AI開発の発注に必要なものとは?準備すべき書類・要件定義書の作り方を解説

更新日:2026.05.26

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AI開発を外部に発注したいものの、「何を準備すればよいのかわからない」「どこまで要望を伝えればいいのか整理できていない」と悩んでいる人も多いでしょう。こうした課題の多くは、発注前に「AI導入の目的」「依頼する業務の範囲」「予算やスケジュール」などが整理されていないことが原因です。準備が不十分なまま発注してしまうと、開発会社との認識にズレが生じやすくなります。

そこで本記事では、AI発注の前に準備すべき具体的な項目と、発注時に必要となる「要件定義書」の役割について分かりやすく解説します。これからAI開発の外注を検討している方や、初めてAI開発を発注する方はぜひ参考にしてください。

この記事でわかること
  • AI開発の発注前に整理すべき内容
  • 要件定義書とは?含めるべき具体項目
  • 発注時に伝えるべき情報と必要なもの

AI開発の発注に必要なものとは?

AI開発の発注に必要な3つの要素

AI開発を発注する際には、事前にいくつかの情報を整理しておく必要があります。準備が不十分なままAI開発会社へ相談してしまうと、発注後に「想定していた機能が実装されない」「期待した成果が得られない」といった認識のズレが生じる原因にもなります。

そのため、AI発注を検討する段階で、以下のような資料やデータを揃えておくことが重要です。

発注前に揃えるべき書類・データ
  • AI導入の目的や課題整理資料:AIで何を解決したいのか、業務課題や目的を共有するために必要
  • 業務フロー資料:現状の業務内容を把握し、AI化できる範囲を整理するために必要
  • 既存システムの概要資料:AIと連携するシステム環境を確認するために必要
  • 活用予定のデータ:AI学習や分析に必要なデータの有無や品質を確認するために必要
  • 予算・スケジュール案:開発規模や進行計画を検討するために必要
  • 過去の施策資料:これまでのAI導入や業務改善の取り組みを把握し、提案精度を高めるために必要

事前に整理しておくことで、AI開発会社との認識ズレを防ぎ、提案の精度や見積もりの妥当性も判断しやすくなります。特に複数のAI開発会社へ相談する場合には、条件をそろえて共有することで、提案内容や見積もりを比較しやすくなります。

そして、AI開発会社に任せる業務内容や開発要件を整理した資料が「要件定義書」です。発注時に要件定義書を作成しておくと、発注側の目的や必要な機能、条件などをAI開発会社へ正確に伝えやすくなります。次の章では、AI発注で重要な要件定義書の役割について解説します。

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AI開発に必要なもの

AI開発に必要なものは、大きく分けると「解決したい課題」「AIに処理させたい業務」「利用できるデータ」「開発後の運用体制」の4つです。たとえば、問い合わせ対応を効率化したいのか、需要予測を行いたいのか、不良品検知を自動化したいのかによって、必要なAIの種類や開発方法は大きく変わります。そのため、まずはAIを使う目的ではなく、現在どの業務でどのような困りごとがあるのかを整理することが大切です。

また、AIはデータをもとに判断や予測を行うため、利用できるデータの有無も重要です。過去の問い合わせ履歴、販売データ、画像データ、業務ログなどがある場合は、どのような形式で、どの程度の量があり、どこに保管されているのかを確認しておきましょう。データが不足している場合でも、開発会社に相談することで、データ収集の方法や段階的な開発計画を提案してもらえる場合があります。

AI開発とAIコンサルの違い

AI開発とAIコンサルの違い
項目 AI開発 AIコンサル
主な役割 AIシステムやAIモデルを実際に作る AIをどう活用すべきか考える
相談するタイミング 作りたいものがある程度決まっているとき 何から始めるべきか分からないとき
内容 設計、開発、テスト、運用環境の構築 課題整理、活用方法の提案、導入計画の作成
成果物 AIチャットボット、予測システム、画像認識AIなど AI導入方針、要件整理、開発計画など
向いているケース 具体的な業務課題や作りたい機能がある場合 AIで何ができるか検討したい場合

AI開発とは、実際にAIシステムやAIモデルを設計・構築し、業務で使える形にすることを指します。たとえば、社内文書を検索できるAIチャットボットを作る、画像を判定するAIを開発する、売上予測システムを構築するなどが該当します。開発会社は、要件に沿ってAIモデルの選定、データ処理、システム実装、テスト、運用環境の整備などを行います。

