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絶対に失敗しない発注先探しの鉄則【便利な発注先チェックリスト20選付き】
事業企画 、総務 、情報システム
オンラインM&Aマッチングプラットフォーム「M&Aクラウド」を展開するM&Aクラウドがローンチした、“事業会社からの資金調達”に特化したマッチングプラットフォーム「資金調達クラウド」が急成長を遂げている。そこには、どのような背景があるのか。どういった企業が同サービスを活用しているか。今回は、M&Aクラウドの代表取締役CEO、及川厚博氏とPRONI代表・栗山が対談。今、経営者が押さえておくべき、“これからの資金調達の常識”について語り合った。
インタビュー先のプロフィール
2015年12月創業。「テクノロジーの力でM&Aに流通革命を」をミッションに、オンラインM&Aマッチングプラットフォーム「M&Aクラウド(https://macloud.jp/)」を運営。従来の仲介モデルから発想を転換し、業界初となる求人広告型M&Aプラットフォームのビジネスモデルを構築。買い手企業は「求人ポータルサイト」のようにWeb上へ買収窓口を設置し、M&A方針・実績を発信することで売り手企業を集め、売り手企業は「手数料無料」で、買い手企業の情報閲覧および直接売却打診のコンタクトが可能。スムーズなM&Aおよび資金調達の実現を支援します。オンラインM&Aマッチングプラットフォーム「M&Aクラウド」は、2018年4月のサービス開始後わずか3か月で9.2億円のM&Aが成立。現在では、買い手の登録企業数は2,500社以上に達し、売り手の登録企業数が9,300社以上と順調に成長しています。
及川 厚博 様
聞き手
栗山規夫
PRONI株式会社 代表取締役 Founder
三菱商事、DeNAを経て、2012年にPRONI株式会社(旧社名ユニラボ)を創業。BtoB受発注プラットフォーム「PRONIアイミツ」を立ち上げ、10年で現在の規模に育てた。新たな仕事に挑戦するビジネスパーソンの「発注力」を上げることを目標に、日本のDXを進める優良企業の経営者、ビジネスリーダーのインタビューを実施。
栗山 まずは「資金調達クラウド」を立ち上げた経緯から教えていただけますか。
及川 ITやスタートアップを対象としたM&Aプラットフォーム「M&Aクラウド」を構築し、事業を展開していました。スタートアップは不確実性の高い事業でもあるので、出資をしてから買収をするほうが、PMIの失敗が少ないということで、既存の「M&Aクラウド」に出資機能を追加したところ、ある時期から、プラットフォーム内で出資のマッチングも行われるようになりました。ところがユーザーヒアリングをしていくと、資金調達ができることは“登録後に初めて知った”というユーザーが多いことが判明。そこで、ブランドを分けようと考え、昨年、「資金調達クラウド」が生まれました。
サービスを活用するスタートアップ企業にも、“M&Aクラウドに会員登録するのは、M&Aの予定もないのに気まずい”という思いがありました。また、ベンチャーキャピタルが投資先のスタートアップに「M&Aクラウドで資金調達ができる」と紹介しても、“会社を売ってほしいと思っているのか?”と思われ、ミスリードにつながるケースも考えられました。
栗山 私もかなり初期に貴社のサービスに登録したのですが、会社を売る気持ちは全くありませんでした。“良い出会いがあればいいな”という邪な気持ちを後ろめたいと感じることもありました。それでも、資金調達の可能性という観点から、素晴らしいプラットフォームサービスだと理解し登録させていただいたという経緯があります。
及川 「M&A」と名前が付いているので、どうしても“会社を売る”というイメージになりやすかったのは確かです。しかし資金調達のニーズが増えたところでブランドを分けた結果、サービスがぐんと成長したという感覚です。
栗山 ユーザーが隠れた使い方を知っていて、それをユーザーインタビューで気づくという、まさに教科書的といいますか、理想的なグロース手法ですね。及川さんは、この資金調達プラットフォームがウケている理由をどのように分析されていますか。
及川 ここ1年ほどのファイナンス環境の変化としては、ダウンラウンドIPOが増えていることもあり、SaaSをはじめとしたスタートアップのバリュエーションが下がりました。その結果、スタートアップはVCから資金を調達しづらくなってしまいました。言い換えると、何とかお金を集めることはできても、株価、すなわちバリュエーションが厳しくなったということです。
