休業手当の計算方法や例を解説!休業補償との違いや支給額目安つき【2025年最新版】
会社の都合で労働者を休ませた場合に、会社が支払わなければならないのが休業手当です。正社員はもちろん、パートやアルバイトの場合でも会社都合で休ませた場合、会社はその日数分の休業手当を支給しなければなりません。自社の都合で社員に休業してもらう場合、いくら支払わなければならないのかを知りたい方も多いでしょう。
そこでこの記事では、休業手当の計算方法や休業手当と休業補償との違い、休業手当を支給しなければならない具体的なケースなどを厚生労働省の資料をベースに詳しく解説します。
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休業手当とは?
休業手当とは、会社の都合で休業する場合に従業員に支給しなければならない手当のことです。労働基準法第26条では、休業手当について「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。※」と定められています。
使用者の責に帰すべき事由とは、一般的に経営不振や運転資金不足によって操業停止になった場合など。また、設備の不備や作業に必要な従業員を確保できずに、働けなくなったケースも使用者の責に帰すべき事由に該当します。
休業手当に該当する場合、会社は平均賃金の60%以上の手当てを支払わなければなりません。なお、休業手当は労働に対する賃金として扱われるため、課税対象となる点には注意しましょう。
出典:e-Gov法令検索 労働基準法二十六条 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049
休業の定義
休業とよく似た言葉に、休暇、休日があります。休業と休暇、休日の違いについて法的な明確な定義があるわけではありません。しかし、一般的には異なった意味合いで使われています。
休業は労働義務を免除することを指します。休業に至るには、会社側の都合と従業員からの申請の2種類あり、会社都合の場合、会社は従業員に休業手当を支給しなければなりません。会社都合による休業の例としては、経営不振による休業などが挙げられますが、従業員からの申請による休業の代表例は育児休業や介護休業などです。
一方休日とは、そもそも労働義務がない日のことを指します。土曜日や日曜日、祝日などで、会社には給与の支払い義務はありません。休暇はもともとあった労働義務を免除することを指します。有給休暇、慶弔休暇、夏季休暇、介護休暇、看護休暇などが代表例です。給与の支払い義務は有給休暇を除いてありませんが、就業規則などで介護休暇や看護休暇などを有給とすることは可能です。
休業手当の定義
休業は、従業員に休業手当を支給しなければならないケースと支給する必要がないケースの2種類に分かれます。繰り返しになりますが、従業員に休業手当を支給しなければならないのは、会社都合で従業員に休業してもらう場合です。一方、育児休業の取得時など従業員の都合での休業においては、会社は休業手当を支払う必要はありません。会社都合での休業にはどのようなケースがあるのか、具体的にあげてみるとすると以下の通りです。
・機器や設備の点検で休業する
・経営悪化により営業日や営業時間を削減する
一方、会社の責任ではない、不可抗力による休業の場合は休業手当を支給する必要はありません。たとえば、自然災害による休業、労働者のストライキによる休業などが該当します。
休業手当と休業補償の違い
休業手当と休業補償はよく似た言葉だけに混同されがちですが、両者は大きく異なります。休業手当とは、会社の責めに帰すべき事由による休業の際に会社が従業員に支払う手当のことですが、一方で休業補償とは労働災害に関する制度です。業務上に負ったケガや病気によって、労働者が働けない期間の生活の安定を図ることを目的としており、休業補償を受けるためには以下の要件を満たす必要があります。
・仕事や通勤中に起因するケガや病気の療養中である
・療養中のため労働することができない
・会社から賃金が支払われていない
・労働災害の発生から3日以上の待機期間が経過している
待機期間を経過せずに職場復帰をした場合、休業補償は支払われません。また、待機期間中の補償は会社が行うルールとなっています。
休業手当の計算方法
会社の都合で従業員に休んでもらった場合、会社はその従業員の平均賃金の60%を支払わなければなりません。平均賃金とは、会社都合での休業が発生する以前の3ヵ月間にその従業員に対して支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割った金額のこと。なお、平均賃金には通勤手当や時間外手当、皆勤手当などの各種手当も含まれ、未払いの賃金も対象となります。