一方でAIコンサルは、AIをどの業務に活用すべきか、導入によってどのような効果が見込めるか、どの開発手法が適しているかを整理・提案する役割です。まだ具体的に作りたいシステムが決まっていない場合や、自社の業務にAIが使えるか判断できない場合は、まずAIコンサルに相談するのが有効です。反対に、作りたいものや対象業務がある程度決まっている場合は、AI開発会社に要件を伝えて相談するとスムーズです。

AI開発の発注で重要な「要件定義書」とは

要件定義書の役割

AI開発では、「要件定義書」が非常に重要です。AI開発における要件定義書とは、簡単にいえば「どんなAIを、どの条件で作るか」をまとめた資料です。この内容が曖昧だと、開発会社によって提案内容や見積もりが大きく変わってしまいます。また、開発途中で「想定していた仕様と違う」という認識ズレも起こりやすくなります。

特にAI開発は、通常のシステム開発よりも確認事項が多くなります。たとえば、「どのデータを使うのか」「どの程度の精度を目指すのか」「AIが判断できなかった場合はどうするのか」など、運用面まで含めて整理が必要です。事前に要件をまとめておくことで、見積もり比較もしやすくなり、開発後のトラブルも減らしやすくなります。

AI開発の要件定義書に含まれる内容

要件定義書には、開発の背景や目的、予算など開発会社に伝えるべき重要な情報を記載します。これらの情報を整理しておくことで、開発会社は目的や条件を理解しやすくなり、より具体的な見積もりや提案を行うことができます。

一般的には、次のような項目を整理します。

AI開発発注時の要件定義書に含まれる内容
  • 開発目的・背景
  • 対象業務・利用シーン
  • 必要機能
  • 利用データ
  • システム連携・環境
  • セキュリティ要件
  • 予算・スケジュール

以下では、それぞれの項目について解説します。

開発目的・背景

要件定義書を作る際は、まず「なぜAI開発を行うのか」を明確にします。たとえば「問い合わせ対応に時間がかかっている」「熟練者の判断に依存している」「需要予測の精度を高めたい」など、現在の業務上の課題を具体的に記載します。単に「業務効率化したい」と書くよりも、どの業務で、どのような負担や損失が発生しているのかを説明したほうが、開発会社は適切な提案をしやすくなります。

また、AI導入によって達成したい状態も整理しておくとよいでしょう。たとえば「問い合わせ対応時間を短縮したい」「確認作業を自動化したい」「担当者ごとの判断のばらつきを減らしたい」といった形です。目的と背景が明確であれば、開発する機能の優先順位も決めやすくなります。

対象業務・利用シーン

AIをどの業務で、誰が、どのように使うのかも要件定義書記載しましょう。たとえば、営業担当者が商談前に顧客情報を確認するために使うのか、カスタマーサポート担当者が問い合わせ回答を作成するために使うのか、工場の検品担当者が画像判定に使うのかによって、必要な機能や画面設計は変わります。

利用シーンを具体的に整理することで、開発会社は実際の業務に合ったAIシステムを設計しやすくなります。利用者のITリテラシー、使用頻度、利用端末、業務フローの中でAIを使うタイミングなども伝えておくと、導入後に使われやすいシステムになりやすいです。

必要機能

AIシステムにどのような機能を持たせたいのかも整理します。たとえば、文章生成、検索、分類、予測、画像認識、音声認識、レポート作成、外部システムとの連携などが考えられます。機能を伝える際は、「何ができる機能か」だけでなく、「どの業務のどの場面で使う機能か」まで説明すると、より正確に伝わります。

このとき、すべての希望機能を同じ優先度で並べるのではなく、必ず必要な機能と、できれば追加したい機能を分けることが重要です。AI開発では、機能が増えるほど費用や開発期間も増えやすくなります。優先順位を整理しておくことで、予算やスケジュールに合わせた現実的な開発計画を立てやすくなります。

利用データ

AI開発に使えるデータの種類、量、形式、保管場所なども要件定義書に記載します。たとえば、過去の問い合わせ履歴、顧客情報、営業履歴、画像データ、音声データ、CSVファイル、PDF、社内マニュアルなどが該当します。AIはデータの内容や品質によって精度が変わるため、どのようなデータがあるのかを事前に把握しておくことが大切です。

また、データに個人情報や機密情報が含まれている場合は、その取り扱いについても整理が必要です。外部にデータを渡せるのか、匿名化が必要なのか、社内環境内で処理する必要があるのかによって、開発方法が変わります。データの有無だけでなく、利用条件もあわせて伝えることで、後のトラブルを防ぎやすくなります。

