CRM導入のために事前に押さえておきたい分析手法のポイントについて

更新日:2017年04月02日 | 公開日:2017年04月02日

CRMによる分析の活用

CRMを導入した時には、社内の誰もが「これで我が社の顧客管理システムが劇的に変わる!」と期待するものです。しかし、残念ながらCRM導入の多くのケースでは「期待通りだ!」という感想は少なく、「こんなはずではなかった」という声がよく聞こえてきますが、実はその原因ははっきりしています。

その原因とは、CRMを単なるデータベースを活用した顧客情報蓄積の自動化ツールととらえてしまって、集まってくる顧客データを積極的に「分析」するという積極的な視点が抜け落ちていたためです。

「顧客管理」には顧客データを蓄積するという基礎作業の他に、顧客データを自社のマーケティング戦略に基づいて積極的に分析、活用していくのだという視点が欠かせません。

この記事ではCRMで蓄積されるデータをどのように分析・活用していくかに焦点を当て、顧客分析としてよく用いられるRFM分析、顧客との長期的な関係を重視するCRM、最近話題のビッグーデータの順番で解説します。

CRMとはどんなマーケティングなのか ~ 顧客管理には「分析」が必須

CRM(Customer Relationship Management)は、C=カスタマー(顧客)とのR=リレーション(関係)をM=マネージメント(管理)するための手法です。

ここでいう「管理」のカギは「顧客の育成と維持」となりますが、この「顧客の育成と維持」はCRMを導入したからといって自動的に実現できるものではありません。確かにCRMは顧客データを自動的にも効率よく蓄積していきますが、CRMにおいて重要なのは蓄積されたデータの分析・活用となります。

新しいシステムの導入=自動化という点のみにフォーカスしてしまうと、最近注目を浴びているマーケティングオートメーション=MA(Marketing Automation)と混同されることが多いので注意しましょう。マーケティングオートメーションは、プロセス的には顧客を育てるという部分でCRMと重なる部分が多いです。

しかしその目的はあくまでも「自動化」にとどまり、そもそもどんな顧客を育成したいのか、どんな顧客管理をしたいのかという自社の顧客戦略を掘り下げるわけではありません。「分析」のないところにCRMはないのです。

最近注目のMAをCRMと混同してしまっている担当者の方やウェブサイトの記事なども多いので、ここでCRMとよく似たMAについて簡単に確認しておきましょう。

CRMとMAは似て非なるもの 〜 CRMの目的は顧客管理の自動化ではない

CRMを検討する際に最近良く名前の上がるマーケティングオートメーション(MA)は、2000年代にアメリカで普及し始めたマーケティングを自動化するテクノロジーです。ポイントはあくまでも、それまで手作業でやっていたマーケティングプロセスを自動化して効率化したりや、手作業では不可能だった膨大なマーケティングプロセスを「自動化」するところにあります。

例えば、このようなMAツールがあります。

【主なマーケティングオートメーションツール】

IBM Marketing Cloud
Oracle Marketing Cloud
Salesforce.com Pardot
SATORI
Marketo
Adobe Marketing Cloud
Oracle Responsys Marketing Suite
HubSpot
B→Dash
Synergy!LEAD
SHANON MARKETING PLATFORM
Kairos3
カスタマーリングス
xcross data
mabot
Dr.Marketing
Hot Profile
SAS Marketing Automation
Experian Cross-Channel Marketing Platform (CCMP)
Infusionsoft
LeadLander
SALESmanago
act-on

MAで自動化される部分は大まかにいって下記の3つのフェーズになります。これら3つのフェーズはCRMと重なっています。

1. 見込み客を集める = リードジェネレーション、
2. 見込み客を選別する = リードスコアリング(リードクオリフィケーション)
3. 見込み客を育てる = リードナーチャリング

日本では、2014年ころから米国で著名なMAベンダーの参入が相次ぎ、国産のMAツールも開発され、一種のブームのような状況が続いています。

注意しなくてはいけないこととして、これらの製品の中には、マーケティングオートメーションツールとして紹介される場合もあればCRMとして紹介される製品もあるということです。

もともと隣接分野なのでCRMにMA機能をもたせたり、MA機能にCRM的な顧客管理機能をもたせたりする場合もあるのです。

しかし、MAはあくまで顧客管理プロセスを「自動化することがメイン」で、その目的は自動化されたデータを営業部門に渡すことです。これに対してCRMは、「顧客満足度の向上が究極の目的」です。

