【第5回今日役に立つビジネス法務】株式譲渡契約のポイント

【今日役に立つビジネス法務第5回】目標から逆算しよう!株式譲渡契約のポイント

更新日:2017年09月11日 | 公開日:2017年09月11日

今回は、ベンチャー企業のEXITにも大きく関係する、株式譲渡契約を取り上げます。

株式譲渡は、企業買収の一手法としても用いられるものですが、その契約中でも特に重要な意味をもつ「表明保証条項」について解説します。

デューデリジェンスって何?

会議しているシルエット

まず、企業買収として行われる株式譲渡契約においては、“買い物”の本当の対象は、その株式を発行している対象会社それ自体となります。

このため、株式譲渡契約の締結にあたっては、対象会社が買収の目的に適った品質を備えているかを確かめる必要があります。
例えば「年商1億円」の優良企業ということで買収を検討していた会社が、実際には架空の売上を計上していたということがあれば、買い手がその会社を買おうとした前提が崩れてしまうからです。

このような企業買収の前提条件を確認するために、買収の事前に、財務諸表、会計帳簿、契約書類といった会社の書類精査や、役員・従業員ら関係者へのヒアリングといった手続きが網羅的に行われており、この手続は「デューデリジェンス」と呼ばれています。
買い手は、この手続きを通じて、買収の対象としている会社に問題がないかをチェックしています。

表明保証条項とは?

キーボードを打つ男性の手

このような「デューデリジェンス」の手続が行われた場合であっても、会社に問題がないかどうかを完全に確かめることはできません。
したがって、買い手は株式(=会社)の売り手に「買収の前提となる事項に問題がないことの保証」を求めます。
これが「表明保証条項」と呼ばれるものです。

この「表明保証条項」において、どのような内容が保証されるかについては、当該株式譲渡にかかる対象会社の業種や、買収に至る経緯、デューデリジェンスの結果等、様々な事情に影響されますが、以下ではその中でも典型的なものについて解説します。

株式

株式は当該株式譲渡の直接的な譲渡対象ですので、その内容及び状態は表明保証事項として最も重要なものの一つとなります。

まず、対象会社が発行している株式の数と種類は、基本的な確認・表明保証事項となります。
また、買い手が譲り受けた株式が将来希釈化してしまわないよう、買い手が把握しているもの以外に潜在的な株式(新株予約権、対象会社に株式発行を義務付ける契約など)がないかも重要なポイントになります。

さらに、売買の対象となっている株式が有効に存在することを裏付けるため、発行済み株式がすべて有効に発行され全額払込み済みであることも重要な表明保証事項となります。

財務諸表等

対象会社の財務諸表等は、企業価値を算定するうえで基本的な情報となり、かつ、財務諸表等の記載が正確であることは、同時に対象会社に潜在的な債務が存在しないことに対する保証ともなり得ます。
したがって、財務諸表の正確性は買い手にとって非常に重要な表明保証事項となります。

財務諸表等の表明保証に関し、直近の決算期のものが保証の対象となることはもちろんですが、さらに過去何年分までが対象となるか、交渉状争点となりやすいポイントです。

不動産

土地、建物といった不動産は、対象会社の資産のなかでも一般に価値が高いことが多く、かつ、工場その他に利用され事業の継続性についても密接な関係性を有することが多いため、表明保証事項として重要です。

建物の欠陥や土地の埋蔵物等といった不動産自体に瑕疵・不具合がないことはもちろんですが、担保権が設定されていないことや、不動産の使用状況をめぐって紛争が生じていないことも表明保証の対象とされることがあります。

知的財産権

知的財産権には、特許権・著作権・意匠権等といった知的財産権そのもののほか、プログラムやシステムの利用権等も含まれます。
知的財産権には、対象会社の事業運営上不可欠なものが含まれ得る反面、その帰属や利用の許諾関係が不明瞭となっていることがありえるので、その有効性や利用許諾の範囲に抜け漏れのないことが表明保証の対象となります。

さらに、対象会社が第三者の知的財産権を侵害していないことも表明保証の対象となります。

従業員

従業員は会社の大切な財産ですので、従業員との契約関係、債務関係に問題がないかは重要な表明保証事項となります。
これには、未払残業代その他の潜在債務がないことも含まれます。

また、労使間紛争は、対象会社の事業運営にとって重大な支障となり得ますので、労働紛争が存在しないこと、又は紛争の生じるおそれがないことも表明保証事項に盛り込まれることがあります。

「売り物」として真っ当か問われる

ドル札のイラスト

以上、表明保証事項について簡単に確認しましたが、表明保証事項として取り上げられている内容を総括すると、「会社の事業運営がコンプライアンス(法令遵守)の観点から適切に行われていたか」という点に集約することができます。

このような経営姿勢は、綿密な上場審査を受けるIPOの場合はもちろんですが、株式譲渡をはじめとした会社買収の場合でも、程度の差こそあれ、同様に問題となるのです。

会社経営においては、売上やシェア拡大といった事業面にどうしても着目してしまいますが、将来的なEXIT戦略を見据えたときには、「会社が真っ当な売り物としての品質を備えているか」についても冷静に分析しておくことが必要です。
IPO、企業買収の際に問われるコンプライアンス遵守を、日頃から意識した経営を心掛けるようにしましょう。