直前3ヶ月が適用されないケース
平均賃金を算出するには、会社都合での休業が発生した日以前の3ヵ月間の賃金を合計する必要があります。しかし、雇い入れから3ヵ月未満の場合、3ヵ月間の賃金を合計することはできません。この場合、雇い入れた後の期間とその期間に支払われた賃金の総額で平均賃金を算出します。
また、会社都合での休業が発生する以前の3ヵ月間に、産前産後の休業期間や使用者の責めに帰すべき事由による休業期間、育児および介護休業期間などがある場合は、この期間を控除して平均賃金を算出します。
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休業手当の具体的な計算例
平均賃金が適用される月給制の従業員と、日給・時給制の従業員とで休業手当の計算式は異なります。月給制の正社員だけではなく、日給制や時給制のパート・アルバイト社員も休業手当の対象なので注意しましょう。以下から、月給制と日給・時給制に分けて休業手当の計算式を解説します。
平均賃金の計算例
計算月 | 総日数 | 基本給 | 通勤手当 | 残業手当 |
---|---|---|---|---|
4月1日~4月30日 | 30日 | 25万円 | 1万円 | |
5月1日~5月31日 | 31日 | 25万円 | 1万円 | 2万円 |
6月1日~6月30日 | 30日 | 25万円 | 1万円 | 1万円 |
合計 | 91日 | 75万円 | 3万円 | 3万円 |
まずは月給制で働く従業員の休業手当の算出方法を見ていきましょう。賃金の締め日が月末、勤務予定日が7月1日から7月31日のうちの20日間、そのうち会社都合の休業が5日で計算します。この従業員の月給は25万円で通勤手当は毎月1万円、残業手当が5月が2万円、6月が1万円だとしましょう。会社都合の休業が発生する直前3ヵ月の賃金総額は81万円となります。総日数は4月が30日、5月が31日、6月が30日の合計91日。1日の平均賃金は、「81万円÷91日」で約8,901円となります。休業手当は1日の平均賃金の60%のため、「8,901円×0.6」で1日あたりの休業手当は約5,340円です。5日休業してもらうため、休業手当として「5,340円×5日」で2万6,700円を支払います。
日給・時給の計算例
計算月 | 総日数 | 労働日数 | 賃金 |
---|---|---|---|
4月1日~4月30日 | 30日 | 10日 | 8万円 |
5月1日~5月31日 | 31日 | 9日 | 7万2,000円 |
6月1日~6月30日 | 30日 | 10日 | 8万円 |
合計 | 91日 | 29日 | 23万2,000円 |
日給制や時給制の従業員の場合、平均賃金とは別に「最低補償額」を算出する必要があります。月給制の従業員より日給制や時給制の従業員の方が労働時間が短いケースが多く、平均賃金では不利に働いてしまう可能性があるからです。そのため、最低保証額を別に算出し、高い方を平均賃金として採用します。
最低保証額の計算式は「直前3カ月間の賃金総額÷直前3カ月間の労働日数×0.6」。日給8,000円で、労働日数と賃金は表2の通りです。この場合、1日の平均賃金は「23万2,000円÷91日」で約2,549円。最低補償額は、「23万2,000÷29日×0.6」で4,800円で、この従業員の1日あたりの平均賃金は4,800円となります。休業手当は「4,800円×0.6」で2,880円です。
休業手当を支給する具体例
会社が従業員に休業を命じた場合、会社はその従業員の休業期間中に休業手当を支払わなければなりません。しかし、具体的にどのようなケースで会社に休業手当の支払い義務が発生するかわからないという方もいるでしょう。以下から、休業手当を支給しなければならない具体的な例を解説します。
採用内定者に自宅待機を命じた場合
入社日に入社させた社員を、業績不振により自宅待機を命じたケースであっても、休業手当を支払う必要があります。まだ働いていないにもかかわらず休業手当の対象になるのか疑問に思う人も多いかもしれませんが、まだ働いていなくても会社に在籍し、労働契約が交わされていれば、会社は休業手当を支払わなければなりません。
一部の時間帯のみ休業させる場合