この違いをおさえていないと、CRMを導入するつもりだったのに、途中からMAを導入する話に変わってしまい、当初意図していたような結果が得られない、という事態にもなりかねません。

「マーケティングオートメーション」とCRMの違い、使い分けなどについては、このアイミツまとめの「CRM導入を成功させるために必要なマーケティング戦略とは?」もぜひご参照ください。

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ここでは「CRMはMAと違って優良顧客をじっくりと分析し、顧客満足を高める目的で管理を行うしくみ」なのだ、ということを確認しておいてください。そのためには顧客の「分析」が欠かせません。

それでは、CRMではどのような「分析」が必要なのかについて、3段階に分けてみてみましょう。

1. 新規顧客の獲得における「分析」=「優良顧客の定義」の必要性

新規顧客を獲得するためにCRMでは何を「分析」するのでしょうか? 既存顧客の維持であれば答えは比較的簡単です。既存顧客の問題点を洗い出して、最適なフォローや提案などのアプローチをすればよいわけです。しかし、まだ顧客として何のデータも手元にない状態でどんな分析ができるのか、ここがCRMにおける新規顧客獲得分析のポイントとなります。

一見難しそうに見えますが、これはデキる営業マンの営業活動と対比するとわかりやすくなります。新人のOJTのように、とにかく訪問先に飛び込み営業をかけて営業マンを訓練することとは違って、熟練の営業マンはこれまでの経験からまったくの初訪問であっても「この顧客は確度が高そうだ」「この顧客はまだ無理そうだ」という判断をしています。

では、熟練の営業マンは、レッドオーシャン化したライバルとの戦いの中でどんな基準で新規顧客候補を「分析」しているのでしょうか?

ここでデキる営業マンが行っているのは「優良顧客の定義」です。営業マンの過去の経験から商談成功パターンを思い出して、「この人はいけそうだ!」という判断を下しているわけです。この作業は、過去の経験(CRM顧客データベース)から似た人を探し(CRM顧客データベースを検索する)見込み客で角度の高い人を判別する(CRMデータベースからリストを抽出する)という作業に他なりません。

CRMでは、この作業を営業マンの個人の経験やデータだけでなく、下記のように全社的な経験やデータから実行します。

■ 全社規模のCRM顧客データベースを整備する
          ↓
■ 自社のノウハウに基づいてCRMデータベースを検索する
          ↓
■ 営業マンごとに最適な顧客リストを抽出する

新規顧客獲得段階のCRM分析とは、デキる営業マンの顧客分析ノウハウを「見える化」「仕組み化」して全社的に分析結果を共有する仕組みであると言えます。

新規顧客の分析例=どのようにして「優良顧客の定義」を行うか

できる営業マンのノウハウの「見える化」「仕組み化」は、まず営業マンノウハウの共有から始まります。営業会議で成功体験を共有したりすることは営業部門でも日常的に行っているはずですが、「優良顧客の定義」にまで落とし込むためには、マーケティング部門の協力が不可欠です。

マーケティング部門は、営業データだけでなく、展示会来訪者の行動パターンや、質問、資料請求してくれた人の行動パターンなど、様々なチャネルの行動履歴データを保有しています。そうしたデータの中からある一定の行動パターンを抽出していき、営業マンが再度抽出されたパターンに合う顧客にアプローチすることで、「優良顧客の定義」の精度が増していきます。

また、Webでの行動履歴もこうした営業部門とマーケティング部門の共同作業の中に取り入れるべきです。
顧客に送信したダイレクトメールに関して「メールを開封したかどうか」「商品説明へのリンクをクリックしたかどうか」「商品説明を読んだ後に実際に購入したか/しなかったか」などの行動履歴を取得して、仮設を検証したり補強したりします。

こうした行動履歴のパターン化=モデリングによって、まだ成約していない見込み客に対する成功率を推定し、有効なアプローチを考え営業部門がそれを実行し、また検証するというPDCAサイクルを回すことによって「優良顧客の定義」が可能になっていきます。

2. 顧客の維持における「分析」=「RFM分析」の必要性

今見てきた新規顧客の「分析」と違い、いったんCRMのデータベースに顧客データが格納された後は、顧客データの「分析」は比較的容易です。

具体的には、データベースに格納された顧客の「最新購買日」「購入頻度」「購入金額」を基にしたRFM分析が使われることが多いです。

これは、RFM分析ではすでに購入したことのあるお客様データの中から優良顧客を選別するため、手持ちのデータのみで分析に着手できるからです。

パレートの法則という全体の売上の8割が優良顧客の2割から生み出されているという公式が、顧客管理においてもあてはまるので、売上増大に即効性があります。 営業マンのマンパワーも限られているので、効率よく優良顧客を選別してアプローチすることは、「顧客の維持」に欠かせません。

