ホワイトペーパー
絶対に失敗しない発注先探しの鉄則【便利な発注先チェックリスト20選付き】
事業企画 、総務 、情報システム
メモやタスク管理、Wiki、データベースなどさまざまな機能を一元的に使うことができるクラウド型の万能アプリNotion。世界中で3,000万人以上、数十万のチームが利用するこの“コネクテッドワークスペース”の日本語版が2022年11月に正式リリースされ1年が経過した。すでに情報感度が高い多くの日本企業が活用、大いに注目を集めている。今回は、日本市場への普及を進める日本法人Notion Labs Japan合同会社 General Managerアジア太平洋地域責任者で、日本での第一号社員でもある西 勝清氏とPRONI代表の栗山が対談。現在の経営者が押さえておくべきNotion活用術、およびナレッジを共有する重要性について語り合った。
インタビュー先のプロフィール
Notionは、アイバン・ザオ(Ivan Zhao)とサイモン・ラスト(Simon Last)によってサンフランシスコで創業し、現在世界中の何万ものチームや企業から支持を受けています。2021年には企業評価額1兆円に達するなど、市場からも高い評価を受けています。Notionは、ドキュメント、プロジェクト管理、Wikiをカスタマイズ可能な形で組み合わせたオールインワンのワークスペースで、コラボレーション、情報収集に活用されています。
西 勝清 様
聞き手
栗山規夫
PRONI株式会社 代表取締役 Founder
三菱商事、DeNAを経て、2012年にPRONI株式会社(旧社名ユニラボ)を創業。BtoB受発注プラットフォーム「PRONIアイミツ」を立ち上げ、10年で現在の規模に育てた。新たな仕事に挑戦するビジネスパーソンの「発注力」を上げることを目標に、日本のDXを進める優良企業の経営者、ビジネスリーダーのインタビューを実施。
栗山 まずは、Notionの概要から教えていただけますか?
西 Notionはチームがスピーディーに、質の高い仕事をするためのコラボレーションツールで、コネクテッドワークスペースと呼んでいます。特徴は大きく3つあります。まず、オールインワンの機能性です。同期型ツールと異なり、Notionは非同期型で、ドキュメント管理などが可能です。プロジェクト管理やナレッジ管理も統合し、従来別々だったwikiツールやプロジェクト管理ツール、ドキュメント管理ツールがNotionで完結します。
次に、カスタマイズ性の高さです。一般的なソフトウェアは使用方法が固定されていますが、Notionはカスタマイズが自由で、ノーコードで利用可能です。これにより、コーディングができない人でも自分の好みに合わせてカスタマイズできます。
最後に、愛されるプロダクトであることです。Notionはユーザーに愛され、多くのコンテンツや書籍がファンによって作成されています。導入後の活用が期待でき、使いやすく、ネット上に豊富な情報があります。
栗山 創業時から“愛されるプロダクトにしよう”と戦略的に考えたのですか?
西 もちろん、そうありたいとは思いましたが、いくつかの要因により“愛される”プロダクトになったものと思います。まず、Notionの使用感が大きな魅力です。創業者がデザインに重点を置き、ユーザー体験を重視しています。興味深いことに、Notionは京都で着想を得たものです。創業者が京都での滞在中にデザインやホスピタリティから影響を受け、それがNotionに反映されました。
さらに、Notionはレゴブロックのように自由に構築できる製品仕様を持っています。これにより、ユーザーは自ら作成したものを周りに見せたいと感じ、その伝播が愛される要因となっています。また、ノーコードであるため、誰もが容易にカスタマイズを行える点もファンを獲得する重要な要素です。
栗山 Notionが急激に普及した背景はどう分析していますか?
西 多すぎるSaaSやコラボレーションツールにより、情報が分散してしまう問題がありました。必要な情報を探すのに時間がかかることが社会的な問題となっていました。リモートワークの普及でチャットツールが増え、さらにその傾向が加速しました。これにより、情報が集約される場所への需要が高まっています。
栗山 私たちもNotionを導入していますが、本当にその通りです。特にSlackとの連携は大変便利ですね。普及したのはコロナ後でしょうか?
西 はい、私が入社した3年ほど前から急速に普及しました。当初は英語版を使うスタートアップやIT企業が中心でしたが、2年前に日本語のβ版をリリースし、昨年には正式な日本語版がリリースされました。今ではIT系だけでなく、大企業や中小企業、教育機関など幅広い業種で利用されています。ちなみに貴社がNotionを導入した経緯はどのようなものでしたか?