システム連携・環境

開発するAIを既存のどのシステムと連携する必要があるのかも記載しておくと、開発会社もスムーズに開発できます。たとえば、CRM、SFA、ERP、チャットツール、社内データベース、基幹システム、クラウドストレージなどとの連携が考えられます。既存システムと連携する場合は、APIの有無や利用制限、認証方式なども確認しておくとスムーズです。

また、AIシステムをクラウド環境で利用するのか、社内サーバーで運用するのか、特定の端末やネットワーク制限があるのかも重要です。環境条件によって、開発できる構成やセキュリティ対策、運用コストが変わります。社内の情報システム部門と連携しながら、事前に確認しておくとよいでしょう。

セキュリティ要件

セキュリティ要件では、データの取り扱い、アクセス権限、ログ管理、暗号化、外部サービスの利用可否などを整理します。AI開発では、業務データや顧客情報を扱うことが多いため、セキュリティ条件を曖昧にしたまま進めると、開発後に社内承認が下りない可能性があります。

特に、生成AIやクラウドAIサービスを利用する場合は、入力データが外部に送信されるのか、学習に使われる可能性があるのか、保存期間はどの程度かといった点を確認する必要があります。自社のセキュリティポリシーや法務・情報システム部門のルールを事前に共有しておくことで、開発会社も適切な設計をしやすくなります。

予算・スケジュール

想定している開発費用の上限や、いつまでに導入したいのかも忘れずに記載しましょう。AI開発は、要件やデータの状態によって費用が大きく変わるため、予算感を伝えることで、開発会社は現実的な提案をしやすくなります。予算が限られている場合でも、まずは小さく検証する方法や、段階的に機能を追加する方法を提案してもらえることがあります。

スケジュールについては、社内稟議、データ準備、開発、テスト、運用開始までの流れを考慮する必要があります。特にAI開発では、データ確認や精度検証に時間がかかる場合があります。希望納期だけでなく、社内でいつまでに判断が必要なのか、いつから本格運用したいのかも伝えておくと、計画が立てやすくなります。

発注時に伝えておくと制作がスムーズになる情報

発注時に伝えておくと制作がスムーズになる情報

以下の項目は必須ではありませんが、事前に共有しておくことで外注の進行が大きくスムーズになります。

発注時に共有しておくとスムーズになる情報
  • 現在の業務フロー
  • 利用予定のシステム
  • 社内セキュリティ要件
  • 社内の推進体制

現在の業務フロー

現在の業務フローを伝えることで、開発会社はAIをどこに組み込めば効果的かを判断しやすくなります。たとえば、問い合わせ対応であれば、問い合わせの受付、内容確認、回答作成、承認、送信、履歴保存までの流れを説明します。業務の全体像が見えると、AIで自動化すべき部分と、人が判断すべき部分を切り分けやすくなります。

また、現在の業務で時間がかかっている作業、ミスが起きやすい作業、属人化している作業を共有することも重要です。AIはすべての業務を置き換えるものではなく、特定の課題を解決するために活用するものです。現場の流れを具体的に伝えることで、実際に使いやすいAIシステムになりやすくなります。

利用予定のシステム

AIを導入する際に、既存システムと連携する予定がある場合は、利用中のシステム名や用途を伝えておきましょう。たとえば、顧客管理システム、販売管理システム、チャットツール、社内ポータル、クラウドストレージなどです。AIシステム単体で使うのか、既存システムの中に組み込むのかによって、開発内容は大きく変わります。

利用予定のシステムが明確であれば、開発会社はAPI連携の可否やデータ取得方法を確認できます。反対に、連携条件が後から判明すると、追加開発やスケジュール変更が発生する可能性があります。発注前の段階で、社内で利用している主要システムを整理しておくことが大切です。

社内セキュリティ要件

社内セキュリティ要件は、発注前に必ず共有しておきたい情報です。AI開発では、社内データや顧客情報を扱うケースが多いため、情報の持ち出し可否、外部クラウドサービスの利用可否、アクセス制限、ログ管理、データ保存場所などを確認する必要があります。これらの条件が後から判明すると、開発方針そのものを見直すことになる場合があります。

特に大企業や個人情報を扱う企業では、情報システム部門や法務部門の確認が必要になることもあります。発注担当者だけで判断せず、社内ルールを早めに確認しておくと安心です。開発会社にも事前に共有することで、セキュリティ要件を満たした提案を受けやすくなります。

社内の推進体制

AI開発をスムーズに進めるには、社内の推進体制も重要です。発注担当者だけでなく、実際にAIを使う現場担当者、データを管理している部門、情報システム部門、意思決定者など、関係者を整理しておきましょう。AI開発では、業務内容の確認やデータ提供、精度検証などで複数の部署の協力が必要になることがあります。