「RFM分析」の分析例=どのようにして「顧客の維持」を行うか

RFM分析とは、Recency=「最新購買日」、Frequency=「頻度」、Monetary=「購入金額」の3つの指標で既存顧客をグループピングし、最適な施策を探る分析手法です。

Recency=「最新購買日」の分析で何が見えてくるか

たとえ「購入頻度」が少なく、「購入金額」も少額のものが多いとしても、「最新購買日」が現在の日付に近い顧客は、この後のアプローチ次第で「購入頻度」や「購入金額」を増加させてくれる可能性が高いです。

製品を購入したという高揚感、製品を実際に使い始めたという購入者の実体験がホットなうちに、関連商品を勧めたり(クロスセル)、上位製品を勧めたり(アップセル)することで「購入金額」を増加させることができます。

また「最新購買日」が古くなりすぎないように、自社の商品ライフサイクルをきちんと把握して、買い替え時記事他社製品に流れないように適切にアプローチすることで「購入頻度」を上げていくことが可能です。

Frequency=「購買頻度」の分析で何が見えてくるか

「最新購買日」はかなり前であっても、以前は「購入頻度」がけっこうあった、という顧客の場合、「購入頻度」が落ちたことに何か理由があるはずです。買い替え時にライバル製品に流れてしまったのかもしれませんし、もしかすると製品に対して重大な不満を持っていて、それを伝えることなく購入を控えているのかもしれません。

こうした場合には、営業マンの適切なフォローによって再び「購入頻度」が増す可能性がありますので、ぜひこうした顧客を抽出してフォロー施策を打つべきです。

また、逆のケースで「購入金額」は高いけれども、「購買頻度」が極端に少ないという顧客の場合、製品を買うたびに自社の製品、他社の製品を行ったり来たりしている可能性もあります。金額の高い製品を購入してくれているわけですから、自社製品に対する評価はある一定水準を上回っているはずなので、お得意様になってもらうために、「購入金額」が高いけれど「購買頻度」が低い顧客に、割引クーポンを発行するなどの積極的な囲い込み施策などを取るべきです。

Monetary=「購買金額」の分析で何が見えてくるか

「最新購買日」「購入頻度」ともに申し分ない水準なのに、「購入金額」で目立ったところのない顧客という層も一定数います。こうした顧客は自社の製品に対する満足度自体は高いわけですので、上位製品を勧める(アップセル)ことで「購入金額」を増加させることができます。

上位製品があることを知ってはいるけれど、詳しくは知らないだけというケースも多く、営業マンが適切なアプローチをしたりダイレクトメールを送ったりするだけで効果が出る場合も多いです。

また、「購買金額」は高かったけれど「最新購買日」「購入頻度」が低い場合の例として、適切なフォローやリピーター施策が弱いということがあります。新製品の発表会のお知らせや、イベントに招待するなど「購買金額」の高い顧客はお得意様として特別扱いするなどの施策が有効です。

【注意点!】RFM分析で抜け落ちてしまう視点がある!

以上、顧客の維持における「分析」の要となる「RFM分析」について解説してきましたが、CRMにおいてRFM分析は取扱に注意すべき分析手法でもあることを忘れないようにしましょう。

RFM分析は一見すると、データを的確に3つの軸から「分析」し、非常にわかりやすく効果的な施策につなぐことが可能です。しかし、よく見るとわかるようにRFM分析では「最新購買日」「購入頻度」「購入金額」を軸に「優良顧客を抽出してさらに優良顧客化していく」という流れになっています。

優良顧客を育てる(顧客育成)という意味では良いのですが、一方でこの時に抽出されなかった顧客は切り捨てられてしまいます。CRMはすべての顧客に対して顧客満足度を高めて、現在「最新購買日」「購入頻度」「購入金額」のどの軸からも優良顧客として抽出されなかった「潜在顧客」「見込み客」に対しても「顧客育成」を行います。