栗山 創業時にConfluenceを導入しましたが、比較的高価で運用も難しく、費用体効果が見合わなかったため、Notionに移行しました。当時はまだ30人程度で規模が小さく、ナレッジマネジメントへの投資に限界がありました。しかし現在では、250名程度の組織規模となり、規模拡大に合わせて情報共有の重要性が高まっているため、Notionを解約することは考えられないほど重要ツールと位置付けています。
Notionの導入は、私の指示ではなく、とあるエンジニアが自発的に始めました。数カ月で自然と型が完成し、現在は多くの社員に積極的に使われています。
栗山 Notionの意外な使い方があれば、教えていただけますか?
西 小規模な企業では、Notionを簡易的なCRMツールとして活用している例があります。セールスのステージをカンバンビューで可視化し、進捗管理を行っています。高額なCRMシステムの導入が難しい小規模企業にとって、Notionは顧客管理に十分な機能を提供しています。
栗山 カスタマーサクセスなどのシーンでも、顧客を招待して議事録を共有することが可能ですよね。顧客管理だけでなく、直接的な顧客との情報共有もNotionで実現できますね。
西 従来はメールで情報を共有するのが一般的でしたが、Notionではお客様をゲストとして招待し、Notion上で情報を共有できます。コメント機能も活用できるため、効果的なやり取りが可能です。特にスタートアップ企業でこの利用方法が広まっており、最近では大企業もNotionの便利さを実感してこの使い方を採用しています。
栗山 料金体系についても教えていただけますか?
西 Notionの料金体系は主にユーザー数に基づいています。月額または年額契約があり、年間契約の方が割安になります。提供しているプランは3つあり、高いプランほどセキュリティや管理機能が充実しています。無料プランもあり、1,000ブロックまでは無料で利用できます。1,000ブロックを超えなければ、無期限に無料で利用可能です。
栗山 最近、ホームページさえNotionで作る企業が増えてきましたね。ホームページ作成も1,000ブロック以内で可能なのですか?
西 内容によりますが、シンプルなものであれば可能です。Notionは社内ページを簡単にインターネットページとして公開できます。スタートアップなどが特に採用ページ、カスタマーサクセスやカスタマーサポートのFAQ、会社のホームページなどをNotionで作成しています。独自ドメインを設定するツールと組み合わせることで、更に高度なページを作成することも可能です。
栗山 Notionのサービスやツールの周辺には、Notionをより良くするための機能があり、それらを組み合わせて使うことで、さらに使い勝手が向上するわけですね。
西 はい、ユーザーからのフィードバックに基づき、Notionが直接対応できることは行いますが、Notion自体が対応しない部分はユーザーが開発した周辺機能によって補完されています。
栗山 ユーザー自身が使い方を開発し、進化させていくプロセスが、Notionの魅力の一つですね。一般的なプロダクトにはない、ユニークな特徴です。
PRONI社でのNotion活用と導入によるコスト削減効果
西 先ほどのお話で、栗山さんは創業期から情報共有ツールを使っていますが、当初から情報共有を重視した理由は何ですか?
栗山 オペレーションエクセレンスが肝となる事業(ビジネスモデル)を展開している為です。多くの社員、アルバイトさんが事業を回していく上で、一定程度人材の入れ替わりもあり、ノウハウの共有は最重要課題です。本来、会社で共有すべき情報も、個人のプライベート環境に保管されて眠っていたり、そういう問題意識は常にありました。
加えてKPI管理を細かく見る方なので、当社は数字で意思決定する文化が根付いていますが、その前提は情報共有がきちんと行われていることにあると思います。
西 中小企業では、しばしばマニュアルやドキュメントが不足し、多くの業務が個人に依存する傾向があります。Notionは、そのような状況を改善するのに役立ちます。Notionは使いやすく、楽しいツールであり、ドキュメント化に対する抵抗感を軽減することが可能です。特に、「あの人がいないとわからない」、「このお客様と何を話しているかが分からない」といった人に依存する部分が多い中小企業で、Notionを導入することで、全員が同じ情報を共有し、業務効率化を促進できます。また、そもそもナレッジを溜めるかどうかという点においては、経営者の考え方による部分だと思います。
栗山 せっかくの機会なので、弊社でNotionを導入して得られた効果について考えてきましたので、西さんとディスカッションさせてください。
弊社のNotionは全社員の情報ダッシュボードとして、昔で言うイントラネットのような位置づけです。Notion上にあるページ総数は24万ページ、この1か月のアクティブ率でみると、ログインしたユーザーが全体の97%、何か編集したユーザーが全体の89%と非常に高い数値が出ています。今年は中途入社の新人も多いですが、数字を見ると定着しており、社員自身が自発的にコンテンツを編集することに携わっているのも嬉しく感じます。
西 非常に高いアクティブ率ですね。どんなコンテンツが見られているのでしょうか。
栗山 経営の透明性を高める為、情報共有を徹底していますので、やはり議事録、業績情報、システム開発やカスタマーサクセスの現場でのプロジェクト管理的な活用がメインですが、会社の文化を形成する側面として、「自己紹介コンテンツ」もとても良いと思います。
新しいメンバーが毎月増えていくスタートアップでは、社員の顔と名前を覚えるのも大変であり、自己紹介が重要だったりします。弊社では、入社日にNotionに自己紹介を書き、Slackで発信する文化が定着しています。転職したメンバーは、初めてNotionを使う方も多いのではないかと思いますが、入社日にNotionオンボーディングがされる訳です。アクティブ率が高い理由はここにもあるのではないでしょうか。
西 素晴らしいですね。Notion社内でも新しいメンバーが入社すると、自己紹介を書く文化があります。ところで、栗山さんはNotion導入のコストメリットについてどうお考えですか?
