請、郵送、窓口持参の3種類が用意されています。
従業員の社会保険加入手続き方法と必要書類
従業員が入社したとき、会社は社会保険の「被保険者資格取得届」を日本年金機構に提出し、従業員は事業主が手続きを取るために必要な書類を準備します。準備が必要な種類としてまず挙げられるのが、基礎年金番号通知書(年金手帳)またはマイナンバーカードです。また、被保険者となる従業員に扶養家族がいる場合、健康保険・厚生年金被扶養者(異動)届の提出が必要です。健康保険・厚生年金被扶養者(異動)届の提出にあたって、従業員は次のような種類を準備する必要があります。
・被扶養者の戸籍謄(抄)本
・住民票の写し
・退職証明書や雇用保険被保険者離職票の写し
・雇用保険受給資格者証の写し
・年金額の改定通知書の写し
社会保険の加入義務に反した場合のペナルティとは?
社会保険の加入義務があるのに義務を果たさず、社会保険に未加入の企業はどのようなペナルティが課されるのでしょうか。
加入義務があるのに加入していないことが発覚すると、まず行われるのが日本年金機構からの加入の勧奨です。この時点では、罰則などが科せられる可能性は低いでしょう。速やかに加入手続きを進めてください。長期にわたる社会保険の未加入が発覚した場合、過去2年までさかのぼって保険料を徴収されるおそれがあります。何度も加入するよう指導を受けているのに応じない、あるいは虚偽の申告を行うなど悪質だと判断された事業者は6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性もあります。
さらに、延滞した社会保険料は延滞金が発生する点にも注意しなければなりません。社会保険の加入義務違反は人材採用の面にも悪影響を及ぼします。社会保険の加入義務があるのに加入しない事業者は、ハローワークに求人を出せません。※
出典:日本年金機構「厚生年金保険・健康保険などの適用促進に向けた取組 」https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/info/torikumi/20150120.html
社会保険労務士の費用相場
もしも社会保険手続きを社労士に依頼する場合、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。社会保険労務士との契約には、大きく2つの契約方法があります。顧問契約は毎月継続して社会労務関連の仕事全般を行う契約です。労働保険・社会保険諸法令に基づいた書類の作成、ならびに提出代行を中心に、人事労務に関する相談やアドバイス、細かな指導や情報提供などをメインに行います。
一方、労務手続き+相談業務がセットになったのが、通常の顧問契約です。また社労士事務所によっては顧問契約を個別に分けているところもあります。労務手続きのみ、あるいは相談業務のみという場合には、包括的なプランと比較して30~50%ほど費用を抑えられるでしょう。
社労士は依頼内容や従業員数などによって報酬が変わるので、「依頼前に社会保険労務士の費用相場についてもっと詳しく知りたい!」という方は、以下の記事をチェックしてください。
【まとめ】社労士選びでお悩みならアイミツへ
すべての法人事業所や条件を満たした個人事業所は、社会保険の加入義務があります。社会保険の1つでもある労災保険の場合は、従業員を1人でも雇い入れた場合に加入必須です。そして、従業員を雇ってから5日以内に社会保険の加入手続きを行わなければなりません。
しかし、本業が忙しくて社会保険の手続きにまで手が回らないという事業主もいるでしょう。なかなか社会保険の手続きに対応できないとお悩みの場合は、人事労務のプロである社会保険労務士に業務を依頼してはいかがでしょうか。どのように社労士を選べばいいかわからない方は、ぜひアイミツにご相談ください。
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