RFM分析で切り捨てられてしまったこれらの「潜在顧客」「見込み客」に対するアプローチとして、次の「LTV的視点」が必要となります。

3. 顧客の育成における「分析」=「LTV的視点」の必要性

RFM分析は「優良顧客を抽出してさらに優良顧客化していく」ことに効果のある方法ですが、一方でまだ育っていない見込み客を切り捨ててしまう側面を持っています。

つまり、「潜在顧客」「見込み客」の「顧客育成」にはRFM分析は使えないのです。顕在化した顧客(「最新購買日」「購入頻度」「購入金額」からピックアップできる顧客)はすでに他社の奪い合いのレッドオーシャンの中にいるといえます。

今後顧客シェアを拡大していくためには、こうした顧客を維持するとともに、積極的にまだ見えてきていない「潜在顧客」「見込み客」を発掘して顧客に育てていくという視点が欠かせません。それが「LTV(Life Time Value=顧客生涯価値)的視点」の必要性となります。

LTV(Life Time Value=顧客生涯価値)とは一人の顧客が「長期的な取引期間」を通じて企業にもたらす価値を表す指標です。 RFM分析では、「最新購買日」「購入頻度」「購入金額」から優先的にアプローチするべき優良顧客を抽出しましたが、LTVの目的は必ずしも優良顧客を抽出することではありません。むしろ、RFM分析で抽出されずに切り捨てられてしまった側の顧客の価値を、「長期的な取引期間」において最大化することが目的となります。

「LTV的視点」を持った分析例=どのようにして「顧客の育成」を行うか

「長期的な取引期間」における顧客の価値の最大化とは「購入金額」と「購入頻度」(≒利益)の掛け算の合計値と言ってもよいでしょう。RFM分析で抽出されることがなかった顧客であっても、アプローチ次第でこの「価値」=利益を最大化することに貢献できます。そのためには、より深く嗜好を把握する必要がありますし、顧客の行動特性を理解する必要があります。

行動特性を理解するためには購入動機や購買傾向を分析し、「見込み客」⇒「既存客」⇒「リピート客」⇒「ファン客」(ロイヤリティーを持った顧客)などの各顧客層に合わせたきめ細かな「分析」を行い、育成・維持の施策を決定していきます。

そうすれば、直近のRFM分析によって抜け落ちてしまう「優良顧客」以外の顧客が何をどのように考え、次のステップに進んだか、離脱してしまったかを把握することができます。各段階における顧客の購入動機はさまざまです。顧客が現在属している段階や、属性、それぞれの段階における購買履歴や製品に対する感想などから購入動機を推定し、顧客層ごとに育成・維持施策を実施することが重要になります。

ビッグデータ分析は「優良顧客の定義」「RFM分析」「LTV的視点」に貢献することができる

最近の顧客分析で見逃せない大きな話題の一つがビッグデータの活用です。

ビッグデータを説明するときの例としてよく出てくるのが、「紙おむつを買った人は缶ビールを買うことが多い」ということがビッグデータ分析で明らかになった、というものです。これは、赤ちゃんの紙おむつはママが買っているのではなく、パパが週末にまとめて買っていることが多いという発見に基づきます。

赤ちゃんのお世話で忙しいママに変わって、週末パパが車で大型スーパーにやってくる。そして、紙おむつを買うついでに自分のために缶ビールもかごに入れる、という購買パターンを膨大なデータから抽出して分析した結果見えてきたものです。実際に、紙おむつの横に缶ビールを置くことで両方の売上が上がったと言われています。

こうした顧客の消費行動パターンの分析は、CRMの顧客分析にも大きな影響を与え、ビッグデータ分析はCRMの顧客分析の中に積極的に取り入れられるようになっています。

ここでは、これまで解説してきたCRM分析の重要な視点「優良顧客の定義」「RFM分析」「LTV的視点」について、ビッグデータがどのように役に立つかを整理します。

ビッグデータは新規顧客の獲得における「分析」=「優良顧客の定義」に使える

ビッグデータは、膨大なデータを分析することでこれまで明らかになっていなかった顧客行動パターンを抽出することができます。先程の「紙おむつと缶ビール」のように、これまで見えてこなかった意外なデータが大量のデータ抽出から明らかになります。

CRMに応用するやり方としては、例えば、購買にまでは至らないけれどネットにてコンテンツやサンプル請求などを行ってくれるユーザーの行動履歴を分析することなどが可能です。

どのコンテンツとどのコンテンツをみた後に資料請求が多いか、とか、どのコンテンツを見た後に離脱してしまったかなど、通常のアクセス解析か分かるデータをより広範に深く分析することによって、アクセス解析からは見えてこないユーザーの行動パターンが発見できます。

