労務管理とは|具体的な業務内容や基本スキルをご紹介【2024年最新版】
労務管理は、生産性向上や人材の確保・定着に大きく影響することから、多くの企業が積極的に取り組んでいる業務です。今後自社でも適正な労務管理に取り組んでいきたいという方もいるのではないでしょうか。当記事では、労務管理の基礎知識から、基本項目となる帳簿、主な業務内容、他の管理業務との違い、業務上の注意点までを解説しています。適切な労務管理を行うための知識的地盤を固めておきたい方や、具体的にどのような取り組みを行えば良いのか知りたい方は、ぜひ参考にしてみて下さい。
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労務管理とは
労務管理とは、企業で働く従業員の労働条件・労働環境・勤怠・福利厚生といった労働に関する事項を管理する業務のことです。具体的な業務内容には、勤怠管理・給与計算・労働契約・社会保険・安全健康管理などが挙げられます。労務管理は従業員が安心して働ける職場づくり・働きやすい職場づくりを主な目的としており、ヒト・モノ・カネ・情報という経営資源のうち、企業の生産性に大きく関わる「ヒト」に影響することから、近年では特に重要視されている分野となっています。労務管理がずさんな企業は人材が十分なパフォーマンスを発揮することが難しいため、労務管理は業界・業種・企業規模を問わず重要であると言えます。
労務管理の重要性
近年では労務管理の重要性が注目を集め、多くの企業が尽力していますが、その理由は労務管理が企業の成長・発展に欠かせない業務であるためです。優れた経営者や役員が在籍していたり、業務内容・経営方針が魅力的であったりしても、従業員が高いモチベーションを持って長期的に働いてくれないことには、企業の業績は向上しません。従業員のモチベーション・パフォーマンスを高めるためには、労働条件・労働環境を整備・管理して誰もが働きやすい職場を作ることが欠かせないのです。競争や変化の激しい現代において、企業力・組織力を高めるためにも、労務管理の強化が重要視されています。
労務管理に関する法律
労務管理にはさまざまな労働関係の法令が関係してくるため、把握・理解しておくことが重要です。ここでは、労務管理の実務に関する主な法令について解説します。
労働基準法……労働法の基本となる法令であらゆる場面で参照
労働組合法……労働組合との交渉時に必要
労働契約法……労働契約の締結・変更
労働関係調整法……労使紛争・争議の際に参照
労働安全衛生法……職場の安全・健康に関する体制構築時に必要
最低賃金法……給与・賃金を決定する際に参照
雇用保険法……従業員の入退社の際の雇用保険処理に必要
健康保険法……従業員の健康保険加入処理に必要
労働者災害補償保険法……労働災害発生時の対応に必要
労働者派遣法……派遣労働者を使役する際に参照
労務管理で使用する法定三帳簿
労務管理では、以下3種類の帳簿を用いることが基本とされています。
・労働者名簿
・賃金台帳
・出勤簿
これらは法定三帳簿と呼ばれており、労務管理を正しく機能させるには、まずこれらの帳簿の作成・活用・管理を徹底することがポイントです。以下に、各帳簿の概要について詳しく解説していますので、ぜひご確認下さい。
労働者名簿
労働者名簿とは、企業が雇用している従業員の情報を記した帳簿のことです。企業規模・従業員数に寄らず、従業員を雇用する場合には作成・整備・管理を行うことが労働基準法第107条によって義務付けられています。労働者名簿には、以下9つの必須項目を記載することが求められています。
・氏名
・生年月日
・性別
・住所
・業務の種類
・履歴
・雇用年月日
・退職年月日・事由
・死亡年月日・原因
また、労働者名簿については変更があった際には遅延なく更新すること、3年間保尊することも義務付けられているため、作成だけでなく管理についても厳正に行う必要があります。
賃金台帳
賃金台帳とは、従業員への給与の支払情報を記録するための帳簿です。労働基準法第108条にて作成が義務付けられており、労務管理上非常に重要な帳簿となります。賃金台帳には、労働基準法施行規則第54条にて以下の項目を記載するように定められています。
・氏名
・性別
・賃金計算期間
・労働日数
・労働時間数
・時間外・休日・深夜労働時間数
・基本給と手当の種類・金額
・控除内容と金額
また、労働基準法第109条では、上記内容について明記することと記入日から5年間保存することが義務付けられています。賃金台帳は労働基準法の複数の条文でルールが定められており、適切に作成・管理を行わないと違反により罰金に処される恐れがあるため、厳正に取り扱う必要があります。
出勤簿
出勤簿とは、従業員の出勤日・出社時刻・代謝時刻・労働日数・労働時間数・時間外労働・休日労働等を記録する帳簿のことです。労務管理では従業員の勤怠状況を正確に把握する必要があるため、これらを記録する出勤簿は欠かせない帳簿となります。労働時間が労働基準法に違反していないことを確認するためにも重要となります。出勤簿は労働基準法第109条にて、賃金その他労働関係に関する重要な書類であると定められており、3年間の保存期間が義務付けられています。紛失・破棄等により保存義務に違反した場合には、30万円以下の罰金が課される場合があるため、取り扱いには細心の注意が必要です。出勤簿の書式については特に定められていませんが、必要な項目は網羅しておく必要があります。
