個人事業主が雇用保険に加入する条件やケースとは?手続きや注意点について解説【2024年最新版】
個人事業主として働いていても、加入条件を満たす場合は雇用保険に加入する必要があります。しかし、加入条件について詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、社会保険労務士や税理士など、さまざまな分野の発注先を比較検討できる「アイミツ」が、自営業やフリーランスなどの個人事業主向けに、雇用保険に加入する条件や手続きについて解説します。
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雇用保険とは?
雇用保険とは、労働者が失業したり、介護や育児のために休業する際の生活を支援するために給付金などを支給する制度のこと。職業訓練や就業促進など、再就職の支援も雇用保険制度の対象です。雇用保険の給付金は、大きく失業等給付金と育児休業給付の2種類に分けられ、さらに失業等給付金には以下の4種類があります。
・求職者給付
・就職促進給付
・教育訓練給付
・雇用継続給付
求職者給付は、退職・失業した人に支給される給付金です。再就職までの生活を支援する目的で支給されます。求職者給付が支給される期間は、雇用保険に加入していた期間や年齢などによって異なります。一方就職促進給付は、再就職した際に支給される給付金です。求職者給付の支給日数が残っている場合、再就職手当として残りが支給されます。
教育訓練給付は教育訓練を受けた際に受講料を支給する給付金で、労働者のスキル向上やキャリアアップを目的としています。雇用継続給付は、労働者が同じ職場で働き続けられるように支援する目的で支給され、育児で休業する場合は育児休業給付が適用されます。
個人事業主本人は雇用保険に原則加入できない
原則として、個人事業主本人が雇用保険に加入することはできません。雇用保険は、失業した被雇用者の支援を目的とする制度です。自身で事業を運営している個人事業主は、雇用保険の対象とはなりません。ただし、個人事業主が一定の条件を満たすスタッフを雇う場合は、雇用保険に加入する必要があります。つまり、個人事業主本人が雇用保険に加入するのではなく、雇用するスタッフのために加入するのです。
また、個人事業主本人が雇用保険に加入することはできませんが、開業前に雇用保険の受給資格があれば、失業手当や再就職手当を受給できるケースもあります。
ダブルワークの個人事業主は雇用保険に加入できる
個人事業主であっても、ダブルワークで働いている場合は、雇用保険に加入できる可能性があります。例えば、平日は会社員やアルバイトとして働きつつ、週末は個人事業主として働いている場合、会社員・アルバイトとして勤務している企業では、保養保険に加入することになるでしょう。会社員・アルバイトは被雇用者となるので、雇用主である企業に雇用保険の加入義務が生じます。ただし、週あたりの所定労働時間などの条件によっては、雇用保険の対象外となる場合もあるため注意してください。
個人事業主は従業員のために雇用保険に加入する
先述の通り、個人事業主が従業員を雇う場合、雇用保険に加入する必要があります。雇用保険への加入が必要かどうかは、週あたりの労働時間などをもとに判断されますが、もしも加入条件を満たしているのにもかかわらず雇用保険に加入していない場合、ペナルティを科される可能性もあるので注意しましょう。
雇用保険の加入条件とは?
個人事業主が従業員を雇う際、以下の条件に当てはまる場合は雇用保険に加入しなければなりません。
・週の所定労働時間が20時間以上
・31日以上雇用される見込みがある
上記の条件を満たす従業員を雇い入れる個人事業主には、雇用保険への加入義務が発生します。雇用日数はあくまでも見込みであり、実際に31日勤務していなくても、雇用期間を特に定めておらず、31日以上雇う見込みがある場合は雇用保険に加入しなければなりません。雇用保険料は、雇用主である個人事業主が負担します。
また、季節的に雇用される従業員も以下の条件を満たすと、被保険者となるため加入義務が生じます。
・4ヵ月以上の雇用期間を定めている
・週の所定労働時間が30時間以上
基本的に、対象となる従業員を雇う場合は雇入れた日から雇用保険に加入する必要があるので注意しましょう。従業の希望の有無にかかわらず加入しなければならないという点もご注意ください。
雇用保険に加入する必要がないケース
先に解説した条件を満たさない従業員を雇用する場合は、雇用保険に加入する必要はありません。具体的には以下のようなケースです。
・週の所定労働時間が20時間未満
・31日以上継続的に雇用される見込みがない
・学生
・特定漁船以外の漁船に乗船する船員
・季節的に雇用される従業員で、雇用期間が4ヵ月以内、週の所定労働時間が30時間未満
・国や地方公共団体の事業に従事し、離職時に支給される各種給与が雇用保険の求職者給付・就職促進給付の内容を超える場合
週の所定労働時間とは、就業規則や雇用契約で定められている通常の勤務日の労働時間を指します。そのため、通常の勤務日ではない休暇や休日は日数に含まれません。所定労働時間が1ヵ月単位で定められている場合は、12分の52で除算した値を週の所定労働時間とみなします。1年単位で定められている場合は、所定労働時間を52で除算して、1週間の所定労働時間を算出しましょう。
個人事業主の親族は雇用保険に加入できる?