「新規顧客の獲得における「分析」=「優良顧客の定義」の必要性」にて、CRMで新規顧客を獲得するために営業マンの経験データを全社的に共有するというお話をしましたが、ビッグデータ分析を使えば、さらにWebへのアクセスデータやツイッターでのつぶやき、問い合わせ履歴や、苦情処理などのデータからも熟練の営業マンの経験値に匹敵する見込み客探しのヒントが得られるというわけです。

CRMでは、まだはっきりとしない見込み客にアプローチすることが必要です。この時「優良顧客の定義」ができていれば無駄なアプローチを減らすことができます。CRMの新規顧客の確度を向上させるためにビッグデータ分析は大きく貢献します。

ビッグデータは顧客の維持における「分析」=「RFM分析」の精度を高める

RFM分析では「最新購買日」「購入頻度」「購入金額」を軸に優良顧客を抽出しますが、ビッグデータ分析では、その際に基本指標である「最新購買日」「購入頻度」「購入金額」だけでなく、購入に至った経緯や、購入後の使用感、要望、苦情、さらに購入金額に関する満足感(高い、安い)などのヒアリング・アンケートデータなども紐付けることができます。

もちろん、そのためには従来型のRFM分析の「最新購買日」「購入頻度」「購入金額」の指標以外のデータを顧客と一意に紐付けるためのデータの仕様と、データベースのテーブル設計に注意を払う必要があります。

これまでは、「最新購買日」「購入頻度」「購入金額」と言っても、店舗なら店舗、インターネットならインターネットと顧客を紐付けることなくバラバラに管理していましたが、こうしたデータは可能な限り一意の顧客IDに統一していく必要があります。それによって、リアルでの購買履歴や行動履歴だけでなくネットでの購買履歴や行動履歴も「同じ顧客情報」として蓄積することが可能ですが、こうしたデータ管理を、従来のRFM分析はこうしたデータ構造を想定していません。

最近ではオムニチャネルへの注目に見られるように、顧客との接点、コンタクトポイントが多様化し、属性や行動データが大量に蓄積できる環境が整いました。これによってこれまでバラバラに「分析」されてきた、顧客獲得と顧客維持のプロセスをもっと広い範囲から分析することが可能になっていますし、分析されたデータから最適なアプローチ方法を見つけ出すことができるようになってきています。

たとえば、販促企画応募者データ、メルマガジン登録データ、アクセスログ、メール開封やクリック状況、ウェブでの購買データ、店頭におけるPOSデータ、問い合わせ・アンケートデータ、TwitterやFacebookでの反応などすべてから「優良顧客」を抽出することが可能です。

ビッグデータは顧客の育成における「分析」=「LTV的視点」を補完する

RFM分析で有効だった、顧客の購入前、購入後のアリング・アンケートデータや顧客の行動履歴にまで踏み込んだビッグデータ分析は、RFM分析で切り捨てられてしまう優良顧客以外の顧客をすくい上げる効果があります。

RFM分析では優良顧客を育てる(顧客育成)という意味ではCRMの目的にかなっているのですが、一方でこの時に抽出されなかった優良顧客以外の顧客は「分析」によって切り捨てられてしまいます。

CRMはすべての顧客に対して顧客満足度を高めて、現在「最新購買日」「購入頻度」「購入金額」のどの軸からも優良顧客として抽出されなかった「潜在顧客」「見込み客」に対しても「顧客育成」を行うことが目的です、そのためにはビッグデータ分析で精緻化された顧客獲得と顧客維持のプロセスが必要です。

ビッグデータ分析で顧客獲得と顧客維持のプロセスを分析すれば、「最新購買日」「購入頻度」「購入金額」以外のより顧客の実態にそったリアルな分析が可能ですので、優良顧客化しない顧客、つまり優良顧客になるプロセスから離脱してしまうパターンの予測、離脱予測がつけられるようになります。

RFM分析において「顧客」というのは「買ってくれた人」であったわけですが、顧客獲得と顧客維持のプロセスをより広範囲に詳細に分析することで、「買わなくなった人」の実態を明らかにし、長期的な「LTV的視点」からその段階にあった適切な施策を導くヒントが得られます。

ビッグデータ分析活用の3つの重要ポイント

以上みてきたように、ビッグデータ分析は「優良顧客の定義」「RFM分析」「LTV的視点」という点でCRMの分析を精緻化し、分析の幅と深さを可能にします。

しかし、ここで重要なのはビッグデータ分析が、分析のための分析となってしまわないことです。CRMは高度な統計的技法を駆使したり、専門性の高いツールを使ったりすることが多いので、現場の営業マンやマーケターとの意思疎通が十分にできずに分析されたデータが十分に現場にフィードバックされないというデメリットも生じやすということに注意が必要です。

