年末調整とは|手続きの進め方と電子化のメリット・デメリットを解説【2024年最新版】
業種・規模を問わず、従業員に給与を支払っている企業では毎年「年末調整」手続きを行う必要があります。しかし、具体的な手続き内容や流れについて詳しくは知らないという方も多いでしょう。
そこで今回は、年末調整の基礎知識、対象者、年末調整を進める手順などをご紹介するとともに、2020年10月からはじまった「年末調整の電子化」についても合わせて解説します。電子化のメリット・デメリットや、電子化に必要な準備などを詳しく知りたい方は、ぜひチェックしてみてください。
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年末調整とは
年末調整とは、国税庁のホームページにおいて『源泉徴収した税額の年間の合計額と、年税額を一致させる精算の手続※』であると説明されています。会社員など、勤務先から給与の支払いを受ける方は、給与や賞与から所得税をあらかじめ徴収する「源泉徴収」が行われますが、その年の所得税額が確定した時点で改めて源泉徴収した合計額と比較して過不足金額を調整するのが年末調整です。
この際、余分に源泉徴収していた場合は差額が還付される仕組みとなっています。
※出典:国税庁 源泉徴収義務者(給与の支払者)の方へ(令和3年分) https://www.nta.go.jp/users/gensen/nencho/index/gimusya.htm#a001
年末調整のスタート時期
年末調整に必要な書類は、毎年11月ごろに税務署から各企業へ送られてくるため、一般的には10月下旬~11月頭ごろにはじまり、1月下旬ごろまでかけて手続きを行う流れとなります。もちろん企業によってスタート時期にバラつきはあるものの、「従業員による申告」「年末調整の計算」「各種書類の作成および提出」など、複数の作業を完了する必要があるため、2ヵ月から3ヵ月ほどの期間をかけて段階的に手続きを行うのが一般的です。
年末調整では、従業員自身が書類の記入・提出を行うプロセスが含まれるため、ある程度余裕を持ってスケジュールを組んでおくことがスムーズな年末調整のポイントだと言えるでしょう。
確定申告との違い
副業やダブルワークなどでサブの収入を得ていない給与所得者の場合は、年末調整さえ行っておけば基本的に個人による確定申告は必要ありません。自身で所得や税額を申告・納付する必要がある個人事業主やフリーランスとは違い、一般的な会社員の場合は、勤め先の企業が従業員に代わってあらかじめ源泉徴収により所得税を徴収し、さらに年末調整で過不足分の調整まで行ってくれるからです。
一方で、個人事業主やフリーランス、副業をしている会社員などは「自身の1年間の所得を申告した上で、所得をもとにして算出した税金を支払う」必要があります。給与が2,000万円を超える方、年の途中で退社した方なども年末調整が実施されないため、確定申告が必要です。
年末調整の対象者
年末調整は、正社員に限らず、アルバイトやパートも含めたすべての給与所得者のなかで、該当年の「扶養控除等(異動)申告書」を提出しており、以下のいずれかに該当する方が対象となります。
・1年を通して勤務している方
・年の途中で入社したが、年末まで勤務している方
・年の途中で海外勤務などの理由によって非居住者となった方
・年の途中で退職した方のなかで、以下いずれかに当てはまる方
1.死亡した方
2.著しい心身障害により退職し、退職時期から鑑みて本年中に再就職できないと見込まれる方
3.12月中の給与支払いを受けたあとに退社された方
4.パートとして働いている方などが退職した場合で、本年中の給与総額が103万円以下の人
年末調整の対象とならない人
給与所得であり、なおかつ「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している場合でも、以下に該当する方は年末調整の対象とならないケースがあります。
・その年の給与収入が2,000万円以上の方
・災害減免の規定によって、その年の所得税の支払い猶予や還付を受けた方
・2ヵ所以上から給与所得があり、ほかの勤務先で「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している方、もしくは年末調整実施時までに「扶養控除等(異動)申告書」を提出していない方
・年の途中で退社した方(前述の「対象者の条件」に該当しない方)
・非居住者
・日雇い労働者など、継続的に同一の雇用主から雇用されていない方
年の途中でも年末調整を行う必要がある人
年末調整は文字どおり、年末に実施されるのが基本ですが、以下に該当する方は退職時など年末以外のタイミングで年末調整が実施されます。
・年の途中で海外勤務などの理由によって非居住者となった方(非居住者となったタイミングで年末調整)
・年の途中で退職した方のなかで、以下いずれかに当てはまる方
1.死亡した方
2.著しい心身障害により退職し、退職時期から鑑みて本年中に再就職できないと見込まれる方
3.12月中の給与支払いを受けたあとに退社された方
4.パートとして働いている方などが退職した場合で、本年中の給与総額が103万円以下の人
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年末調整を進める手順
