【第10回今日役に立つビジネス法務】大型システム開発契約に関して

【今日役に立つビジネス法務第10回】アイミツ版六法全書

更新日:2017年09月08日 | 公開日:2017年09月08日

開発期間が数週間~数ヶ月の小型の開発とは異なり、大企業の基幹系システムなどの大型システム開発では、企画・開発・運用・保守各段階において、膨大かつ複雑なやり取りがなされるのが通常です。

大型システム開発は、企業にとっては数千万円から、場合によっては数億円単位の大きな投資です。
そのため、大きなトラブルが生じてしまうと、その投資が無に帰すことになりますし、そればかりか、訴訟対応で数年間の歳月を費やしてしまうことになりかねません(実際にこの種の紛争になると、1年以内に決着がつくことは稀だと思います)。

このような大型システム開発の場合、ベンダ側とユーザー側の権利や義務が複雑に入り乱れてしまいますので、これらを契約書の中で整理するのも簡単な作業ではありません。

しかし、ポイントを押さえた契約書を作成し、事後のトラブルに備えておくことは、非常に重要です。
そこで今回は、システム開発契約の中でも、比較的大規模のシステム開発に関する契約書のポイントについて説明します。

大規模のシステム開発に関する契約書の3つのポイント

1.各段階ごとの契約形態を明確化する

タッチパネル

システム開発の実務においては、ソフトウェア、システム、サービスの構想から開発、運用、保守、廃棄に至るまでの一般的なライフサイクルを定めた「共通フレーム」という枠組みがあります(※現在の最新版は「共通フレーム2013」)。

共通フレームは、システム開発の主要なプロセスを、企画プロセス、要件定義プロセス、開発プロセス、運用プロセスなどに分解し、それぞれのプロセスにおいて遂行されるべきことが明示されています。

実際、システム開発においては、各プロセスにおける契約当事者が担当すべき業務が全く異なりますので、少なくともこのプロセス毎に、契約の形態は区別しておくべきでしょう。

個別に相違はあるものの、一般的には、作業の実態に即して、以下のような区分けで契約が結ばれることが多いと思われます。

プロセスと契約形態

2.当事者間の役割を明記し、PM義務の範囲を明確化する

指差し

システム開発は、ベンダとユーザーの共同作業です。
例えば、契約締結時に予定されていなかったトラブルが生じ、開発が正常に進行しなかった場合には、ベンダとユーザーが相互に協力しながらトラブルを解決しなければ成り立ちません。

このような性質上、ベンダ側には、常に進捗状況を管理し、トラブルが生じた場合には、ベンダ側には要因発見や対処を行う義務(プロジェクトマネジメント義務(以下「PM義務」)があり、ユーザー側にはベンダから示された懸案事項を解決する義務(以下「協力義務」)がある、と考えられています。

上記のようなPM義務や協力義務は、考え方としては理解できても、実際に当事者が何をすべきかについて、直ちに答えが出るものではありません。
そのため、トラブルが生じた場合には、しばしば相手方に対して責任を押し付けるようなやり取りが見られ、トラブルが一層深刻化してしまうこともあります。

この事態を避けるため、契約書には当事者間の役割を明記し、ベンダ側、ユーザー側それぞれがどの範囲で責任を持つかを予め定めておくべきです。
特に、ユーザー側はお金を支払う側ですから、ユーザー側の「協力義務」についてはなかなか理解を得にくい場面があります。
ユーザー側に協力してもらわなければ立ち行かない部分については、十分な説明を行った上で、契約書に明示しておくことで、スムーズな進行が期待されます。

3.納期の変更手続きが認められる場合を明記する

ドキュメント

システム開発がトラブルになった場合、必ずユーザー側から主張されることは、「ベンダ側が納期に間に合わせられなかった」というものです。

しかし、上に述べたとおり、システム開発は、ベンダとユーザーの共同作業です。
実際の開発の工程では、ユーザーに協力なしには成り立たない場面もあり、納期遅延のケースでも、必ずしもベンダ側に責任がある場合ばかりではありません(むしろユーザー側の協力義務違反によって納期遅延が生じている場合もあります)。

そこで、ユーザー側からの追加注文や、資料提供の遅延、工程上発見された新たな課題解決のために追加で時間を費やしたなど、様々な事情により、成果物の納入が期限までに間に合わない状態となった場合に備えて、納期の変更手続きが認められる場合を明示しておくべきです。

更に言えば、納期の変更手続きは、面倒であっても必ず書面で行われるべきでしょう。
トラブル防止のために重要な手続きですので、後になって「納期を変更した」「していない」などと水掛け論にならないような配慮が必要です。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回まとめたポイントをしっかりと理解した形の契約書を作成し、トラブルを招いてしまわないように気をつけましょう。
またシステム開発の契約書に関して、「もっと詳しく知りたい!」や「まだまだ分からないところがある!」という方は、一度『アイミツ』までお問い合わせください。
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