一部の例外を除いて、個人事業主と同居している親族は雇用保険に加入できません。親族であっても以下の条件を満たす場合は、雇用保険に加入できます。
・個人事業主の指揮の下で業務を行っている
・就労状況や賃金がほかの従業員と同等
・個人事業主と利益を共にする地位にないこと
就労状況や賃金については、就業規則などで定められたルールに準じた待遇でなければ、雇用保険に加入できない可能性があります。ほかの従業員と、休日や始業・終業時間、賃金の計算方法などで同等の条件が適用されている場合は、親族でも雇用保険に加入できます。雇用保険の手続きの際には、雇用の実態を確認できる書類が必要になるので準備しておきましょう。
個人事業主が手続きをしなかったときの罰則
雇用保険への加入義務のある個人事業主が、未加入のまま従業員を雇用している場合、罰則が科されます。雇用保険に加入する場合、保険関係の成立後、50日以内に届け出なければなりません。万が一、定められた期限までに雇用保険の手続きを行わなかった場合、6ヵ月以下の懲役か30万円以下の罰金です。
また、被保険者に該当する従業員がいないと偽って届け出た場合も、同様に罰則の対象です。従業員が退職した後、ハローワークで手続きを行う際に違反が発覚するケースもあるので、必ず手続きを行いましょう。初めて従業員を雇い入れる場合、手続きに手間取る可能性もあります。従業員を雇用することになったら、できるだけ早めに手続きを進めたほうがよいでしょう。
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個人事業主が雇用保険に加入するメリット
雇用保険料は、個人事業主が負担する必要があるため一定のコストがかかります。しかし、デメリットばかりではありません。ここからは、雇用保険に加入することでどんなメリットがあるのか解説します。
雇用関係助成金を受け取れる
個人事業主が雇用保険に加入するメリットとして、雇用関係の助成金を受け取れる点が挙げられます。個人事業主でも利用できる助成金制度をいくつかご紹介しましょう。
・雇用調整助成金
・トライアル雇用助成金
・労働移動支援助成金
雇用調整助成金は、従業員に支払う休業手当などの一部を助成する制度です。トライアル雇用助成金は、トライアル雇用対象者を雇用した事業主に一定の金額を支給する制度で、対象者を3ヵ月以上雇用すると助成金を受け取れます。労働移動支援助成金は、解雇した従業員を対象に再就職を支援する目的で支給される助成金です。
従業員の採用時に安心感を与えられる
個人事業主が雇用保険に加入することで、従業員の採用時に安心感を与えられるメリットもあります。雇用保険に加入しておくことで、従業員は退職した際に求職者給付や就職促進給付、教育訓練給付金などさまざまな給付を受けられることから、失業時の生活が保障されるため、安心感を与えられるでしょう。求職者に信用できる事業所であることをアピールできれば、未加入の事業所と比べると、有利に採用活動を進められるはずです。
個人事業主が行う雇用保険の加入手続き
雇用保険の手続きでは、期限までに必要な書類を提出しなければなりません。また、ハローワークに提出する書類と労働基準監督署に提出する書類の2種類があるため、提出先をしっかり確認しておきましょう。以下では、個人事業主が雇用保険に加入する際に必要な書類や提出期限について解説します。
必要な書類を準備する
雇用保険の加入手続きでは、定められた書類を提出する必要があります。雇用保険に加入するには、以下の書類が必要です。
・労働保険関係成立届
・労働保険概算保険料申告書
・雇用保険適用事業所設置届
・雇用保険被保険者資格届
・出勤簿
・労働者名簿
・賃金台帳
・源泉徴収簿
・事業の開始を証明する書類
労働保険関係成立届と労働保険概算保険料申告書は、ハローワークや労働基準監督署で入手できます。また、郵送で送ってもらうことも可能です。雇用保険適用事業所設置届と雇用保険被保険者資格届は、ハローワークのホームページでダウンロードできるほか、窓口で受け取ることもできます。
労働基準監督署に書類を提出する
労働保険関係成立届と労働保険概算保険料申告書は、定められた期日までに労働基準監督署へ提出しなければなりません。書類によって期限が異なるので、日数をしっかり把握しておきましょう。
・労働保険関係成立届:従業員を雇入れた日から10日以内
・労働保険概算保険料申告書:従業員を雇入れた月の翌月10日まで
労働保険関係成立届は、従業員を雇用してから10日以内に提出しなければなりません。期限が短く設定されているので、早めに準備しておくと安心です。また、上記の書類を用意するほか、概算した1年分の保険料を前払いで納付する必要があります。
ハローワークに書類を提出する
雇用保険適用事業所設置届と雇用保険被保険者資格届は、ハローワークに提出します。どちらの書類も提出に期限が設けられているので注意しましょう。
・雇用保険適用事業所設置届:従業員を雇入れた日から10日以内
・雇用保険被保険者資格届:従業員を雇入れた月の翌月10日まで