一方で、外部環境の変化も相まって、事業会社の出資意欲は高まっています。オープンイノベーション税制というのがありますが、事業会社がスタートアップ企業に出資し、一定の条件を満たすと節税になります。また、スタートアップが事業会社から資金調達するというのは、これまでは少しネガティブなイメージがあったと思いますが、それが大きく変わっています。クラウド録画カメラを提供するセーフィー株式会社も事業会社から資金を集め、そのシナジーにより上場したという事例がありますが、このように必ずしもVCに頼らずに上場するケースが増えてきていますし、事業会社からお金を集めることに対する抵抗感が無くなってきているのは確かです。そういった流れの中で、弊社の「資金調達クラウド」が注目を集めていると思っています。
栗山 「資金調達クラウド」を最初に知ったときには、今までありそうで無かった、ユニークなサービスだと思いました。事業会社は、大企業であれば経営企画部門やCVCなどの窓口がありますが、今どこが門戸を開いて出資をしたいと考えているのかが分かりません。このプラットフォームの良いところは、そういった大企業ばかりでなく、中小中堅企業でも出資をしたいと考えている企業が集まっていて、このサービスでなければ出会えないマッチングが生まれている点にあると思っています。
及川 そうですね。もともとM&Aのプラットフォームから立ち上げたので、資金調達したい利用者の多くがCFOやCEOで、決裁権限が強い経営者層に対して、出資ニーズや買収ニーズをオープンにしています。出資側も手を組むべきスタートアップを探していますが、なかなか機会を作れないという課題がありました。またスタートアップと出会えても、必ずしも資金調達のタイミングではなかったりなど、そう簡単にマッチングができるわけではありません。情報をオープンにしたことで、しかるべきタイミングでしかるべき相手を見つけることができるようになりました。
栗山 出資に対するアンテナが立っているかどうかを見極めることができるのが、このプラットフォームの最大のポイントですね。現時点で、会員数はどのくらいになっているのでしょうか。
及川 スタートアップ側は2,500社ほどいます。その中で、資金調達に対してアクティブに動いている企業は、毎月200社ほどあります。一方、出資したいと考える側の企業は300社ほどです。VC(ベンチャーキャピタル)はなく、すべてが事業会社で、ITの上場企業が多くいらっしゃいます。
栗山 事業会社が出資をしたいと考えるモチベーションはどのようなものでしょう。
及川 もっとも多いのは“シナジーを生みたい”という理由です。例えば出資をした会社が自社のラインナップ拡充のために「スタートアップのプロダクトを売りたい」という理由や、あるいは「販売権が欲しい」というケースもあります。また、出資先に自社が提供するシステムやサービスなどを使ってもらいたいと考えているパターンもあります。。
研修会社への出資であれば、その金額の一部や全額を、この先2~3年の間、継続的に研修を発注する費用に充当するケースがあります。もちろんこの場合は、それだけでなく、将来的には事業を一緒に作っていくという目標を据えています。また、一旦スタートアップに出資をすることで、スタートアップをリサーチしているというケースもあります。原理原則からすれば、事業会社によるスタートアップや中小企業への出資は、フィナンシャルリターンが主ではなくて、事業シナジーでアップサイドを回収することが目的となります。
栗山 そこは、いわゆる「エンジェル投資家」に近いというか、VCとは大きくスタンスが違うのですね。
及川 ファンドにはご存じの通り、満期があります。2013年頃から数多くのVCのファンドが登場しましたが、10年が経過し、今ちょうど満期を迎える時期に入っています。なので、スタートアップ側としても、“早く上場しなければならない”とプレッシャーがかかっている状態なわけですね。そのときにVCが持っている株式の持ち分を事業会社に移そうという動きが出てきています。そうすれば、イグジットに対してプレッシャーがかからずに安定株主のもとで経営できるというメリットがあるからです。それもまた弊社サービスが、多くの事業会社に活用されている理由のひとつといえます。実は栗山さんがご出身のDeNAさんもソニーとリクルートが創業時の投資家だったりします。