推進体制が曖昧なままだと、確認や承認に時間がかかり、開発が停滞する原因になります。誰が要件を決めるのか、誰がデータを提供するのか、誰が成果物を確認するのかを明確にしておくことで、開発会社とのやり取りもスムーズになります。

AI開発の要件定義書を作るときのポイント

AI開発の要件定義書 作成時のチェックリスト

AI開発の要件定義書を作る際は、開発内容や費用を形式的に記載するだけでなく、実際の運用を想定して具体的に作成することが大切です。要件定義書は、契約時だけ確認するものではなく、発注後の業務の進め方を支える基準になります。ここからは、要件定義書を作るときのポイントを整理します。

目的ではなく「課題」を明確にする

AI開発の要件定義書を作る際は、「AIを導入したい」という目的だけでなく、解決したい課題を明確にすることが大切です。AIは手段であり、導入そのものがゴールではありません。たとえば「問い合わせ対応をAI化したい」ではなく、「問い合わせ件数が増え、担当者の回答作成に時間がかかっている」という課題を示すことで、より適切な解決策を検討できます。

課題が明確であれば、AIが本当に必要なのか、どの範囲を自動化すべきか、どのような成果指標を設定すべきかも判断しやすくなります。場合によっては、AI開発ではなく既存ツールの活用や業務フローの改善で解決できることもあります。開発会社に相談する際は、実現したい機能よりも、まず困っていることを具体的に伝えることが重要です。

「できれば欲しい機能」と「必須機能」を分ける

要件定義書では、必要な機能をすべて並べるだけでなく、必須機能と希望機能を分けて整理しましょう。必須機能とは、AIシステムを運用するうえで欠かせない機能です。一方で、できれば欲しい機能は、あると便利だが初期開発では必須ではない機能を指します。この区別ができていないと、開発範囲が広がりすぎて、費用や期間が膨らみやすくなります。

最初から多機能なAIシステムを目指すよりも、まずは重要な課題を解決できる最小限の機能で開発し、運用しながら改善していく方法が現実的です。AI開発では、実際に使ってみて初めて見えてくる課題もあります。優先順位を明確にすることで、無理のない開発計画を立てやすくなります。

利用できるデータを事前に整理する

AI開発では、利用できるデータを事前に整理しておくことが非常に重要です。データの種類、量、形式、保存場所、更新頻度、欠損や重複の有無などを確認しておくことで、開発会社はAIの実現可能性や精度の見込みを判断しやすくなります。データが十分にあると思っていても、実際には形式がバラバラだったり、必要な情報が不足していたりすることもあります。

また、データの利用権限や個人情報の有無も確認が必要です。AI開発に使えるデータかどうかは、技術面だけでなく、契約や社内ルールにも関わります。事前にデータを整理しておけば、開発開始後の手戻りを減らし、スムーズに検証を進めることができます。

運用面まで考慮する

AI開発では、システムを作って終わりではなく、運用面まで考えることが大切です。AIは導入後も、利用状況の確認、精度の改善、データ更新、エラー対応などが必要になる場合があります。誰が運用を担当するのか、どの頻度でデータを更新するのか、問題が起きたときに誰が対応するのかを事前に考えておきましょう。

また、現場で使われ続けるためには、使いやすさや業務フローへの組み込み方も重要です。どれだけ高性能なAIでも、操作が難しかったり、現場の業務に合っていなかったりすると定着しません。開発段階から運用後の使い方を想定しておくことで、実用性の高いAIシステムを目指せます。

セキュリティ・社内ルールを共有する

AI開発を発注する際は、セキュリティや社内ルールを必ず開発会社に共有しましょう。AIシステムでは、顧客情報、取引情報、社内文書、業務ログなど、機密性の高いデータを扱うことがあります。そのため、どのデータを外部に渡せるのか、クラウドサービスを利用できるのか、データをどこに保存できるのかといった条件を明確にしておく必要があります。

社内ルールを共有せずに開発を進めると、完成後に情報システム部門や法務部門の承認が得られず、導入できないという事態になる可能性があります。発注前の段階でセキュリティ条件を整理し、必要に応じて関係部署にも確認しておくことが大切です。開発会社に早い段階で共有することで、社内基準を満たした安全なAI開発を進めやすくなります。

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AI開発の発注を成功させるためには、発注前に「要件定義書」という形で要望を整理しておくことが重要です。契約内容や予算などを明確にすることで、コミュニケーションが円滑になります。必要なものを把握したうえで、自社に合った開発会社を選びましょう。

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