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トラボックス株式会社 ロゴ

トラボックス株式会社

迅速に的確に成果につなげるために。BtoB一人マーケターが実践するトラボックス流「外部パートナー活用術」

2024.03.18
PRONIアイミツご活用事例 トラボックス株式会社

会社を立ち上げ、グロースさせていく過程において、実現させたいことは次々と生まれる。しかしそこには「リソース不足の壁」が立ちはだかり、その度にさまざまな観点で悩むこととなる。

自社で採用するか、外部パートナーの協力を仰ぐか。自社でノウハウを獲得するか、外部の知見を借りるか。そうして内製と外注を使い分けながら、会社のグロースの歴史は刻まれていく。

「内製vs外注」という観点で会社の歴史を振り返るPRONIマガジンの新企画。第2弾は、トラボックス株式会社 ・杉内 伸太郎氏をお迎えし、組織と個人の変化のポイントで、どのように外部のプロの力を活用してきたかを伺った。

インタビュー先のプロフィール

トラボックス株式会社

https://www.trabox.ne.jp/

トラボックス株式会社は、トラックの運送情報を一つのプラットフォームで可視化し、運送会社様の利便性向上を目指す物流DXプラットフォーム「トラボックス」を20年以上運営しています。荷物を運んでほしい運送会社と、空きトラックを保有する運送会社をオンラインでマッチングさせるサービスです。2023年の荷物情報登録件数は280万件以上となり、国内最大級の取扱量を誇ります。2020年2月にビズリーチなどを展開するVisionalグループに参画し、ITの力で物流業界全体の生産性向上に寄与することを目指しています。

杉内 伸太郎 様 写真

杉内 伸太郎 様

トラボックス推進部 ビジネス開発グループ グループマネージャー

聞き手

聞き手 栗山規夫

栗山規夫

PRONI株式会社 代表取締役 Founder

三菱商事、DeNAを経て、2012年にPRONI株式会社(旧社名ユニラボ)を創業。BtoB受発注プラットフォーム「PRONIアイミツ」を立ち上げ、10年で現在の規模に育てた。新たな仕事に挑戦するビジネスパーソンの「発注力」を上げることを目標に、日本のDXを進める優良企業の経営者、ビジネスリーダーのインタビューを実施。

インタビューの様子

”内製が中心” の環境から、半年で外部パートナーの活用を決意

ー まずトラボックスの事業概要と杉内さんの自己紹介をお願いできますか?


杉内 トラボックスは、国内最大級の物流DXプラットフォーム「トラボックス」を運営する企業で、2020年にM&Aによりビズリーチなどを展開するVisionalグループに参画しています。


私自身は20代を広告代理店で過ごし、プランニングや広告の運用、webサイト製作のディレクションなどを担当していました。2015年にビズリーチにジョインし、求職者向けのBtoCマーケティング部門を経て、採用企業向けのBtoBマーケティングの責任者を長く務めました。現在はグループに加わったトラボックスに転籍し、マーケティング戦略立案や実行だけでなく、セールス、カスタマーサクセス、カスタマーサポート、広報部門を統括しています。Visionalグループでのキャリアの大部分がマーケティングといった形ですね。


栗山 ビズリーチからトラボックスに移られて、マーケティング領域に関しては一人マーケターとしてお仕事されているとお聞きしました。一人で数多くのロールをこなすのは大変ですが、どのように取り組まれてきたのか教えてください。


杉内 トラボックスがVisionalグループに加わった後、人や組織、文化だけではなく、事業成長速度を上げるための仕組み化や、体制づくりを大きく変えていく必要がありました。


これまでに様々な施策を試してきたので、その経験を頼りにしつつも、業界やターゲットが異なるため、可能性がある施策一つひとつにひたすら挑戦しつづけています。試した結果に○×をつけて、効果が見込める施策は深掘りしていく、という流れであらゆる施策を今も取り組んでいます。


人材から物流へと全く違う領域に移った為、当然、物流業界に関する知識も経験もありません。マーケティング戦略を考える前に、まずは業界のキャッチアップが必要だと感じ、すぐにインサイドセールスやカスタマーサポートなどの現場業務に取り組み、顧客である運送会社様にいくつも訪問し、実際の業務を通じて業界の理解を深めていきました。そうした中で得られた物流業界の特性に合わせて、新しいマーケティング施策のアプローチも取り入れていきました。


栗山 新生トラボックスを立ち上げる際に、個別の業務を「内製するか、外注するか」検討したタイミングはありましたか?