年末調整は主に以下4つの流れで進められます。
1.従業員から必要書類を集める
2.年末調整の計算
3.源泉徴収票の作成
4.法定調書の作成・提出
年末調整では従業員と必要書類のやりとりが発生するため、提出に時間がかかることや、提出内容に誤りがある可能性も。さらに、必要書類を回収したあとには計算および各種書類の作成・提出といった複数の工程を段階的にクリアしなければなりません。事前に必要な書類や流れについて把握しておくことが重要です。そこで、ここからは年末調整で必要な手続きについて、流れに沿って順に解説していきます。
従業員から必要書類を集める
最初のステップは、年末調整を行う従業員に必要事項を記入してもらった上で提出してもらうところからはじめますが、年末調整では対象者を問わずに以下の書類が共通で必要です。
・扶養控除等(異動)申告書:年末調整の対象となる従業員が扶養する配偶者・親族の有無などを申告する書類であり、原則マイナンバーの記載が必要。扶養親族がいない場合も「いない」申告が必要なため、年末調整では必ず必要となる。
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が提出されたあとは、マイナンバーの記載や適用要件のチェックなどを行うとともに、すでに申告された内容に異動がないかも確認しましょう。
特定の人のみ必要となる書類
年末調整では必ず必要な「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」以外にも、特定の人のみ必要となる以下のような書類も存在しますので、個々に配布・収集しましょう。
・給与所得者の保険料控除申告書(控除証明書類含む):所得控除に該当する保険料を支払っている方や確定拠出年金(iDeCo)などの掛け金がある方に提出してもらう書類
・住宅借入金等特別控除申告書:住宅ローンを利用して住居を購入、増改築した際の控除を受ける場合に必要な書類
・給与所得者の配偶者控除等申告書:配偶者控除を希望する従業員に提出してもらう書類
・前職での源泉徴収票:転職により中途入社した従業員に提出してもらう書類
年末調整の計算
従業員から年末調整に必要な書類を回収したあとは、年末調整の計算に入ります。年末調整の計算は一般的に以下の流れで進みますので参考にしてください。
1.課税給与所得金額の計算
2.年調所得税額の計算
3.年調年税額の計算
最後のステップで算出する「年調年税額」とは、1年間に支給した給与に対するトータルの所得税を指しています。つまり、この年調年税額が実際に納めるべき納税額であるため、すでに毎月の給与から源泉徴収した金額と比較として過不足を算出し、「超過分の還付」もしくは「不足分の追加徴収」を実施して清算する運びとなります。
源泉徴収票の作成
年末調整の計算が終わったあとは、従業員それぞれの源泉徴収票および給与支払報告書を作成する必要があります。これらの書類を2枚ずつ作成しますが、それぞれ交付先や提出先が異なるため、間違えないように注意しましょう。
・源泉徴収票:1枚は従業員への交付用、もう1枚は税務署への送付用(法定調書合計表と合わせて送付)
・給与支払報告書:2枚1組で市区町村へ送付
なお、基本的に確定申告を個々で行わないケースが多い給与所得者(会社員、アルバイト、パートなど)にとって、ここで作成する源泉徴収票は「確定申告の控え」とも言える重要な書類であるため、確実に配布しましょう。
法定調書の作成・提出
年末調整における最後のステップは「法定調書の作成および提出」ですが、以下4種類の法定調書が必要となります。
・支払調書:源泉徴収義務者(源泉徴収を納める企業)が、報酬を誰に対して、何の目的で、いくら払ったかなどの詳細をまとめた書類
・法定調書合計表:各種法定調書の内容をひとつにまとめた集計表のような書類
・源泉徴収票:従業員に渡したものと同じ内容の源泉徴収票を税務署にも提出
・給与支払報告書:次年度の住民税額を決める際の基準となる情報が記載された書類で、事業者から市区町村へ提出する
なお、上記の法定書類は年末調整の対象年から見て翌年の1月31日が提出期限ですが、源泉徴収税の納付期限は1月10日までと、法定調書の提出期限より早いため注意しましょう。
年末調整の手続きは電子化可能
「年末調整手続きの電子化」とは、年末調整に必要な書類を電子データで取得し、データで処理できるようになる取り組みのことです。従来、年末調整の際には、従業員が各種控除証明書をはがきで受け取り、紙ベースで提出する手続きが必要でした。企業側も同様に紙ベースでの処理が求められていたため、多くの手間が必要な作業だったと言えるでしょう。しかし、ペーパーレス化が促進される昨今の流れに対応すべきというニーズが高まり、ついに年末調整手続きの電子化が実現しました。
ただし、電子化により工数削減などさまざまなメリットが生まれたものの、従業員が保険会社から控除証明書を電子データで受領する手続きが必要になるなど、従来にはなかった手間がかかるようになったのも事実です。
年末調整を電子化するメリット・デメリット