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労務管理の具体的な業務内容
労務管理を実践して従業員が働きやすい環境を実現するには、労務管理の業務内容について詳しく理解・把握しておくことが重要です。労務管理の具体的な業務内容には、以下のようなものが挙げられます。
・労働契約の締結
・労働条件の変更・管理
・就業規則の作成・変更
・社会保険・労働保険の手続き
・勤怠管理
・給与計算
・従業員の健康管理
・職場環境の改善
ここでは、上記の各業務の概要について解説していきます。これから労務管理に取り組む方は、業務の全体像について確認しておきましょう。
労働契約の締結
企業が労働者を雇用する際には、労働基準法・労働契約法で定められたルールに則って雇用契約を結ぶ必要があります。契約の際に企業側が用意する雇用契約書・労働条件通知書の用意・契約締結・回収した書類の管理も労務管理の重要な役割です。また、契約時に労働者側から提出してもらう必要がある雇用保険被保険者証・年金手帳・住民票・扶養控除等申告書・マイナンバー・源泉徴収票の回収・管理も同じく労務管理が漏れなく行わなければなりません。労働契約・雇用契約は厳正に執り行わないと労使紛争等のトラブルを招く大きな原因となるため、労務管理のなかでも特に慎重に行う必要がある業務となります。
労働条件の変更・管理
労働条件は、労働契約を締結する際に労働者に対して明示することが義務付けられており、変更を行う際には労働者の合意を得る必要があります。労働者が不利益を被ることを防ぐため、使用者(企業側)が一方的に労働条件の変更を行うことは認められていません。
もし不利益変更を行う場合においては、労働者の合意・労働組合の合意を得た後に、就業規則の変更方針の決定・同意書もしくは労働協約の締結・新たな就業規則の労働基準監督署への届出、全従業員への周知といった手順を踏襲する必要があります。労働条件変更の際に、法令違反や労使間紛争にならないように適切な労働条件変更手続きを行うことも、労務管理が担う重要な役割です。
就業規則の作成・変更
就業規則とは、企業側・従業員側の責任範囲や職場のルール・マナー等を記載した書類のことです。常時10人以上の従業員が在籍する企業では就業規則の作成ならびに労働基準監督署への提出が義務付けられています。この就業規則の作成ならびに従業員への周知徹底も、労務管理が行う業務の一部です。就業規則は職場のルールブックであると同時に労務管理の基本となるものであるため、単に作成を行うだけでなく企業の規模・経営状況あった適切な内容を作成する必要があります。
社会保険・労働保険の手続き
一部例外を除き、従業員を雇用している企業は社会保険・労働保険の適用事業所に該当するため、これらの保険には強制的に加入する必要があります。従業員の入退社の際の申請・変更手続きや労働保険料の算出・支払といった社会保険・労働保険に関連する業務も、労務管理が行うべき重要な仕事です。もし適用事業所であるにも関わらず保険料の支払いが行われていない場合は、過去にさかのぼっての保険料の支払いに加えて徴収金のペナルティが課せられるため、社会保険・労働保険に関する業務は滞りなく行っておく必要があります。
勤怠管理
勤怠管理とは、従業員の出勤・退勤・出勤日・出社日数・休憩時間などの就業状況を管理する業務のことで、労務管理の一部に含まれる業務です。勤怠管理は企業における従業員の活動状況を毎日把握する業務であり、給与の支払や健康・安全の管理にも関わってくるため、労務管理のなかでも特に重要度の高い業務となります。勤怠管理が十分に行われていないと、給与の正確な支払いやコンプライアンス遵守が難しくなり、労務上のトラブルを招く原因となるため注意が必要です。勤怠管理業務は煩雑で負担が大きいため、勤怠管理システムを活用するなどしていかに業務効率化と正確性の担保を行うかが重要なポイントとなります。
給与計算
日々働いてくれる従業員への給与を計算することも、労務管理の重要な業務のひとつです。勤怠情報を正確に把握して労働時間を集計。基本給・給与支給額・各種手当・保険料・源泉徴収の計算を行い、給与明細の作成と振込手続を行います。賞与支給時には賞与の計算も行う必要があります。
給与計算は事務的な業務ではありますが、健全な企業活動を行うためには非常に重要な業務。期日までに正確かつスピーディーに処理を行う必要があるため、知識・経験・スキルが求められます。毎月必ず一定のリソースを消費する業務であるため、効率性・正確性を追求するためにシステムを導入するなどの体制構築も重要となります。
従業員の健康管理
労働契約法では、企業は従業員に対して生命や身体の安全を確保しながら働けるように配慮する義務があるとする「安全配慮義務」が定められています。企業が安全配慮義務に違反した結果、従業員が心身の健康を害したり事故や怪我が発生した場合には、大きなトラブルを招いたり社会的信用を失ったりするリスクがあるため注意が必要です。職場環境や作業環境の整備・従業員の労働時間や健康状態の管理・安全管理体制の構築や研修の実施など、安全配慮義務に違反しない職場づくりを行うことも、労務管理が担う重要な業務となっています。