一部の時間帯のみ休業させる場合でも休業手当の支払い義務が発生する可能性があります。ポイントは、支払われた賃金が平均賃金の60%を超えているかどうかという点。たとえば、1日の平均賃金が1万円、時給1,300円で4時間働いたときに支払う賃金は5,200円です。平均賃金の60%の6,000円に800円足りないため、この800円は支払わなければなりません。6時間働いたのであれば、賃金は7,800円で6,000円を超えているため、休業手当の支払い義務はありません。
派遣社員に休業を命じた場合
「ノーワーク・ノーペイの原則」をご存じでしょうか。労働者が労働を提供しない限り、使用者は賃金を支払う義務がないという労働基準法に定められた給与計算の基本原則です。時給制の場合、労働者が働かなければ使用者に賃金の支払い義務はありません。多くの企業が派遣社員を採用し、時給制で契約していますが、派遣社員が派遣先企業から仕事を休むよう命じられた場合、休業手当は発生するのでしょうか。
このような場合、派遣社員でも休業手当を受けられます。ただし、派遣社員に休業手当を支払う義務があるのは派遣元企業です。派遣社員は派遣元企業から休業手当を受けることができるほか、別の企業への派遣を求めることもできます。
アルバイト・パートに休業を命じた場合
休業手当の対象者は、雇用契約を結ぶすべての労働者です。そのため、パートやアルバイトも休業手当を受けることが可能です。たとえば、「仕事が忙しくないから午後は帰っていい」とアルバイト社員が命じられたとしましょう。その日の働いた分の賃金が平均賃金の60%に満たない場合は、休業手当を支給しなければなりません。時給制や日給制で仕事をする従業員の休業手当を算出するには、平均賃金とは別に最低補償額を計算する必要があります。
日雇い労働者に休業を命じた場合
労働基準法では、次のいずれかに該当する労働者は、日雇い労働者とみなしています。
・日々雇用される者
・30 日以内の期間を定めて雇用される者
1日単位の労働契約期間で雇われる労働者や契約期間が短期間の労働者のことを日雇い労働者と言っていますが、日雇い労働者も休業手当を受けられます。日雇い労働者の平均賃金の算出方法は、「本人に同一事業場で1か月間に支払われた賃金総額÷その間の総労働日数×73/100」と定められています。
新型コロナウイルス感染症により休業を命じた場合
新型コロナウイルスの感染が確実ではない社員に休業を命じた場合、企業は休業手当を支払う必要があります。なお、 従業員に支払った休業手当などの一部を国が助成する「雇用調整助成金」は2023年3月末で、「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」も5月末(対象の休業期間は2023年2月~3月末)で終了しているため注意しましょう。
休業手当の計算方法を理解し手続きを円滑に進めよう
休業手当に関する正しい知識を身につけていないと、思いもよらない労使間トラブルに巻き込まれる可能性があります。無用なトラブルを避けるためにも、休業手当の趣旨や計算方法を正しく理解し、必要になった場合には円滑に手続きを進めましょう。なお、休業手当の手続きに不安がある方や、手続きにかかる手間や負担を軽減したい方は労務のプロである社会保険労務士に手続きを依頼してはいかがでしょうか。
社会保険労務士の費用相場
社会保険労務士との契約には、大きく2つの契約方法があります。顧問契約は毎月継続して社会労務関連の仕事全般を行う契約です。労働保険・社会保険諸法令に基づいた書類の作成、ならびに提出代行を中心に、人事労務に関する相談やアドバイス、細かな指導や情報提供などをメインに行います。
一方、労務手続き+相談業務がセットになったのが、通常の顧問契約です。また社労士事務所によっては顧問契約を個別に分けているところもあります。労務手続きのみ、あるいは相談業務のみという場合には、包括的なプランと比較して30~50%ほど費用を抑えられるでしょう。
社労士は依頼内容や従業員数などによって報酬が変わるので、「依頼前に社会保険労務士の費用相場についてもっと詳しく知りたい!」という方は、以下の記事をチェックしてください。
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働ける状態にある従業員を会社の都合で休ませた場合、企業はその従業員に休業手当を支給する必要があります。正社員だけではなく、アルバイトやパートなど労働契約を結ぶすべての従業員が休業手当の支給対象なので、休業手当を支給する必要が生じたら、使用者は速やかに手続きを進めましょう。
自社で手続きを行うのが不安という場合、休業手当の手続きを社会保険労務士に依頼してはいかがでしょうか。依頼先をお探しの場合はぜひアイミツにご相談ください。
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