雇用保険適用事業所設置届は、初めて従業員を雇用する際に提出します。雇用保険被保険者資格届は従業員ごとに作成する必要があるため、新しくスタッフを雇入れた時にはその都度提出してください。雇用保険被保険者資格届を提出する際には、労働者名簿や出勤簿、賃金台帳などを添付しましょう。
雇用保険の計算方法
事業の種類 | 労働者負担 | 事業主負担 失業等給付・育児休業給付の保険料率 |
事業主負担 雇用保険二事業の保険料率 |
事業主負担 事業主負担の合計 |
雇用保険料率の合計 |
---|---|---|---|---|---|
一般の事業 | 6/1,000 | 6/1,000 | 3.5/1,000 | 9.5/1,000 | 15.5/1,000 |
農林水産・清酒製造の事業 | 7/1,000 | 7/1,000 | 3.5/1,000 | 10.5/1,000 | 17.5/1,000 |
建設の事業 | 7/1,000 | 7/1,000 | 4.5/1,000 | 11.5/1,000 | 18.5/1,000 |
雇用保険料は、従業員の給与に年度ごとに定められた保険率を乗算して算出します。雇用保険率は、業種によっても異なるのでしっかり確認しておきましょう。業種の区分は、一般の事業と農林水産・清酒製造の事業、建設事業の3種類。ただし、酪農や養鶏、内水面養殖など、一部の事業は農林水産の事業ではなく、一般の事業として扱われるケースもあるので注意してください。
雇用保険料は、事業主負担分と労働者負担分に分けられます。事業主負担分は未払い金として計上し、労働者負担分は従業員給与からの天引きです。従業員が多い事業所では雇用保険の算出に手間がかかるため、自力で対応する余裕がない場合は社会保険労務士に任せるとよいでしょう。
個人事業主が雇用保険に加入する際の注意点
個人事業主が雇用保険に加入する際には、保険料の払い忘れ等いくつか注意しなければならないポイントがあります。以下の3つのポイントは最低限おさえておきましょう。
自己負担しなければならない
先に解説したように、雇用保険料の一部は事業主が負担しなければなりません。個人事業主が雇用保険に加入した場合、保険料は自己負担となるため、コストが増加します。また、従業員を雇用する際には、雇用保険以外に労災保険への加入義務も発生します。労災保険の保険料は、個人事業主が全額負担しなければなりません。従業員に払う給与だけではなく、社会保険料などのコストも考慮した上で増員すべきかどうかを判断しましょう。
経費に計上できない
雇用保険の従業員負担分を、経費として計上することはできません。従業員負担分の雇用保険料は、それぞれの従業員の所得税を計算する際に、社会保険料控除として課税所得から差し引かれるためです。事業主負担分の雇用保険料は経費として計上できますが、事業主負担分と従業員負担分で雇用保険料の扱いが異なるので注意しましょう。
支払いを忘れない
雇用保険の保険料は、労働保険概算保険料申告書の提出と同時に納付します。雇用保険料は、従業員を雇用した日から50日以内に納付しなければなりません。ただし、労働保険概算保険料申告書を提出した時点での保険料はあくまでも概算であり、翌年度に実際の保険料との差額を納付する必要があります。雇用保険を含む労働保険の年度更新は、通常6月1日~7月10日。書類の提出時はもちろん、年度更新時の支払いも忘れないように注意しましょう。
社会保険労務士の費用相場
もしも雇用保険などの手続きについて社会保険労務士に依頼する場合、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。
社会保険労務士との契約には、大きく2つの契約方法があります。顧問契約は毎月継続して社会労務関連の仕事全般を行う契約です。労働保険・社会保険諸法令に基づいた書類の作成、ならびに提出代行を中心に、人事労務に関する相談やアドバイス、細かな指導や情報提供などをメインに行います。
一方、労務手続き+相談業務がセットになったのが、通常の顧問契約です。また社労士事務所によっては顧問契約を個別に分けているところもあります。労務手続きのみ、あるいは相談業務のみという場合には、包括的なプランと比較して30~50%ほど費用を抑えられるでしょう。
社労士は依頼内容や従業員数などによって報酬が変わるので、「依頼前に社会保険労務士の費用相場についてもっと詳しく知りたい!」という方は、以下の記事をチェックしてください。
【まとめ】社労士選びでお悩みならアイミツへ
本記事では、個人事業主が雇用保険に加入する条件や、手続きの注意点などを解説しました。未加入のままアルバイトやパートなどのスタッフを雇ってしまうと、罰則が科される可能性もあるので注意しましょう。
もしも雇用保険等の管理を自社で行うのは難しいとお悩みの場合には、社会保険労務士に依頼するのも1つの手段です。安心して任せられる社労士をお探しの方は、ぜひアイミツにご相談ください。
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