いわゆる「分析のための分析」になってしまっては、顧客分析の研究としては面白いデータが出てくるかもしれませんが、「優良顧客の定義」「RFM分析」「LTV的視点」と関係ないところでいくら興味深い論文が出てきても、売上増加には貢献しません。

ビッグデータ分析においては、下記の3つの点に留意することが大切です。

1. ビッグデータ分析の有用性を現場と共有すること

ビッグデータ分析の担当者は、その分析が営業やマーケティング部門でどのように活用できるのかについて、十分に意識しながら分析を進めましょう。

【優良顧客の定義】
「優良顧客の定義」において、営業マンがとマーケティング担当者が困っているのは、経験としてはイメージできているが、何を持って優良顧客とするべきかの明確な根拠がはっきりしていないということです。

この点を確認し、「優良顧客の定義」に向けて問題解決にビッグデータをどう使っていくのかという目的をしっかり確認します。

【RFM分析】
「RFM分析」の段階で営業マンとマーケティング担当者が困っているのは、「最新購買日」「購入頻度」「購入金額」以外の情報が優良顧客抽出の判断の根拠として活かせていないということです。RFMは「最新購買日」「購入頻度」「購入金額」というシンプルな基準で絞り込むことにシンプルな強みがあるわけですが、一方で現場においては「本当に最新購買日、購入頻度、購入金額だけで絞り込んで良いのか?」という疑問もあります。

こうした疑問を解消するためにビッグデータをどう使っていくのかという目的をしっかり確認します。

【LTV的視点】
「LTV的視点」で現場の営業マンとマーケティング担当者が困っているのは、RFM分析で切り捨てられたしまった顧客に対して、どのようにアプローチしたらよいかの指針が明確にならないということです。

これは営業マンにとっても長期的には自分の顧客リストが減少していくので非常に困ることでもあります。この問題意識を共有しておきましょう。

2. ビッグデータ分析は現場とのPDCAの中で進める

【優良顧客の定義】
「優良顧客の定義」には、営業マンの成功体験が優良顧客の定義のヒントになることは間違いないにせよ、個々の営業マンごとに「自分はこんな顧客を優良顧客と考えている。実際にそうした顧客に優先的にアプローチすることで成果を出している」と自信満々に表明されても、マーケティング担当者が個々の営業マンごとに違う属人的な成功体験を一つのモデルに集約することは至難の技です。

そうした場合にビッグデータの分析で、大まかな「優良顧客」のモデリングを行い、そのモデリングを現場の営業マンの生情報と照らし合わせて最終的な自社の「優良顧客の定義」を行う方法が有効です。

大切なのは、この定義を現場で確認することです。そのためには営業部門が「優良顧客の定義」で示された顧客に対して実際アプローチをして反応を見るなどのフィードバック作業が欠かせません。

【RFM分析】
本当に「最新購買日」「購入頻度」「購入金額」だけで絞り込んで良いのか? という疑問に対しては、それらの指標以外の「お客様の声」や「問い合わせ履歴」「アンケート」などからさらに精度の高い優良顧客絞込の法則を提示することで、ビッグデータ分析から現場の疑問に答えることが可能です。
これにいても仮説の検証を営業マンに行ってもらう必要があります。

【LTV的視点】
ビッグデータ分析で、「お客様の声」や「問い合わせ履歴」「アンケート」などのネガティブな側面に焦点を当て、「なぜ購買に結びつかずに離脱してしまうのか」ということに対して行動パターンを見つけ出すことができれば、従来のRFM分析で切り捨てられてしまう優良顧客以外の顧客を掘り起こすための施策を見つけ出すことができます。

ついつい目先の売上アップに目がとらわれがちな営業部門ですが、優良顧客以外の顧客掘り起こし施策の有効性について検証するために、積極的に仮設の検証を行ってもらいます。

3. 調査結果に数式や理論を盛り込まない

調査部門の悪い癖として、現場での活用を念頭に置かないレポートの作成がありますが、ビッグデータの分析ではこれがとくに顕著に現れる傾向にあります。調査結果については、難しい数式や理論などは思い切って割愛し、ビジュアル的に見やすいグラフやチャートなどをふんだんに盛り込んで、統計学や専門のデータベースの知識がない人にも分かるようなレポートに仕上げるべきです。

1の「ビッグデータ分析の有用性を現場と共有する」、2の「ビッグデータ分析は現場とのPDCAの中で進める」プロセスを経てその結果をリポートすれば、営業マンが実際に手にとって行動に移せるようなレポートが自然にできあがるはずです。

くれぐれも、ビッグデータ部門が単独で「分析のための分析」にはしらないように注意しましょう。

CRM分析の4つの落とし穴 ~ 売上拡大に結びつかない「分析」はなぜ生まれる?