栗山 ざっくりした試算ですが、年間1,500万円ほどのコスト削減効果があると考えても大げさではないかと思います。計算根拠ですが、Notionを導入することで(していない状態と比べて)1日10分の業務時間削減につながると仮定します。膨大な社内情報から、自分の欲しい情報にアクセスしたい時に、見つからなくて困った経験は誰にもあると思います。それによる集中力の低下も危惧しています。
1日10分の時間削減は、正社員150名の年間コスト(人件費)に換算すると、約1,500万円という大きなインパクトになります。弊社のNotionの年間利用料は200万円程度ですので、十分に費用対効果が合っていますよね。かつ、Notionの利用はその年だけで終わるものではなく、永遠に続き、情報はストックされていきますので、資産性があるものだと思います。
西 社内情報には資産性がありますよね。御社は創業10年以上経過し、比較的長い歴史を持っていますが、昔の情報なども残っていますか。
栗山 創業時に導入していたConfluenceを解約したので、当時の情報は残っていないものも多いです。GoogleDrive内を根気よく探せば運が良ければ見つかるような状態です。これは大変残念なことですね。
組織規模を拡大することを想定するのであれば、早い段階からNotionを導入すべきだと感じています。大きくなってから、創業期の様子を知りたい社員や、ミッション、ビジョン、バリューが出来た背景を知りたくても、当時のオリジナル資料が残っていない状態は避けたいですね。それらを研修とかnoteとかで発信するにも限界があります。やはりそこは自分で見にいく、即ち、自走させることなんだと思います。感覚的には、優秀な方ほど、昔の営業資料を見たり、昔のマーケティング施策の結果を見るなど、過去からの変遷を理解した上で、未来の仕事をデザインしていくと思います。
西 Notionでも、Notion開発時のデザイン案や企画案が残っており、それを見るのも興味深いです。創業期から始まる会社の昔の変遷に触れることで、組織に対する愛着が湧き、人材の定着率が上がるという効果も聞いています。
栗山 組織を自走化させないと、一定規模にいくと成長が止まってしまうと思います。今のスタートアップは完全に組織内の情報共有が透明化されているのがスタンダードですが、そこにはNotionのような情報共有ツールの普及にも関係があると思います。
栗山 Notionを導入したけど、うまく普及しないと悩んでいる会社も少なくないと思いますが、どうしたら浸透し、普及するのでしょうか。
西 日常業務の小さな不便を解消することから始めるのが効果的です。たとえば、就業規則に関する疑問が毎日発生している場合、それらをNotionにまとめて共有すれば、誰もが自分で情報を確認できるようになり、時間の節約にもなります。アプローチとしては、トップダウンで「情報共有が重要だから、ここに集めよう」と始める会社もあれば、「毎回同じ質問を受けるのが不便だ」と感じて始める会社もあります。PRONIさんのように情報を蓄積しようとする企業では、経営層の意識が重要になります。経営層が積極的に情報共有を実践すれば、スタッフもそれに続きます。御社ではどのようにNotionを浸透させましたか?
