【第17回今日役に立つビジネス法務】建物賃貸借契約のチェックポイント

【今日役に立つビジネス法務第17回】アイミツ版六法全書

更新日:2017年09月08日 | 公開日:2017年09月08日

オフィスを借りる場合や、オフィスを間貸しする(転貸となるので注意)場合に必ず登場するのが建物賃貸借契約です。
ありふれたものであるという感覚が強いため、逆にチェックが甘くなり、思わぬ落とし穴にハマってしまう場合も少なくありません。
今回は、オフィスを借りるときにチェックしたい、建物賃貸借契約のチェックポイントを紹介します。

建物賃貸借契約のチェックポイント

1.賃料の増額・減額の問題

オフィスビル

オフィスを借りるときに気になるのが、やはり賃料です。
当事者は、契約期間中、みずからの合意によって定めた賃料に拘束されます。
しかし、賃料は、一度決めてしまえば一切変更することができないという性質のものではありません。
時間の経過とともに、物価や税金など社会経済事情は変動し、賃料の相場もこれに伴って変動することは十分にありえるところです。
そこで、借地借家法第32条第1項では、賃料が不相当となったときには、賃貸借の一方の当事者に、賃料の増減を請求できる権利を認めています。

注意したいのが、賃貸借契約の中で、賃料の増額・減額をしないという特約が定められることがある点です。
賃料の不増額の特約は、借地借家法によりその有効性が認められていますが、これは賃貸人には不利な条項ですので、賃貸人が用意している賃貸借契約のひな形に盛り込まれていることは基本的にはありません。
他方で、不減額特約は、「賃料を増額する余地はあるが、減額はしない」という条項ですので、賃貸人としてはこれを盛り込む強いインセンティブが働きます。
しかし、判例上、普通建物賃貸借においてこのような条項を設けても無効であるとされていますので注意が必要です。
「賃料を増額する余地はあるが、減額はしない」という条項は、賃貸借の期間が限られている定期建物賃貸借契約において認められる特約となっています。

2.原状回復の問題

ビジネスウーマン

建物賃貸借は、賃借人が建物を一定期間使用し、その後、賃貸人に建物を返還する契約です。
言うまでもなく、賃借人が建物を使用することによって、床・壁・天井などは汚れて劣化していきます。
このように劣化した建物を、賃借人はそのままの状態で返還すればよいのか、それとも賃借人の負担において修理や交換をしたうえで賃貸人に返還しなければならないのかという問題が、原状回復の問題です。

原状回復の問題については、基本的には、以下のようなルールがあります。
まず、通常の使用により生じる劣化については、賃借人負担とはなりません。
他方で、通常の使用により生じる劣化を超える汚損や損傷については、賃借人負担で原状回復する必要があります。
例えば、オフィス内の模様替えの際のデスク移動の時に、デスクの角を壁にぶつけて穴をあけてしまったような場合、この穴は通常の使用により生じる劣化を超える損傷ですので、賃借人負担において修理をする必要があります。

なお、賃貸人としては、通常の使用に生じる劣化についても賃借人に負担してもらいたいと考えます。
そのため、賃貸借契約書に、建物を返還するにあたり、通常損耗を賃借人負担として、賃借人に修理や交換を義務づける特約(通常損耗補修特約)が定められている場合があります。
賃借人としては、賃貸借契約の内容の修正を申し入れることのハードルが高い場合には、少なくとも、賃借人として補修費用を負担することになる損耗の範囲を事前にきちんと把握しておくことが重要です。

3.途中解約の問題

握手

賃貸借契約は、数年にわたって継続されることが一応想定されております。
しかし、家賃が払えなくなってしまったり、会社のメンバーが増えることで手狭になってしまったりと、賃借人が賃貸借契約を途中で解約したいと考えるケースも少なくありません。
ところが、賃貸人としては、期間満了までの入居とそれに伴う賃料収入を期待していることが一般的です。
そして、賃貸人は、その期待を守るべく、賃貸借契約書に「賃借人が期間満了前に解約する場合は、解約予告日の翌日より期間満了日までの賃料相当額を違約金として支払う」という条項を設ける場合があります。

このような条項が含まれている場合、本当に違約金を払わないと途中解約ができないのでしょうか。

裁判所は、このような違約金条項の有効性について、「期間途中での賃借人からの解約を禁止し、期間途中での解約又は解除があった場合には、違約金を支払う旨の約定自体は有効である。
しかし、違約金の金額が高額になると、賃借人からの解約が事実上不可能になり、経済的に弱い立場にあることが多い賃借人に著しい不利益を与えるとともに、賃貸人が早期に次の賃借人を確保した場合には事実上賃料の二重取りに近い結果になるから、諸般の事情を考慮した上で、公序良俗に反して無効と評価される部分もあるといえる。」と判断しています。
一般的には有効なのですが、場合によっては無効となることもあるのです。

つまり、違約金条項が含まれているからといって途中解約を諦める必要はなく、賃借人としては、「無効になる場合もある」ことを念頭に交渉を行うことが重要になります。
とはいえ、違約金情報も基本的には有効ですので、賃借人としては、契約締結の時点でこのような条項は排除しておくことが理想的でしょう。

まとめ

賃貸借契約は、比較的長期の関係を想定した継続的契約です。
契約が終了する時点での出来事を見越して、契約締結時点で合意しておかなければならないところが難しいところですので、上記のポイントを踏まえて、きちんと内容を確認してオフィスを借りることが重要となります。

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