栗山 スタートアップの経営者が必ずしも、IPOをゴールとしているわけではありません。そこまでのメンタリティを持っていない経営者であればなおさら、銀行以外からの資金調達の手段として、自分たちよりも格上で、同じような規模でもでもしっかりと利益を出している企業から出資を得るのは難しかったと思います。それが実現できる場となっているのも大変興味深いです。
及川 それでも、まだまだこのサービスを知らない人が多いので、地道に啓発活動を続けている状況です。最近は、中小企業でも「新規事業をはじめなくてはならない」「DXを進めなければならない」という共通課題を持っているので、出資を通じて一緒に取り組める相手を探しているのは事実としてあります。また、キャッシュリッチな企業は“キャッシュを寝かせておくならば出資を…”と考えるでしょう。一方、スタートアップや中小企業は、資金に加えて、“事業を伸ばす場が欲しい”という考えもあると思いますので、それぞれの視点でこのサービスを活用いただきたいです。
栗山 現状では、出資側とそれを受ける側では、どちらが不足している状況ですか。
及川 今は、出資側の方に力を入れて募集しています。
栗山 御社は業務提携、出資、JV(ジョイントベンチャー)、M&Aといった、幅広いオープンイノベーションを扱うプラットフォーマーと認識していますが、さらにサービス利用者が今後増えそうですね。そのポテンシャルはどのように捉えていますか。内部留保が充実している中小中堅企業と考えただけでも、それだけでも数万社はありそうですね。
及川 低く見積もっても10,000社はあると思っています。
栗山 発行体としては資金に困っていて、企業とオープンイノベーションを実行したいと考えると、対象はもっと広くなりますよね。400万社(日本のおける法人数)のうちの5%でも20万社なので、非常に大きな市場と言えますね。改めまして、調達側の中小企業が「資金調達クラウド」を活用すると、どのようなことができるのか、機能と併せてご説明いただけますか。
及川 最大の特徴は、実名をだして出資者を募ることができます点です。スタートアップ側は自分の会社のステージや経営者のプロフィール、資金の使い道などを記入しますが、どのような課題があるかは我々もサポートして入力します。今はまだ20社ほどの利用ですが、もっと利用者が増えれば、課題の部分は取材ではなくCMSで管理しようと考えています。出資する企業も一覧で並んでいるので、業態などで探して自分たちとマッチしそうな企業を探すことができます。
(画像)資金調達クラウドの企業検索画面
栗山 発行体として企業がたくさん並んでいますが、正直、必ずしも知っている企業ばかりではなさそうです。どうやって相手を選んでいくのでしょうか。
及川 今、私たちはカスタマーサクセスに注力しています。会員登録をしていただけると、ファイナンスサポートチームがオンライン面談を実施しますので、そこで情報を聞きながら出資企業選びのサポートをしたり、先方との面談時のアドバイスをしています。例えば「うちの商品を売ってください」というだけの一方的なシナジー提案に対して、「自社が提供できる情報や提携案も必要ですよ」とアドバイスすることもあります。
栗山 ユーザーは自社のPR方法を磨かれて、その上で貴社のマーケットプレイスでマッチングをしていくということですね。
及川 そうですね。また、オープンになっていない企業(非公開情報)に打診するということもできるようになっています。その場合は発行体から手数料として5%いただいています。現在は上限なく、どの企業にも打診はできますが、期待を外れたような使われ方をしてほしくないので、ルールの整備などは順次、進めていく予定です。
栗山 “会いたい”と思って連絡を入れた企業と実際に会える確率はどれくらいですか。
及川 アポイントメント率は10%ほどです。出資検討企業から返事が来たら、私たちは介在せず、直接アポを取ってお会いいただきます。今はどちらかというと、資金調達先を探しているスタートアップからの打診の方が多いですが、今後はそれも変わっていくと思います。待っているだけでは、有望な企業は他社に取られてしまいますからね。人材採用と同じような感覚ですが、中小企業もスタートアップも“一点モノ”なので、逆転現象が起きるのは間違いないでしょう。