ここまでCRMにおける「分析」の重要性を様々な角度から整理してきました。

CRMの段階ごとに「優良顧客の定義」の必要性、「RFM分析」の必要性、「LTV的視点」の必要性を確認し、それぞれの課題について、ビッグデータ分析で補完することが有効であることを確認しました。

しかし、実際にCRMを導入して「分析」もキチンと行っているはずなのに思うように売上拡大に結びつかない…というケースが後を絶ちません。いったいその理由は何なのでしょうか?

ここでは、「分析」を行ってもなお予期したとおりの効果が出ない場合の落とし穴について4つにまとめます。

1. 顧客の分析に明確な目的がない=気が付かないうちに営業マンのアシスタントに成り下がっている

この記事の冒頭に、MA(マーケティング・オートメーション)とCRMを明確に区別することの必要性を述べました。両者とも顧客を育てることを目的としますが、MAはあくまで顧客管理プロセスを自動化することがメインで、その目的は自動化されたデータを営業部門に渡すことです。これに対してCRMは、顧客満足度の向上を究極の目的とします。

それでは、営業マンが欲しがるデータとは何でしょうか? それは、基本的には自分の営業成績を上げるために役立つ顧客データということになります。マーケティング部門がいくら顧客の生涯価値の大切さを営業マンに力説しても、営業マンは「顧客を育てている暇があったら、早く制約に結びつけて売上データを積み上げたい」と思うはずです。

MAにも「分析」があり、顧客を育てていくことも特に「ナーチャリング」といって重視していますが、その目的は営業マンの営業活動に資するという短期的な視点を出ることはありません。

したがって、長期手に全社が長期的に一つの目的を持って顧客満足度を向上させることで売上を最大化させるのではなく、現場の営業マンが求める短期的な(悪く言えば近視眼的な)優良顧客の抽出のための分析に走りがちになります。このような「分析」はやがて全社的な目的を失い、営業マンの属人化した営業活動をアシストするだけという結果に陥りがちです。

2. 優良顧客の抽出のみに注力してしまう=気が付かないうちにレッドオーシャンを招いている

RFM分析で気をつけるべき点として、「優良顧客を抽出してさらに優良顧客化していく」ことにのみ目がいってしまい、RFM分析で切り捨てられた顧客を育てていくという視点がおろそかになる点を指摘しました。

このことを繰り返していくとどうなるか。一見すると、無駄な部分を省いて見込み度の高いところを攻めるので効率が良いように見えますが、それは優良顧客を他社と奪い合うというレッドオーシャン化をどんどん推し進めていることになるのです。優良顧客はすでに成熟した顧客です。大幅な売上増は実は難しく、加えて、他社にいつ奪われるかわからない顧客なのです。

CRMの導入の目的は、長期的に顧客を育てることにありますが、その意味するところはまだ他社の手のついていないブルーオーシャン市場で顧客をじっくり囲い込むことにあるわけです。

そうした戦略を持たない分析は遠からず先細りしていきます。

3. ビッグデータを盲信してしまう=気が付かないうちに「分析のための分析」になっている

さきほどビッグデータの注意点で述べたことは、気をつけていないとついつい生じてしまいます。CRMに役立つビッグデータ分析はあくまでも、「優良顧客の定義」「RFM分析」「LTV的視点」を補完するものとして機能させることが、営業部門、マーケティング部門、ビッグデータ部門できちんと共有されていることが大切です。

この三部門のコミュニケーションの連携が崩れてきたら、気が付かないうちにビッグデータ部門が「分析のための分析」を始めてしまう黄色信号だと思ってください。

ビッグデータ分析をCRMに活用する場合には、必ず「優良顧客の定義」「RFM分析」「LTV的視点」それぞれにおいて、「ビッグデータ分析の有用性を現場と共有する」「ビッグデータ分析は現場とのPDCAの中で進める」「調査結果に数式や理論を盛り込まない」を鉄則としましょう。