栗山 経営層も情報共有の重要性を理解していますが、Notionについてはそれをくみ取ったエンジニアが自主的にプロジェクトを始めてくれました。そのエンジニアの熱意が高かったのだと思います、おかげで苦労なく自然と普及し、気づいたら定着していました。
西 それは理想的な状況ですね。そのエンジニアが日々の業務で感じた不便さを解消しようと取り組んだ結果だと思います。現在は、色々なツールを利用するのが一般的で、ツールの多さゆえ、逆に不便になっているという話も聞きます。
Notion社内には「コミュニケーションプレイブック」があり、それには「どのツールをどの状況で使うべきか」というガイドが書かれています。Notion社内では、同期はSlack、ストックはNotion、メールは外部のお客様とのやり取りのみに限定し、社内メールは使わないという方針です。これにより、コミュニケーションが分かりやすくなっています。
栗山 沢山のツールを使わずに、Notionだけに絞って組織運営しているケースもあるのですか。
西 Notionは表現力が高いため、多くのことが可能ですが、全てをカバーするわけではありません。例えばホワイトボーディングツールはNotionにはない機能ですが、外部ツールをNotionに埋め込んで使うことができます。これにより、「ここに行けば他のツールへの地図がある」という安心感を提供できます。冒頭にお話したコネクテッドワークスペースというのは、他のツールとも繋がれるという意味も込めています。
栗山 Notionの今後、そしてそれを活用する企業の情報共有の未来について、お考えを聞かせてください。
西 Notionは今後Notion内でできることを拡張していきます。例えば、シンプルなテーブル機能を導入するなど、ユーザーのニーズに基づいて新機能を追加しています。しかし、これにより製品が複雑化し、初めて使う人にとっては難易度が高くなる可能性があります。そのため、創業者は製品をよりベーシックで直感的に使えるようデザインを見直すことを検討し始めています。
Notionのミッションは「Making software toolmaking ubiquitous.」です。これは、コーディングができなくてもNotion上で自分に合ったツールを作ることを当たり前にするという目標です。現在の複雑化の流れに対し、ITが得意でない人でも直感的に使えるようにするための取り組みが進んでいます。
また、Notionにはテンプレートの概念があり、たとえばPRONIさんが作成したポータルデザインや議事録の溜め方などを他の企業に提供することが可能です。日本では長らくナレッジワーカーの生産性が低いと言われていますが、成功した企業がテンプレートを共有し、生産性の高いやり方を広めることができれば、例えば製造業の情報共有の仕方など、日本企業の仕事の進め方が広がり、世界に誇れるものとなると考えています。
栗山 テンプレートが広がっていく世界観は面白いですね。学ぶことは真似ることから始まると言いますが、良いやり方はどんどん広がっていく時代ですので、そういう思想は大歓迎です。ユーザーから愛されるプロダクト作りをしている御社だからこそできるのかもしれません。
西 海外の人が日本企業のセットアップ(Notionのデザインや活用方法)を見ると大体驚かれます。とても細かくてデザインが綺麗ですね。そして良し悪しは別として、日本人はたくさんの機能を使おうとします。計算式を入れて結果を出す関数機能がありますが、そういうものを細かく使って美しく情報を整理するというのが日本ユーザーの特徴です。
栗山 NotionはAIの活用にも力を入れていますよね。今後の展開を教えてください。
西 Notion自体は大規模言語モデルを開発していませんが、既存の大規模言語モデルを効果的に組み込んで活用しています。大規模言語モデルを使ったSaaSとしては世界でもトップランナーだと自負していて、実際に今年2月にNotion AIを出しましたが、私が知る限りどこよりも早かったです。
NotionはAIファーストの製品開発を目指しています。しかし、AI機能を別機能としてではなく、既存のドキュメント管理やプロジェクト管理などの機能を支援する形で導入しています。たとえば議事録にAIを組み込むことで、要約や翻訳が可能になるとか、プロダクト開発で、そのプロダクトを使った際にどのような利用事例が考えられるかといった、プロダクトマネジャーが考えるようなことをAIがアシストしてくれます。さらに最近リリースしたAI Q&A機能では、ユーザーが質問したことについて、Notion内の全ての情報を把握して、回答をその根拠となるNotionページと共に示してくれます。これで組織の知識を再利用することが格段に容易になります。
栗山 ユーザーファーストであり続けながら、シンプルさを維持して高機能化を進めていくということですね。私も一ファンとして、Notionの今後の発展が楽しみです。貴重なお話をありがとうございました。
(PRONI代表 栗山規夫の編集後記)
Notionが京都で誕生したということは知らず、お話を聞いて嬉しくなりました。カスタマイズ性に優れ、ユーザーに愛されるプロダクトだからこそ、世界中で拡がりを見せた訳ですが、京都の美しさやおもてなしにインスピレーションを受け、それが故にユーザ自身が使い方を創造していった歴史にも感銘を受けます。経営情報を透明化することで、社員が自走し、社内における創発が生まれるのであれば、導入しない手はないし、Notion活用のノウハウを蓄積し、ルールを整備して取り組むほど、価値のあることだと感じます。予測困難なVUCAの時代、武器になるのは社内に眠っている情報であり、情報共有によるスピーディーな意思決定だと思います。膨大な社内情報を効率よく蓄積し、またAIにより要約されることで、必要なとき、必要な情報を出し入れできる社内環境の整備は、企業の大小を問わず、重要な経営テーマとなるでしょう。NotionがMicrosoft、Googleに次ぐ、第三のインフラとなるか、一ファンとして見守っていきます。