栗山 このサービスの登場によって、スタートアップ、中小企業の資金調達手段の選択肢が増えました。この先、どのような変化を予測していますか。
及川 “出資してからM&Aする”というケースが増えてくると思います。今はM&Aの成立に目が行きがちですが、本来はその後の成功が重要なはずです。出資をしてから買収をするというのは、人材でいうところの副業や業務委託をしてから正社員になるのと同じようなもので、まさに理にかなっていますよね。反対に出資をしてから相性があまり良くなかったと分かって、出資した分をセカンダリーで売却するというケースも増えてくると思います。M&Aで買ったものを売却するのは難しいですが、出資であればやり直しが利きます。
栗山 事業承継以外の戦略的M&Aや、シナジーを生むために一緒になるという市場は、今後も伸びていきそうですね。
及川 そうですね。当社の推計によるとスタートアップのM&Aは手数料ベースで、昨年450億円ほどの市場規模です。これが20年後には約16倍になると見ています。米国のスタートアップM&Aの伸び率も、VCファンドができてから30年かけて16倍になりました。先ほど説明したように、日本にVCファンドが登場してから10年経ち、今後はアメリカと同じように伸びていくことが予測されます。
栗山 日本の問題でもある、“お金があるのに買わない”という状況は、御社のようなライトなサービスができることで、啓蒙が生まれて市場拡大につながっていく、それが御社の戦略でもあるということですね。
及川 おっしゃるとおりです。さらにいえば、今後は出資する企業側のニーズをもっと深ぼっていくという戦略もあります。もちろん、調達したい側のスタートアップ企業にももっとたくさん参加いただきたいですね。世の中にはスタートアップのコミュニティが数多く存在するので、そこにアプローチして周知を図っていくつもりです。
栗山 スタートアップのみならず、伸び悩んでいる中小企業こそ、ここにまず登録をして、業務提携の機会をつくることが、マーケット拡大の肝になりそうです。最後に、今後の展望についてお聞かせください。
及川 M&A市場、およびスタートアップ界隈は、転換期に来ていると感じています。大手企業の成長が陰りを見せていますし、M&Aにかかわる税制改革もなかなか進まないなど、業界全体が多少、不安定な状況にあると捉えています。そこに対して私たちはテクノロジーを駆使し、お客様がハッピーになるような、オープンなM&Aや出資が増えていってほしいと願っています。もっと効率的なM&Aや出資が生まれてほしいですね。そのためにもユーザーを増やしていきたいですし、さらにプロダクトも磨いていきたいと思っています。
栗山 M&A企業の社長で、及川代表のようにプロダクト開発に精通している方は、おそらく他にはいませんよね。だからこそ御社のミッションにテクノロジー活用がしっかり打ち出されているのですが、単なるデータマッチングに留まらない仕組みがある点に魅力を感じますし、我々としてもそこに期待したいですね。
及川 ありがとうございます。ポイントは人と、プロダクトからのデータですね。人がいなければラストワンマイルに届きません。M&Aは感情論の部分もあるので、最後に背中を押すという意味でも人の介在が重要です。そして、さらに多くのデータさえ集まっていれば、より良いマッチングが可能となります。今後も、プロダクトとして進化を続けていければと思っています。
(PRONI代表 栗山規夫の編集後記)
日本でM&Aという概念に未だに良いイメージがないのは、一時のお茶の間をにぎわせた敵対的買収の報道があったからなのだと推測しますが、及川代表率いるM&Aクラウドは、日本の中小企業やスタートアップの救世主ともいうべき存在になっていくと確信しました。「テクノロジーの力でM&Aに流通革命を」というミッションにも共感しています。M&Aは企業の新規領域参入の術であり、後継者問題の光でありましたが、スタートアップの資金調達の新たな手段のひとつとして、出資をきっかけとした企業と企業のマッチングというビジネスニーズにはまだ見ぬ力強い成長の可能性を感じます。及川代表との出会いは、及川代表の1社目の起業(マクロパス社)の時ですが、その後ご自身がM&Aに成功された経験もありますし、また、プロダクト開発を取り仕切るCTOのご経験からも、売り手/買い手のユーザーニーズを的確に表現でき、M&A業界に新たな風穴を拓いてくれるものと感じています。