【第16回今日役に立つビジネス法務】株主間契約を締結する意味

【今日役に立つビジネス法務第16回】アイミツ版六法全書

更新日:2017年09月08日 | 公開日:2017年09月08日

場面別で見る、株主間契約を締結することの意味

株主間契約の存在自体の認知度は、経営者の間でも増してきていますが、契約内容をどのように定めればいいのかについては、締結する当事者に応じて具体的に考えていくことが重要です。
そもそも株主間契約では、締結する相手によって用途・目的が分かれるため、以下では、共同経営者間で締結する株主間契約と、投資家との間で締結する株主間契約とで分けて解説していきます。

共同経営者との間で締結する株主間契約

ビジネスマン

まず、共同経営者との間で締結する場合にはどのような契約内容にするべきでしょうか。
共同経営者間における最も大きなリスクとしては、経営者が株式を保有したまま会社を退職してしまうことが挙げられます。

例えば、株式の半数を共同経営者間で分け合っているような状況では、株主総会での3分の2の賛成又は全員の賛成が必要となる重要決議を通すことができないのは勿論のこと、株主総会における過半数の賛成が必要となる普通決議事項も通すことができない状態に陥ってしまいます。
そのため、このような場合に会社を運営していくにあたっては、退職した経営者に対して、ある程度経営状態を開示した上で賛成してもらうために配慮しなければなりません。
退職にいたる経緯としては、経営者間の方向性が異なった場合や、退職した者が他にやりたいことを見つけたような場合が典型的です。
このような者に対し、会社運営の明暗を左右する権限を与えておくこと自体が会社におけるリスク要素といえます。

したがって、このような事態を避けるべく、株式を保有している経営者が退職する場合には、保有している株式を会社に残る株主に譲渡することを義務付けておくことが賢明です。
そのため、譲渡する当事者としても、ケースバイケースではありますが、経営者双方に対してこのような譲渡義務を課していくことが永続的な会社運営を行っていくうえでは適しているといえます。

原則として、保有株式の全部を譲渡するようなスキームを採用するべきですが、在籍年数に応じて譲渡する株式数を減少するようなべスティング条項を設ける場合も少なくありません。
これは、どのような者に会社成長のインセンティブを付与するのかという評価の問題と直結します。
株式を保有していることのメリットとしては、議決権を行使できることのみならず、株式配当を受領する権利や、会社のIPO又はバイアウト時にキャピタルゲインという巨額の金銭を得られる機会が与えられることが大きいといえます。
IPO又はバイアウト寸前に役員を退いたような場合であれば、これまで会社を成長させた功績から、何らかのキャピタルゲインを享受させることが適切とも考えられ、全ての株式の譲渡を強制することは逆に不公平とも思えるのです。
上記のような観点から、会社の在籍年数が多ければ多いほど、株式を退職したとしても一定数の株式を保有しておくことのできる設計にすることも珍しくありません。

実際には、上記に加え、退職に伴う株式買取価額の設定など、重要な論点もありますが、基本的には今後会社が成長すれば価値が上昇する株式を誰が保有すべきかという政策的な判断が重要になるのです。

投資家との間で締結する株主間契約

キーボートと小人

投資家との間で締結する株主間契約の主な機能は、投資するにあたって、投資家が経営者に対して期待することを明確にするという点にあります。
具体的には、経営者の能力や手腕に期待して会社に投資したにもかかわらず、経営者がすぐに会社を辞めてしまっては投資した意味がなくなってしまうので、経営者が会社に専念する義務を課し、また経営者が辞めずとも兼業により能力が分散することを防止するべく、兼業することを禁止する条項を設けることが通常です。

また、投資してから、その会社の行く末が全く把握できなくなるケースもあるため、会社の経営成績として決算書や報告書を定期的に提出する義務や、ある程度会社をコントロールする意味でも投資家側から取締役又はオブザーバーを何名か派遣し、会社としては当該人員を役員として就任させる義務を負う条項を入れることも珍しくありません。
また、会社として意思決定する場合、一定の事由については投資家に事前承諾又は事前通知を行うことを義務付け、会社のコントロールを行う設計にすることも珍しくありません。

このような会社と経営者の義務は、投資家の投資額や保有株式数によっても変わり、「このような株主間契約が絶対に必要」というケースはありません。
そもそも投資家として自ら経営に参与することを投資の前提とする投資家もいますし、投資家として金銭の支出のみを行い、経営に専念してさえもらえれば会社のコントロールは行わなくてもいいと考える投資家もいます。
投資家の意図と経営者の自由経営のバランスが、投資家との株主間契約においては問われることになるのです。

まとめ

株主間契約について理解を深めて実際に契約を結んでいる人もいれば、大事なことと分かっていても、契約を結んでいない人もいるのではないでしょうか?
特に経営者になられたばかりの方や若手経営者の方などは、複雑な契約に関してまだまだ理解しきれていないという方もいらっしゃると思います。
細かいことをきっちりとやっていくことが、自社の未来へと繋がっていくので、もしご不安に思われる方がいらっしゃいましたら、弊社『アイミツ』までご相談いただければと思います。
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