2021年1月の申告分より、「前々年の提出すべきであった法定調書の種類ごとに提出枚数が『100枚以上』の企業」は、法定調書の電子化が義務化されました。あくまで法定調書を電子データで提出することの義務であるため、年末調整すべての手続きを電子化する義務ではありませんが、ここでは年末調整手続きを電子化するメリット・デメリットについてご紹介します。
年末調整を電子化するメリット
年末調整を電子化した場合の主なメリットを以下にまとめました。
・従業員は従来手書きで行っていた書類作成手続きを簡素化できる(国税庁の「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(以下、年調ソフト)」でデータ作成が可能なため)
・企業側はペーパーレス化を実現し、紙ベースでの管理が必要なくなる
・年調ソフトで作成された年末調整申告書データを利用すると、控除額の計算が不要になる
・保険料の控除証明書などのデータを利用することで、添付書類確認にかかっていた工数を削減できる
上記のとおり、年末調整を電子化すると、これまで必要だった紙ベースでの手続きから解放されるため、従業員・企業双方の負担が軽減されるだけでなく、年末調整にかかる工数も削減できます。
年末調整を電子化するデメリット
年末調整の電子化にはメリットだけでなく、以下のようなデメリットもあります。
・申告書作成のための適切なソフトウェアを選定する必要がある
・自社が導入している給与システムと連携可能であるかなど、電子化に対応する環境を整えるための準備が必要
・従業員へ電子化に関するルールを周知するとともに、電子化の概要や手続き方法などをレクチャーする必要がある
・電子化が中途半端な状態のまま年末調整を行うと、紙ベースと電子データが混在した状態で作業しなければならないため、業務効率が逆に落ちてしまう可能性がある
年末調整を電子化するためには
前述のとおり、年末調整の手続きを電子化するには、従来の業務フローの変更、新たな環境の構築、ルールの策定、従業員の協力など、クリアすべき要素が複数存在します。そこでここからは、年末調整を電子化する際の手順を以下3つのステップに分けて解説します。
1.税務署への承認申請書提出
2.給与システムの改修
3.従業員に理解を促す
事前の準備次第で年末調整の手続きを電子化した際に得られるメリットの大きさが左右されるため、ひととおりチェックしておきましょう。
税務署への承認申請書提出
従業員から年末調整申告書を電子データで受領するためには、従来、「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」を所轄の税務署へ提出して承認を受ける必要がありました。しかしながら、2021年4月1日以降に従業員からデータで年末調整申告書を受領する場合には申請不要です。
ただし、従業員から年末調整申告書および控除証明書などを電子データで受け取るには、以下の要件を満たす必要があります。
・電磁的方法による提供を受けるために必要な措置を講じる(電子データの受け取り方法を定めておく)
・電磁的方法により提供する者の氏名を明らかにするために必要な措置を講じる(提出された電子データの提出元が従業員本人であることを確認するための措置)
給与システムの改修
従業員から年末調整申告書や控除証明書などをデータで受け取ることができれば、年末調整にかかる作業を大幅に効率化させやすくなりますが、そのためには給与システムとの連携面をチェックする必要があります。データで受け取った年末調整申告書や控除証明書などをそのままデータで処理して年末調整を進める場合、給与システムにインポートする必要があるからです。
導入している給与システムによっては、そのままではインポートできず、入れ替えや改修が必要なケースもあります。民間の給与システムを導入していない場合は、国税庁が無償で配布する年調ソフトにデータのインポート機能が標準で搭載されているため、検討してみるとよいでしょう。
従業員に理解を促す
年末調整の電子化を効率よく進めるためには、企業側だけでなく従業員の協力が非常に重要です。とくに保険料の控除証明書のデータ取得などは従業員自身で作業する必要があるため、以下のポイントを参考にしながら従業員への周知と理解を促しましょう。
・年末調整電子化の概要と、従業員側のメリットを説明する
・電子化における手続きの流れやデータの取得方法などをレクチャーする
・年末調整実施時の電子化に伴う社内ルールやマニュアルを策定し、従業員に共有する
年末調整を電子化するために従業員からの同意は必須ではありませんが、各従業員が電子化に全面的に協力してくれれば企業側が得られるメリットも大きくなるため、従業員の目線に立った準備を念入りに行うことをおすすめします。
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年末調整では、従業員との情報のやりとりを含め、クリアすべき工程がいくつも存在するため、電子化により業務効率化を図るのがおすすめです。ただし、全面的な電子化を進めるためには、給与システムが電子データのインポートに対応しているかどうかを確認する必要があります。対応していない場合は、システムの入れ替えも視野に入れる必要があるため、専門家の手を借りるのもひとつの方法でしょう。
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