杉内 立ち上げ当初はすべての業務を「内製」で行っておりました。と言うのも、トラボックスもビズリーチも、ナレッジやノウハウを自社内にためていくために内製で取り組むことが多く、広告運用やクリエイティブ制作などほとんど自社で対応してきたからです。


また、トラボックスに来て、自分自身の物流業界もサービス自体のキャッチアップも必要だったこともあり、まずは自分で実務をやってみないと、顧客である運送会社様の解像度が上がらないな、という思いもありました。しかし当時の社員数は出向したメンバーも加えて13名。そのうちの約半分はエンジニアでしたから、ビジネスサイドは5名ほどで担わないといけません。


私もマーケティングを主軸に置きながら、並行してインサイドセールスやカスタマーサポート、新規事業開発なども担当しており、すぐに工数的な限界を実感しました。そうした経緯から想定より早く、ジョインして約半年のタイミングで、まずは広告運用から外注することに方針を切り替えました。


インタビューの様子


ー はじめて外注化を進める業務として、「広告運用」を選択した経緯を教えてください。


杉内 工数とパフォーマンスの観点からでした。広告運用はマーケティング施策の中でも、とりわけ工数がかかりますし、改善する過程の中でやれることが沢山出てくることは経験上知っていました。


ですが、時間が限られているせいで伸びしろがあるのにパフォーマンスを伸ばせない状況に陥っていました。加えて自分の時間を捻出しないと今度は他の施策に取り組めなくなりますし、そもそも集客の効果も落ちかねない。そうした経緯で外注化を判断しました。


栗山 「内製するか外注するか」それぞれの業務で判断が異なると思います。そうしたときに判断軸となるのはどういったことでしょうか?


杉内 ”コミュニケーションを含んだコストパフォーマンス”です。仮に社内に十分なリソースがあり、クオリティを維持したり向上できる体制がつくれるのであれば、内製のほうがいいかもしれません。それが叶わない時に外注を検討しますね。


広告運用では、一定のコミュニケーションコストをかければ、外部パートナー様の方にノウハウが蓄積されていき次第に運用改善がしやすくなるので、外注する価値があると思います。もちろん、最新の広告運用技術や、様々な業界での知見も保有されていますので自分の視点とは別の角度からアドバイスなどをいただけるのも有り難いポイントです。


栗山 逆に、敢えて外注しないと決めている業務領域はありますか?


杉内 企画やコンサルティングの外注はしないことにしています。これは私たちの経営の決めとして、「自分たちで事業を切り拓くこと」に重きを置いているからです。情報収集として意見を聞くような場面はありますが、事業の線路を引くようなことを外注したくはないと考えています。それからプロダクト開発も、グループ参画前から内製方針を貫いてきており、今も変わらない方針です。


頼れる外部パートナー選びのコツは期待値調整。業務の線引きをきちんと行う。

ー 外注先とのコミュニケーションコストの問題にはどのように対処していますか?


杉内 広告運用以外にもデザイン制作も外注していますが、発注前に期待値調整をし、求める期待値を明確にして線引きすることを大切にしています。良いデザイン会社様を見つけるのは大変ですし、品質という側面ではデザインのレベルだけでなく、成果につながるデザインかどうか、あるいはスピーディーに対応してくれるかといったように、考慮すべきことが多いのが特徴です。


マーケティングは迅速にアウトプットを出して、PDCAを細かく回すことが重要です。そうした中、デザインも当初は内製でしたが、人手が足りなくなる中で、そのPDCAを回すスピードに制作リソースが追いつかなくなっていました。であれば、内製デザインと外注デザインで業務を分担して、こちらの求めるものを適切に制作いただけることを条件に、外注することにしました。


デザイン制作領域は外注先を見つけるのが特に難しいと思います。コミュニケーションの取り易さや、自社サービスへの理解、具現化したアウトプットの品質、対応スピードなど、考えなければならない要素も多いですし、それぞれの要素で相性もありますよね。


例えば顧客がアパレルブランドメーカーだとして、その製品のブランドサイトを作るという場合と、数字を追って成果につなげるためサービスサイトの場合では求められるアウトプットは全く違います。サービスサイトは改善要素も多いので、そうしたことを理解いただいたうえで、きちんとアウトプットを出してくださるパートナー様ですとありがたいですね。


栗山 デジタルマーケティングで考えればLPのデザイン1つでその効果は格段に変わりますから、そういった状況を汲み取ってクイックに対応してくれる外注先パートナーは頼もしいですよね。


杉内 そういった意味では、現在ご協力いただいているデザイン会社様はサービス資料からLPまで幅広く対応していただき、こちらのアイディアをすぐに具現化してくださります。コストを抑えながら、自分たちだけではできない業務や手が足りない業務を補ってくださるのでとても助かっています。


インタビューの様子

限りあるリソースで成果を上げる為に重要なことは、優先順位付け。

ー 杉内さんがトラボックスにジョインして、成果が上がった施策はありますか?


杉内 新規でご登録いただく会員数を大きく伸ばすことができました。限られたリソースのなかで、これまではサービスサイトに集客しており専用のLPもありませんでした。PDCAを回すことがやりたくてもできなかった。そこから数値状況を可視化し指標を確立し、新たなLPの制作、リスティング広告以外の広告施策やナーチャリングなど、ベースとなる施策を実施しました。サービスサイトもCVを獲得しやすいサイトにリニューアルもすることで大きく改善することができました。



ー リソース不足の解消や、生産性向上の為に、新しいSaaSの導入やサービスの利用については検討していますか?