参考:厚生労働省「労働契約法第5条」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoukeiyaku01/dl/13.pdf
職場環境の改善
職場の働きやすさは企業の生産性や業務効率に影響するため、上述のような必須ルーティンを行うだけでなく、従業員が働きやすいように職場環境の整備・改善を継続的に行うことも労務管理の重要な役割です。職場の課題・問題を発見して環境の整備・改善を重ねることで、労務上の問題が発生するリスクも低減できますし、従業員のモチベーション・パフォーマンスを向上することもできます。労働環境が自然に改善することはまず無いため、労務管理は常に改善意識を持って積極的に介入していく姿勢が求められます。
労務管理と人事管理・経理・総務との違い
労務管理は、同じバックオフィス業務である人事管理・総務・経理などと混同されがちです。具体的にどのような違いがあるのか分からない方もいるでしょう。ここでは、各業務の違いについて解説します。
・労務管理
従業員が働きやすいように職場環境・労働条件を整備・管理する業務
・人事管理
人材の採用・評価・育成・配置など企業で働く人材を管理する業務
・総務
企業活動に関わる事務作業全般を総合的に行う業務
・経理
企業活動に伴う金銭の流れ・動きを管理する業務
各業務では、主に管理を行う対象が異なります。特に、労務管理・人事管理の違いは曖昧になりやすいため、明確に理解しておきましょう。
労務管理を行う際の注意点
労務管理を行うにあたっては、業務内容・業務フローを理解するだけでなく、いくつかの注意点も押さえておく必要があります。主に抑えておきたい注意点は以下の通りです。
・法令や法律を遵守すること
・常に改善の意識は持ち続けること
・情報管理は厳重にすること
これらの注意点を疎かにしていると、思わぬトラブルやリスクを招く恐れがあるため、労務管理に取り組む前に必ず確認しておくようにしましょう。以下に、上記の注意点についての詳細をそれぞれ解説します。
法令や法律を遵守すること
労務管理には、労務関連の法令ならびにコンプライアンスに違反しないことも目的に含まれているため、各種法令を順守することは必須要件です。労務管理に関連する法令は、労働基準法・労働安全衛生法をはじめ、労働保険関連法令・社会保険関連法令・その他雇用や賃金に関する法令など多岐に渡ります。遵守すべき法令が非常に多く困難を極めますが、人材を確保して企業が成長・発展していくためには、少しずつでも労務関連諸法令の整備を進めていくことが重要です。
常に改善の意識は持ち続けること
職場環境は常に変化をし続けますし、働き方の多様化など社会情勢に合わせた対応も求められるため、労務管理の実践にあたっては常に改善の意識を持ち続けることが重要です。一度構築した業務体制・業務フローのままいつまでも業務を行っていては、いずれ適切な労務管理を行うことが難しくなり、生産性向上・コンプライアンス遵守といった本来の目的も果たせなくなってしまうでしょう。労務管理は継続的改善が必要である点に留意しておき、あらかじめ社内にPDCAを回せる体制を構築しておくことがおすすめです。
情報管理は厳重にすること
労務管理で取り扱う情報は、給与・履歴・実績といった各従業員の個人情報であり、自社の機密情報でもあるため、取り扱いには細心の注意を払う必要があります。社外に情報が漏洩すると多大なリスクとなるため、情報を取り扱うシステムには万全のセキュリティ対策を施し、ヒューマンエラーに対する情報漏洩に対しても対策を行っておくことが重要です。
また、社外からの攻撃だけでなく社内での情報の取り扱いに対しても対策を行っておく必要があります。従業員間で不要な情報が流通しないように、情報の閲覧・管理には厳格なルールを定め、労務管理を行うメンバーにはルールの遵守を徹底させることが重要です。
労務管理は専門家に依頼できる
労務管理の業務は多岐に渡るため、業務改善・適正化を図りたいけれども自社内でのリソースが不足している企業は多くあります。労務管理は労働条件・労働環境について管理を行う業務であるため、自社内で内製しなければならないイメージがありますが、実際には人事・労務の専門家である社会保険労務士にアウトソーシングを行うことが可能です。
専門家へ業務を委任することで、リソース不足を解消することもできますし、専門家の視点からの業務改善・業務適正化を実現することもできます。無理に自社での内製にこだわるよりも高いパフォーマンスが期待できるため、労務管理の課題・問題を抱えている方は、ぜひアウトソーシングを検討してみることをおすすめします。
【まとめ】社労士事務所選びで迷ったらアイミツへ
労務管理は、従業員の労働条件や労働環境の整備・管理を行う重要な業務。近年は企業のコンプライアンスが重視されている風潮にあるため、企業の信頼性・ブランド力を高めるためにも、適切な労務管理を実践しておく必要があります。
効率的で質の高い労務管理を行うには、社会保険労務士をはじめとする外部の専門家と連携したり協力を仰いだりすることも重要。アイミツでは、企業・従業員が抱える課題についてヒアリングを行い、おすすめの社会保険労務士の紹介を行っていますので、ぜひお気軽にご相談下さい。
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