【第14回今日役に立つビジネス法務】「アジャイル開発」のポイント

【今日役に立つビジネス法務第14回】アイミツ版六法全書

更新日:2017年09月08日 | 公開日:2017年09月08日

近年、ソフトウェア開発において、「要求」→「設計」→「実装」→「テスト」といった工程を順にたどっていく従来型の「ウォーターフォール型開発」手法を取らない「アジャイル型」と呼ばれる開発手法が普及してきています。

アジャイル開発は、プロジェクト初期には開発するソフトウェアの全体像を固めてしまわず、ユーザーの要望に応じて短期間の開発・レビューを行い、これを繰り返しながらリリースに至る開発手法です。
プロジェクトの状況に応じた柔軟な開発が可能になるという一方で、契約締結時点ではソフトウェアや開発の内容が確定しておらず、契約で何を決めればよいのか難しいという点が契約書作成側からすると悩ましいところです。

今回は、「アジャイル開発」を行う際の契約書のチェックポイントをみていきましょう。

IPAモデル契約 改定版の公開

システム開発

「非ウォーターフォール型開発にふさわしい契約」を検討して、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が日本における非ウォーターフォール型開発(アジャイル型開発)に適したモデル契約書を公開しています。
この記事でも、IPAモデル契約を参考にお話をしたいと思います。

契約の類型・対象範囲は?

神とペンとパソコン

どのような性質の契約を締結するのか、この契約で約束をするのはどこまでの範囲かを明確にすることが必要です(範囲は、時間、リリース単位、スプリント単位、対象機能、プロジェクト全体……等で規定することが考えられます)。

ウォーターフォール型開発の委託の場面では、請負契約か準委任契約が締結されることが一般的です。
「仕事の完成」を目的とするのが請負契約ですが、アジャイル開発の場合には、ユーザーのニーズや状況に応じて開発内容を変化させていくことが特徴ですので、「完成」がどのような状態を指すのかを明確に規定できません。
他方、準委任契約の場合、作業期間・時間に応じて対価が発生することが通常ですので、契約締結の段階で、開発にいくら必要になるのか見えにくいことがユーザーにとってはデメリットになります。

IPAモデル契約では、契約類型を(1)「基本/個別契約モデルの基本契約書案」と、(2)「組合モデルの契約書案」に区分し、(1)においては、基本契約書と個別契約書を作成し、個別契約書を「請負型」と「準委任型」とすることで対応しています。

アジャイル型開発では準委任型の方がなじみやすいと言われていますが、プロジェクトの枠組みを構築する段階では準委任契約、具体的な機能単位の発注が可能となった段階では請負契約として個別契約を締結するなど、うまく使い分けをしていくと良いでしょう。

相互協力義務

握手

従来型のソフトウェア開発ではベンダ側が主導して開発を進めることが一般的ですが、アジャイル開発では、開発をスムーズに進めるために、ユーザーとベンダのミーティングや協調が非常に重要とされています。

ユーザーは、ベンダからのヒアリングに任せているだけではなく、プロダクトオーナーを選任して自社内の要求事項のとりまとめや管理をおこない、要求事項の優先付けをおこなっていくことがプロジェクト成功へのカギとなります。
ベンダ側からすると、このようなユーザー側でのとりまとめやミーティングへの協力がなければ、アジャイル開発を適切に進めることは非常に困難でしょう。

アジャイル開発では、ウォーターフォール型開発契約以上に、「ユーザの協力義務」や「相互協力義務」を明示してユーザーにも一定の責任を負わせることが重要です。

まとめ

アジャイル開発は当初は曖昧な要望を確定しつつプロジェクトを推進できる・柔軟な開発ができるというメリットがある一方で、「何を・どこまで・どのように開発する約束だったのか?」がわからなくなってしまったり、相互の役割分担や完成物についてのイメージの共有が適切に行われず開発後になってトラブルになってしまったりしやすいという難点もあるといわれています。

アジャイル開発については、その開発の進め方も、契約書の作り方も、研究・検討が進められているという発展途上の段階ではあるように思われますが、思わぬトラブルになってしまわないよう、契約書作成の段階でポイントをおさえてイメージのギャップが生じないように工夫して頂ければと思います。