杉内 新しいサービスやツールは常に注視しています。展示会やSNSなどを通じて最新情報を収集し、可能性のあるサービスには積極的にアプローチしています。


例えば、顧客管理についてはベストプラクティスを確立するまで紆余曲折ありました。これまでは、トラボックスで創業期から活用してきた内製の社内システムで、架電ログや問い合わせ内容、契約状況などを管理していました。ただ、事業をグロースするために顧客管理や請求管理などを簡素化する背景から、CRMツールを導入することにしました。


ところが実際に運用してみると、多くのユーザーがレポート閲覧のみで、ちゃんと活用しているユーザーがごく一部でした。コスト面や業界特性の観点からもCRMツールのように機能が充実していなくても問題ないことがわかったので、2年ほど活用した後、今度はリーズナブルなCRMツールに切り替えました。切り替えたツールはコスト効率が良く、非エンジニアでもノーコードで構築できるので小回りが利き、使いやすかったです。ただ、最終的には社内のエンジニアと相談し事業グロースに必要なデータを元々ある社内システムに集約し顧客が使うプロダクトのデータとあわせてオープンソース方のダッシュボードツールを利用する方がコストも運用も効率がよいため現在は社内システムと連携したダッシュボードツールとスプレッドシート連携した運用に落ち着きました。


ー サービスサイト構築にはmicroCMSを活用されているそうですね。


杉内 はい。従来のサービスサイトはCSSで直書きしていたんです。ですが事業をグロースさせるには、マーケティング的にもさまざまなコンテンツをアップしていく必要があります。そのたびにエンジニアに依頼していてはエンジニアの工数観点でも負担になってしまい、かといって全面的に作り直すほど工数をかけられない。なので一旦部分最適できないかという背景で、microCMSを導入しました。


これによりコンテンツをビジネスサイドでも更新できるようになり、効率的な運用が可能になりました。”物流業界の2024年問題特集ページ”や”物流一括窓口サービス(URL)”を立ち上げた際も、microCMSを導入していたことでスピーディーにコンテンツを流し込み、立ち上げることができました。


ー 課題の有無に関わらず、新しいSaaSやサービスには常にアンテナを張っているんですね。


杉内 ホリゾンタルよりバーティカル領域でのマーケティングでは、なにか施策をやったからすぐに集客や売上が上がる、という施策は多くありません。地道な改善活動を一歩一歩すすめていくことで、アクイジションやアクティベーションを確実に上げていくことが重要です。そのためには先々を見て先手を打っていくことが求められます。新しいツールやサービスを導入することで改善の可能性があるので、そのあたりの情報収集は大切にしています。


インタビューの様子

協力会社様や取引先にも自社のファンになってもらえる関係性を。

ー 外注先の企業との付き合い方として、なにか意識されていることはありますか?


杉内 協力企業様を含めた社外のパートナー様とは、互恵的な関係を築くことを大切にしています。初めてお会いする方にも敢えて「僕らは長く付き合いたい」と話すようにしています。なので、会社のビジョンや方向性までお話しすることが多いですね。


デザイン制作でも広告運用でも、毎回違う会社と契約するのは得策ではありません。1回ごとの契約を10社とするのは、その都度説明も必要になりますし、膨大なコミュニケーションコストがかかります。むしろ長く関係を続けていただくことで、外部の協力企業様側にもトータルで売上が見込めるとか、成功したら導入事例を公開して他社様にも提供いただいてとか。この取引を起点に、相互に成長していけるような関係性になれたらと話しています。


そういう関係性であれば多少大変なことがあっても、お互いに根底での理解があるので、多少の融通が効いたり、問題解決に向けて、同じ方向を向いて一緒に取り組んでいけます。これはただのビジネスライクな契約関係ではできないことだと思います。


トラボックスも24年事業を続ける中で、創業当初からずっとご利用いただいているお客様も多くいらっしゃいます。お客様だけでなく、協力企業様や取引先様にも当社のビジョンに共感していただき、Visionalグループのファンになっていただけるような、長く続く関係性を築いていくことを大切にしています。



発注の流儀


(PRONI代表 栗山規夫の編集後記)

M&Aにより、Visionalグループにジョインしたトラボックス。弊社PRONIと領域は異なりますが、物流業界のBtoBプラットフォームとして長く業界発展に貢献してきた企業です。M&A後のPMI(M&A後に成長を遂げる為の統合プロセスのこと)に携わったメンバーの1人が杉内さんです。一人マーケターとして、数多くの課題を解決し、大きな成果を上げていく過程で、Visionalグループのこれまでのやり方をそのまま踏襲するのではなく、適切に状況判断し、「外注活用」に踏み切ったというエピソードはリアリティがありました。インタビューで語って頂いた外注先ベンダーの選び方、相性の見極め、信頼関係の築き方などを聞いて、外注ベンダーであっても、それは正社員採用さながらの感覚と緊張感を持って取り組んでいると感じました。弊社が掲げるコーポレート・タグライン「プロに出会う。プロになる。」を実践する際に、外注先パートナーとの戦略的互恵関係が重要であると学んだ次第です。


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