4. 「顧客育成」の視点がない

「顧客の分析に明確な目的がない」「優良顧客の抽出のみに注力してしまう」「ビッグデータを盲信してしまう」の原因は、すべて「顧客育成」の視点がないことに原因があることを理解しておきましょう。

■ 気が付かないうちに営業マンのアシスタントとなってしまっている
■ 気が付かないうちにレッドオーシャンを招いている
■ 気が付かないうちに「分析のための分析」になっている

これらは、すべて短期的/長期的な視点を欠いた営業利益(営業マンのアシスタント)、短期的な/長期的な視点を欠いた競争(レッドオーシャン)、短期的な/長期的な視点を欠いたレポート(分析のための分析)となっています。

最新のCRMシステムを導入して「顧客管理」を開始し、従来型のRFMだけでなく顧客情報を集めたビッグデータがあり、さまざまな手法に基づいて顧客を「分析」したにもかかわらずなぜか売り上げが伸びない。なぜこのような壁に当たってしまう企業は多いのでしょうか。

そして、この記事冒頭で問題提起したような状態、「こんなはずではなかった」という声がよく聞こえてくるのはなぜでしょうか?

その原因は、まずは「分析」の欠如でした。分析のないところに、CRMの成功はありません。しかしその「分析」がもし「顧客の分析に明確な目的がない」「優良顧客の抽出のみに注力してしまう」「ビッグデータを盲信してしまう」状態となっていたらどうでしょうか?

それは、CRMに必要な分析とはいえないのです。したがって導入にあたって「分析」の重要性を理解した後は必ず「分析」に「顧客育成」の視点が入っているかどうかを常に確認してください。

CRMは導入して終わりではない、ということはどのCRMベンダー、CRMコンサルタントも口を揃えて強調しています。そのほんとうの意味は、導入にあたって「分析」の必要性をきちんと認識するだけではなく、導入後もCRMを使い続ける限りは「この分析は、はたして本当に顧客育成に役立っているのだろうか?」という自問自答が必要であるということに他なりません。

つまり、CRM導入を成功させるためには「顧客育成に役立つ分析」の必要性を関係者全員でしっかり認識すること(そして、つねにチェックすること)が不可欠なのです。

【まとめ】

以上、CRM導入にあたって「分析」の重要性を理解することが成功に不可欠だということがお分かりいただけたと思います。そして、その重要性は導入して終わりではありません。導入後に「分析」の重要性を絶え間なく検証し続けることが不可欠です。

【CRM成功の絶対条件】
■ CRM導入にあたって「分析」が必要であることをしっかり認識すること
■ CRM導入後も「分析」が「顧客育成」に貢献しているかをチェックすること

当たり前ですが、いくらCRMの製品カタログをたくさん取り寄せても、この2点は見えてきません。したがって、ただカタログを眺めながらなんとなくベンダーの営業マンと打ち合わせをしても、成功するCRM導入、運営の形は見えてこないのです。

すべてのマーケティングシステムの導入には「達成すべき明白な目標」を明確化することが必須ですが、CRMにおいては「顧客育成に役立つ分析」の重要性の明確化が欠かせません。

では、見積もりを取る段階でどうやったら自社の「顧客育成に役立つ分析」ができるCRMツール/ソリューションを選定できるのでしょうか?

それは、ベンダーであれSIerであれ打ち合わせをする業者が「このパッケージのこういう機能を使えば、御社の顧客育成に役立つ分析が可能だ」「このソリューションのこの作業を繰り返せば、御社の顧客育成に役立つ分析が可能だ」というところに踏み込んだ提案をしてくれるかどうかにかかっています。

ベンダーが製品カタログ説明に終止していたり、SIerがシステム構成図のパワーポイントの説明ばかりしていたりする場合は、こうした提案は期待できません。CRMを導入することによってどのように自社の「顧客育成に役立つ分析」が可能になるのか、その成功した未来図をイメージさせてくれる業者を選べば間違いありません。

とはいえ、こうした業者の選定はなかなか困難であることも事実です。導入後の未来図をイメージさせるには打ち合わせの段階で自社の業務内容やマーケティング戦略などに深い理解を示してくれる業者、担当者であることが必須だからです。

価格や機能だけでは分からないそうした深い理解に基づいた提案をしてくれる業者を選ぶ上で、ぜひ経験豊富でCRM業界の評判にも精通した「アイミツ」をご利用いただければと思います。

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